二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第二百二十八話 緋天 ( No.394 )
- 日時: 2016/09/29 18:50
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: F8Gg2X0Y)
下っ端の大群を突破した後、サクラは城に辿り着く。
しかしサクラは城に乗り込んでも上には上がらず、中庭へと足を進めていく。
開けた中庭には中央に大きな広場があり、周りは花壇と花畑に覆われている。
そこでサクラを待ち構えていたのは、一人の女性。
赤、白、黄色の派手な華の模様が描かれた黒いドレスに身を包み、長髪は真紅のストレート。ドレスの胸元には、ネオイビルの紋章。
緋天隊統率、序列六位——緋天将ガーネット。
「……何となく、あんたが来る予感はしていたわ。結局、最後まであんたと戦うのね」
「あぁーらガーネットちゃん。あたしを待っててくれたなんて、嬉しいわあ」
真剣な表情を浮かべるガーネットに対して、相変わらずのわざとらしい猫撫で声でサクラは返す。
しかし、
「……なーんて。分かってるわよ、そんなふざけていられるような状況じゃないわよねえ」
喋り方はそのままだが、明らかにサクラの口調が変わった。
理由は単純。
口では説明しづらいが、今までとは明らかに違う、ガーネットの気を感じ取ったのだ。
「……今日はね、私の家族の命日なのよ」
静かに、しかし、力強く。
ガーネットが、言葉を紡ぐ。
「私の家族は十年前に殺された。今、私がいる、この組織みたいな組織にね」
だから、とガーネットは続け、
「私は同じことをする。世界を支配して我が一族をもう一度繁栄させる。それが私の、私の家族の望み」
ガーネットのドレスがふわりと舞い上がり、露出した太腿に鋭い竜の尾のような真紅の模様が浮かび上がる。
「この戦いに勝って、私たちは世界を支配する。我が血筋にかけて、この戦いは絶対に勝たなければならない! 母さん、父さん! 見ていますか、私が今から、ガーネット家を蘇らせてみせます!」
ガーネットがボールを取り出すと同時。紅の光が、ガーネットの瞳から放たれた。
「よくもまあ今まで好き勝手してくれたわね。丁度いいわ! ガーネット家復活の手始めに、あんたを地獄送りにしてやる!」
刹那。
ガーネットの瞳が、太腿の竜の尾が、爆発的な光を放つ。
「悪いけど、そうはいかないわよお。何だか知らないうちに、あたしがガーネットちゃんの目を覚まさせないといけなくなってきたみたいねえ」
そしてそれを見ても一歩も引かず、サクラもモンスターボールを取り出す。
「あたしは今から、ガーネットちゃん、貴女を倒して、正気に戻します。その後、お説教させてもらいます。バトルは四対四。いいですね」
非常に珍しいことに。
サクラの口調が、真剣なものに変わる。
「上等よ! 我が名誉にかけて、ロズレイド!」
「絶対に勝たなきゃね。頼むわよ、ガーメイル!」
ガーネットのポケモンはブーケポケモンのロズレイド。白い薔薇のような髪をした人型の植物のポケモンで、両手には色の違う花束を持っている。
対するサクラのポケモンは黒い体に橙の大きな翅を持つ蛾のような虫ポケモン、ミノガポケモンのガーメイル。
「やってしまいなさい! ロズレイド、ギガドレイン!」
ロズレイドの両腕の花束から、棘だらけの無数の蔓が飛び出す。
淡く輝く薔薇の蔓が、一斉にガーメイルに襲い掛かる。
「ガーメイル、虫のさざめき!」
対するガーメイルは四翅を激しく振動させて衝撃波を放ち、無数の蔓の動きを止める。
「今度はこっちからよ。ガーメイル、エアスラッシュ!」
翅の振動を止めると、今度はガーメイルは翅を羽ばたかせ、無数の空気の刃を飛ばしていく。
「ロズレイド、躱してヘドロ爆弾!」
だがロズレイドはダンサーのような身軽な動きで空気の刃を躱しつつ、徐々にガーメイルとの距離を詰めて行き、花束からヘドロの塊の弾幕を撃ち出す。
「ガーメイル、躱して蝶の舞!」
ガーメイルもすばしっこい動きで舞いながら飛び回り、ヘドロの弾幕を次々と躱していく。
同時に、ガーメイルの特殊能力と素早さが上昇する。
「だったら、これでも食らえ! ロズレイド、リーフストーム!」
痺れを切らしたガーネットが叫ぶ。
それに呼応し、ロズレイドの花束の周囲で空気が渦を巻く。
刹那、ロズレイドの両手の花束から風の渦が噴き出す。
それもただのリーフストームではない。尖った葉ではなく、赤と青の花弁の二つの嵐が、ガーメイルに襲い掛かる。
「ガーメイル! 躱して!」
上昇した素早さでガーメイルは二つの花弁の渦から逃れるが、しかし、
「甘いわ! ロズレイド!」
なんとロズレイドは蔓を振るうように両手の花束を振り、風と花弁の渦を鞭のように振るった。
回避しようとするガーメイルをしつこく追いかけ、遂に花弁の嵐に閉じ込め、吹き飛ばす。
「やるわね……! ガーメイル、大丈夫?」
地面に落とされたガーメイルは、すぐさま顔を見上げて再び飛び上がる。
タイプ相性と特防が上がっていたおかげで、致命傷には至っていないが、それでもかなりのダメージ。
逆に言えば、タイプ相性が悪く、特防も上がったガーメイルにここまでのダメージを与える今のリーフストームが、恐ろしいほどに高威力だった、ということだ。
「これで終わりなんて思ってないわよねえ! ロズレイド、シャドーボール!」
ロズレイドが飛び上がり、花束から無数の影の弾を撃ち出す。
「くっ、ガーメイル、虫のさざめき!」
ガーメイルは再び四翅を振動させて衝撃波を起こし、影の弾を次々と粉砕していく。
「ギガドレイン!」
「躱して目覚めるパワー!」
ロズレイドの花束から無数の棘だらけの蔓が飛び出し、一斉にガーメイルに襲い掛かる。
しかし素早さの上がったガーメイルは蔓を掻い潜り、ロズレイドに近づき、無数の赤いエネルギーの球体を放つ。
球体がロズレイドに炸裂すると、その部位が焼け焦げたように黒く煤がつく。
「炎タイプの目覚めるパワー……ロズレイド、もう一度ギガドレイン!」
片腕を引っ込め、ロズレイドはもう片腕の花束から棘だらけの蔓を伸ばす。
「ガーメイル、虫のさざめき!」
甲高い声を上げながら翅を激しく振動させ、衝撃波を発してガーメイルは無数の蔓を全て弾き返す。
しかし、
「ヘドロ爆弾!」
ガーメイルの翅が止まったその一瞬の隙を突き、ロズレイドはもう片方の花束を突き出し、無数のヘドロを固めたような大きなヘドロの爆弾を飛ばす。
動きを止めた瞬間のガーメイルに直撃し、ヘドロが炸裂して吹き飛ばされる。
「っ……! ガーメイル、立て直して! 蝶の舞!」
「させるもんですか! ロズレイド、ギガドレイン!」
まだ何とかガーメイルは起き上がり、美しく舞うように宙に飛び上がる。
しかしそれを待たずにロズレイドの両手から棘だらけの無数の蔓が伸び、ガーメイルへと迫る。
「ガーメイル、躱してエアスラッシュ!」
四方八方から襲い掛かる薔薇の蔓を、ガーメイルは飛び越え、潜り抜け、何とか全て回避し、ロズレイドの上を取り、四枚の翅から無数の空気の刃を落とす。
「ロズレイド、シャドーボール!」
ロズレイドも花束から次々と影の弾を撃ち出していくが、特攻が上昇しているガーメイルの方がやはり強く、影の弾は打ち破られ、ロズレイドは刃の雨にその身を切り裂かれる。
「今よガーメイル! 目覚めるパワー!」
ガーメイルの周囲に、無数の赤いエネルギーの球体が浮かび上がる。
炎の力を持つその球体を、ガーメイルは一斉にロズレイドに向けて発射する。
だが。
「ロズレイド、リーフストーム!」
両手の花束に空気の渦を纏い、ロズレイドは花弁の嵐を巻き起こす。
赤と青の花弁を舞い踊らせ、鞭のように嵐を操り、炎のエネルギーの球体ごとガーメイルを花弁の嵐に飲み込んだ。
「まず……っ! ガーメイル!?」
嵐に閉じ込められ、ガーメイルは空高く吹き飛ばされる。
「ロズレイド、決めなさい! ヘドロ爆弾!」
砲台のようにブーケを構えて、ロズレイドは真上にヘドロの塊を飛ばす。
宙を舞うガーメイルに、ヘドロの爆弾が迫る。