二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第二百二十九話 蒼天 ( No.395 )
- 日時: 2016/10/01 08:45
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
下っ端の大群を突き抜けた後、ホロとエフィシは同じ方向へと進んでいた。
二人が辿り着いたのは、古代の雰囲気の漂うこの巨大都市の中で、唯一近代的なデザインの建物。
ガラス扉も自動ドアで、内装は機械的。奥に進んでいくにつれ無数のコードが地を這い、機械の音が大きくなる。
どんどん奥へと進み、恐らく最深部と思われる場所に、二人は到達した。
そこでホロとエフィシを待ち受けていたのは。
「ようこそ、私のラボへ」
こちらに背を向けた大きな椅子が回転し、座っていた男がゆっくりと立ち上がった。
青色の髪に外国人のようにも見える顔立ち、黒いスーツの上から真っ白な白衣を着た男。白衣の下のスーツの胸元に、小さくネオイビルの紋章がある。
蒼天隊統率、序列五位——蒼天将ソライト。
「さて、誰かが来るだろうとは思っていましたが、まさか二人もいらっしゃるとは。さて、どちらが私の相手をなさいますか?」
ホロとエフィシ、二人は顔を見合わせるが、
「ホロ君。私に戦わせてください」
ボールを取り出し、エフィシが一歩進み出る。
「恐らく、君も同じことを思ってるんだと思います。ですがここは私に戦わせていただきたい。マリアさんの敵討ちを、させていただきますよ」
「……分かった。じゃあ、あの天将はエフィシにーちゃんに任せるぜ」
エフィシの気迫に少し押されたのもあり、ホロは一歩下がってエフィシに後を任せる。
「敵討ちなど物騒な。私は彼女の願いを叶えただけです。ポケモンになりたいという願いをね。言っておきますが、私があの子と接触した時、私は嘘は一言も吐いていませんよ」
「生意気な口を聞けるのも今のうちだ、蒼天将ソライト。あの子の苦しみを直接味わせることは出来ないが、出来るならそうしてやりたい気分だよ。だからせめて、本気でお前を倒してやる」
「いいでしょう。そうでなければ、意味がありませんからね」
(意味……?)
怒りを燃やすエフィシが気付いているか分からないが、一歩引いてやりとりを見ているホロは、何か違和感のようなものを感じ取った。
思い違いかもしれないが、ホロには、ソライトがわざとエフィシを挑発し、本気を引き出したように見えたのだ。
そして、当然だが二人はそんなホロの思惑には気づかず、話を進めていく。
「バトルは四対四です。この時のために、この場所を準備しましたからね」
ソライトがそう呟いた、その直後。
彼の瞳が蒼色に輝き、さらに服の下からびっしりと揃った龍の鱗のような蒼の光が漏れ出す。
「それでは、始めましょう」
「望むところだ」
二人が、同時にボールを取り出す。
「行きなさい、ジバコイル!」
「お願いします、コーシャン!」
ソライトのポケモンは地場ポケモンのジバコイル。三体のコイルが完全に連結し、磁石のユニットを三つ取り付けたUFOのようなポケモン。
対するエフィシのポケモンは、紫色の体毛に二股に分かれた尻尾を持つ大型の猫のようなポケモン、吉凶ポケモンのコーシャン。
「炎タイプだろうと問題はありません。ジバコイル、ハイドロポンプ!」
ジバコイルの左右のユニットが高速回転し、大量の水が噴き出す。
「コーシャン、躱して悪の波動!」
身軽に跳躍してコーシャンは水柱を躱すと、悪の力を溜め込み、悪意に満ちた波動を撃ち出す。
「ジバコイル、磁力線!」
さらにジバコイルはユニットの回転を続ける。
ジバコイルを中心として磁力の波が発生し、悪の波動が打ち消される。
「ならばコーシャン、ギガスパーク!」
「甘いのですがねえ! ジバコイル、雷!」
コーシャンが電撃を一点に溜め込んで巨大な電撃の砲弾を放つと同時、ジバコイルも槍のような雷撃を放出する。
お互いの放つ電撃が激突するが、やがてジバコイルの雷撃の槍が砲弾を突き破り、コーシャンを捉えた。
「私のジバコイルは電撃のプロフェッショナル。威力は問わずですが、扱える電気の量だけで言えばトパズのマカドゥスにも匹敵します。電気タイプでもないポケモンの電撃では、ジバコイルを破ることなど出来ませんよ」
「くっ、ならばコーシャン、火炎放射!」
雷撃の槍を受けたコーシャンだが、威力は削いでいた。
すぐに立ち上がると、灼熱の業火を噴き出して反撃する。
「打ち消して差し上げましょう。ジバコイル、ハイドロポンプ!」
対するジバコイルは再びユニットを回転させると、大量の水を放出させる。
コーシャンの放つ炎は、水柱に阻まれ、ジバコイルには届かない。
(やはり、攻撃性能では負けているか……)
薄々気付いていたことではあるが、コーシャンの火力はジバコイルの火力よりも低い。
ギガスパークに関してはともかく、悪の波動も火炎放射も打ち破られている。
しかし、
(だからと言ってコーシャンがジバコイルより弱いわけではない。私のコーシャンにはスピードという武器がある。それを生かして戦いますか!)
「よし、コーシャン、サイコバレット!」
コーシャンが念力を操作し、生み出した念力を実体化させて周囲に無数の念力の弾を浮かべる。
「ジバコイル、シグナルビーム!」
三つの目を妖しく光らせ、ジバコイルは激しい光を放つ三本の光線を撃ち出す。
「コーシャン、躱して一斉射撃!」
だがコーシャンは念力の弾を浮かべたまま、身軽な動きで光線を掻い潜り、ジバコイルの後ろを取る。
ジバコイルがそれに反応するより先に一斉に念力の弾を撃ち出し、無数の念弾をジバコイルへ叩きつけた。
「今です! コーシャン、火炎放射!」
続けざまにコーシャンは大きく息を吸い込み、灼熱の業火を放つ。
炎がジバコイルを飲み込み、その鋼の体を燃やしていく。
しかし、
「それくらいでどうにかなるとでも? ジバコイル、磁力線!」
ジバコイルを覆う炎が、一瞬にして薙ぎ払われた。
鋼のボディを所々黒く焦がしながら、ジバコイルがユニットを激しく回転させ、大規模な磁力の波を巻き起こす。
「スピードで負けている、だから何だと言うのです? まさかとは思いますが、スピードで撹乱すればそれで勝てる、などと甘い考えを持っていたわけではありませんよねえ?」
磁力の波がコーシャンを巻き込み、大きく吹き飛ばす。
「レオ君から聞いていませんか、私の思想を。結局、最後に勝ち残るのは力を持つものです。だから私は他の科学者と違い、力を求める。所詮一人の科学者に過ぎない私が天将の位に就き、『覚醒』を得たのも、力を求めた所以です。だから——」
「話が長い。そろそろ黙ってもらおうか」
刹那。
ジバコイルが、再び炎に飲み込まれる。
「っ……! ジバコイル!」
完全に不意を突いた一撃。予想もしない効果抜群の一撃に、今度こそジバコイルは大ダメージを受ける。
「話している最中も常に気を配っていたのですが。どうやってそこまで気配を隠しました?」
「あまり『ブロック』を甘く見るなよ。この一ヶ月、徹底的に鍛えてきたのだ。お前たちを必ず潰す、その思いを込めてな」
「……答えになっていない気がしますが、まあいいでしょう。少なくとも、貴方たちの覚悟が今までとは違う、それだけは伝わってきました」
ソライトの言葉に続き。
黒焦げになりながら、それでもジバコイルはまだ浮上する。
「それならば、尚更全力を持って戦う必要がありそうですね。ジバコイル、ハイドロポンプ!」
ジバコイルがユニットを激しく回転させ、大量の水を放出する。
「コーシャン、サイコバレット!」
対するコーシャンは念力を実体化させて無数の念弾を作り出し、一斉に射撃する。
水流と念弾がぶつかり合うが、
(ジバコイルの火力が、落ちている……?)
ハイドロポンプの威力が、互角になるまで落ちている。
耐え切ったとはいえ、火炎放射の二発は相当重かったのだろう。
ダメージが重なり、ジバコイルが本来の火力を出せなくなっているのだ。
「ジバコイル、雷!」
「ならばコーシャン、火炎放射!」
身体中から電撃を放出し、ジバコイルは槍のような激しい雷撃を放つ。
コーシャンは大きく息を吸い込み、激しく燃え盛る灼熱の業火を吹き出す。
雷撃の槍と灼熱の炎が、正面から激突する。