二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第二百二十七話 碧天 ( No.393 )
- 日時: 2016/09/28 12:47
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: XYO3rYhP)
暴風を起こして下っ端を吹き飛ばし、その隙を突いて下っ端軍の包囲をくぐり抜け、カンタロウはそのまま一直線に駆け抜ける。
カンタロウが入り込んだのは森だった。そこでも何人か下っ端と出くわすが、軽く撃退し、奥へと突き進む。
やがてカンタロウは開けた場所へ辿り着く。周りを木々に囲まれているが、木漏れ日により薄っすらと光るその空間だけ、開けているのだ。
そこから先に進む道はない。間違いなくここが最奥。その根拠は、これ以上道がないだけではない。
「……よりにもよって、お前が来るとはな」
整えられた緑色の髪、青い服の胸にはネオイビルの紋章が入っており、迷彩柄のコートを羽織った男。
碧天隊統率、序列第七位——碧天将セドニー。
「なるほど、お前が相手だか。何度倒しても分かンねェよォだから、今回こそ叩き潰してやるだ」
「ほざけ。俺は、もう負けられねえんだよ。負けちゃいけねえんだ。これじゃ、何のためにここに入ったのか分かんねえからな」
「……?」
カンタロウが不審な表情を浮かべる。
明らかに、今までのセドニーとは違う。前回戦った時にはなかったものを、今のセドニーは抱えている。
「バトルは三……いいや、四対四だ。俺はもう二度と負けねえ。持てる力の全てを使って、お前を倒し、他の奴らも倒す。覚悟は出来てんだろうな、『ブロック』の鳥使い!」
セドニーの言葉に呼応し、その若草色の瞳が膨大な翠色の光を放ち、同時に手の甲に竜の爪のような翠の模様が浮かび上がる。
今までとは明確に違う、セドニーの気迫。
それを受けてなお、カンタロウの顔色は変わらない。
「上等だべ。そろそろ教えてやンねェといけねェだな、実力の違いってヤツをよォ!」
二人がボールを取り出したのは、ほぼ同時だった。
「出て来い、フワライド!」
「羽ばたけ、ペリッパー!」
セドニーの繰り出したポケモンは気球ポケモンのフワライド。四枚の手が付いたような紫色の気球のようなポケモンだ。
それに対してカンタロウのポケモンは、青い帽子を被った白い大きなペリカンのようなポケモン、運び屋ポケモンのペリッパー。
「時間も押してるし、早速行くべ! ペリッパー、ハイドロポンプ!」
初手からペリッパーはいきなり大技を繰り出す。
大きな口を開くと、大量の水流をフワライドへと放つ。
「フワライド、ゴーストダイブ!」
対するフワライドが、忽然と姿を消す。
カンタロウが瞬きしたその一瞬のうちに、フワライドは完全に虚空へと姿を隠し、
「十万ボルト!」
突然ペリッパーの背後に現れると、高電圧の強力な電撃を放つ。
「やべッ……ペリッパー、目覚めるパワー!」
咄嗟にペリッパーは周囲に無数の黄土色のエネルギー弾を放つ。
球体は電撃を打ち消し、フワライドに命中ふるが、フワライドにダメージを与えた様子はなく、
「フワライド、サイコキネシス!」
間髪入れずに放った念力の波により、ペリッパーは吹き飛ばされてしまう。
「地面タイプの目覚めるパワーだな。電気タイプ対策はして来てるようだが、俺のフワライドには通用しねえぞ」
「電気技さ受けなかっただけで充分だべ。ペリッパー、立て直せ! 冷凍ビーム!」
吹き飛ばされたペリッパーが再び飛翔し、口を開いて冷気の光線を発射する。
「フワライド、十万ボルト!」
フワライドが高電圧の電気を生み出し、強い電撃を発射する。
両者の技が激突、威力は互角で、競り合った末に爆発を起こす。
「フワライド、ハリケーン!」
「ペリッパー、こっちもハリケーンだ!」
フワライドとペリッパーが、共に嵐のような暴風を巻き起こす。
無数の木の葉が宙を舞い、周囲の木々が軋むが、二人と二匹は全く気にも留めない。
「最弱のくせに、ちったぁやるみてェだな」
「舐めるな。いくら最弱っつっても、今の俺のこの状態は間違いなく覚醒率100%。今までで一番強えんだよ。あんまり甘く見てると、森の餌にすっぞ」
「やれるもンなら、やってみるだな! ペリッパー、ハイドロポンプ!」
ペリッパーが大きく息を吸い込み、太い水柱を放出する。
「フワライド、もう一度ハリケーン!」
フワライドが高速回転し、再び嵐のような暴風を起こす。
風の壁が水流を防ぎ、吹き飛ばし、
「十万ボルト!」
その風の壁の中から、高電圧の強力な電撃が飛び出す。
「ペリッパー、急上昇! 真上から冷凍ビーム!」
吹き荒れる風を物ともせず、ペリッパーは電撃を躱して飛び上がる。
台風の目は風が吹かないように、回転するフワライドの頭上には風がない。
そこまで飛び上がると、ペリッパーは冷気の光線を真下に撃ち出す。
脳天に冷気の光線が直撃し、フワライドは大きく体勢を崩す。
「まだ終わってねェだぞ! ペリッパー、ハイドロポンプ!」
さらにペリッパーは大量の水を放出、追撃を仕掛けるが、
「フワライド、ゴーストダイブ!」
水がフワライドを捉える寸前、フワライドの姿が虚空に消える。
ペリッパーの放った水流はフワライドを捉えられず、その直後にペリッパーの正面からフワライドが現れ、四本の手をペリッパーに叩きつけ、地面へ叩き落とした。
「逃すな。フワライド、十万ボルト!」
フワライドの体から電気が迸り、高電圧の強力な電撃が放射される。
「チッ、ペリッパー、冷凍ビーム!」
地面に倒れながら、それでもペリッパーは何とか凍える冷気の光線を放つ。
降り注ぐ電撃は何とか相殺するが、
「ハリケーン!」
フワライドが高速で回転し、荒れ狂う暴風が巻き起こる。
ペリッパーは風に巻き上げられ、天高く吹き飛ばされる。
「捉えろ! フワライド、十万ボルト!」
宙を舞うペリッパーに狙いを定め、フワライドは正確に高電圧の電撃を放つ。
しかし。
「甘く見るでねェだぞ。ペリッパー、ハイドロポンプ!」
暴風を物ともせずにペリッパーは電撃を躱すと、返す刀で大量の水を噴射。
水柱がフワライドを捉えて吹き飛ばし、木の幹に叩きつけた。
「空中に飛ばされたッけ逆にありがてェだ。オラのペリッパーは口の中に人さ入れて飛べるくれェの力持ち。こンくれェの風でへばる訳ねェだろォが。オラが鳥ポケモンさ甘く見てくれンなよ」
決してダメージは小さくないが、それでもペリッパーは力強く羽ばたいている。
この一ヶ月ホウエンに帰って、ただひたすらに鍛えてきたのだ。
「やってくれるじゃねえか。フワライド、まだ行けるな」
セドニーの言葉を受けて木の幹からゆっくりと離れ、再びフワライドが浮上する。
「フワライド、ゴーストダイブ!」
フワライドが再び虚空へと姿を消す。
(さっきの二回で時間さ測っただ。このゴーストダイブ、もォ見切ったべ。消えてから出てくるまで、その時間は……ッ!)
「今だべ! ペリッパー、ハリケーン!」
フワライドが姿を現した、まさにその瞬間。
ペリッパーが大きく、力強く羽ばたき、荒れ狂う暴風を巻き起こした。
「なにっ……!? フワライド!」
なす術もなく、フワライドは暴風に吹き飛ばされる。
「墜とせ! ペリッパー、冷凍ビーム!」
上空に吹き飛ばされたフワライドを見上げ、ペリッパーは凍える冷気の光線を打ち上げる。
「っ、フワライド、サイコキネシス!」
吹き飛ばされながら、フワライドは強い念力を操作し、何とか冷気の光線を食い止める。
「ペリッパー、ハリケーン!」
「フワライド、こっちもハリケーン!」
ペリッパーは激しく羽ばたき、フワライドは高速回転し、荒れ狂う暴風をお互いの標的へと叩きつける。
風と風がぶつかり合い、お互いを飲み込んで規模をさらに拡大させる。
空中円盤都市のその森から、天高く、竜巻が巻き起こった。