二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第二百三十一話 夜天 ( No.397 )
- 日時: 2016/10/03 10:16
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: MHTXF2/b)
下っ端の大群を突破した後、マゼンタは一番の目印になる城へと突入した。
そのまま上へ進んで行こうとしたマゼンタだが、そこで地下から冷たい気配を感じ、マゼンタは逆に地下へと向かった。
下へと進んでいったマゼンタが辿り着いたのは、薄暗い部屋だった。
そこまで広くなく、装飾も何もない。ただ、灰色の壁と床があるのみ。
そしてその奥には、一人の少女が車椅子に腰掛けていた。
感情を感じさせない冷たい光を湛えた瞳、黒いツインテールの髪。ゴシックなドレスに身を包み、髪留めはネオイビルの紋章の形をしている。
夜天隊統率、序列三位——夜天将ラピス。
「……貴女にだけは、来てほしくなかったのに」
冷たい声で、ラピスは呟く。
かつてはこの突き刺さるようなラピスの言葉に押されていたマゼンタ。しかし、
「あんたの気配、よう感じたわ。まるで氷みたいな冷たさやったで」
もうマゼンタは臆さない。ラピスの放つ気を弾くかのように、一歩進み出る。
「うちはあんたに事実上負けとる。最初の一回も完勝とは言えへん。せやから、今度こそちゃんと勝たせてもらうで。そう、お姉さんとも約束したんやからね」
「……ブレイズに聞かなかったのかしら。命を大切にしたいなら、その話はするなって」
ラピスの口調に、恐ろしい何かが篭る。
そして、
「だとしてもや」
もうマゼンタは引かない。放たれる恐怖も、今のマゼンタには効かない。
「正直、うちはネオイビルなんてけったいな連中のことなんかどうでもよかった。でも、こんなけ踏み込んだら話は別や。お姉さんと約束したからだけやない。うちは、うちの意思で、あんたを助ける」
「……そういうことは、あたしに勝ってから言いなさい」
ラピスの瞳が、紫色の光を放つ。
袖を捲って腕を露出させると、龍の腕のような紫の模様が浮かび上がっている。
そして。
ラピスの右目から、血の涙が溢れる。
「……流石に痛いわね。何回も覚醒してきたけど、目をやられたのは初めてよ。それだけ覚醒率が高いってことかしら」
口ではそう言うが、ラピスの表情はとても痛みを感じているとは思えないほど変化がない。
「あたしを助けるなんて綺麗事を吐くくらいなら、それ相応のバトルは出来るんでしょうね」
目を擦って血を拭い、ラピスは冷たい瞳をマゼンタに向ける。
「勿論やで。ほな、うちも本気で行かせてもらうわ」
衣服の袖から、二人はボールを取り出す。
「プラネム、神秘のひと時を」
「頑張りぃや、バフォット!」
ラピスのポケモンは惑星ポケモンのプラネム。荒廃した惑星のような球体の体に、真っ赤な目を持っている。
対するマゼンタのポケモンは、漆黒の山羊のような体に二本の黒い渦巻き角、そして真紅の一本の赤い角に同じく真っ赤な鋭い爪を持つ、悪魔ポケモンのバフォット。
「それじゃプラネム、スターフリーズ」
プラネムがふわりと浮かび上がり、冷気を発し、巨大な冷気の氷塊を撃ち出す。
「バフォット、怒りの炎!」
対して、バフォットは憤怒の感情の如く荒れ狂う灼熱の炎を吹き出す。
燃え盛る爆炎が巨大な氷塊を溶かし、
「ぶち壊す!」
さらにバフォットは地面を蹴って、上空のプラネムとの距離を一気に詰める。
「プラネム、熱風」
だがプラネムが灼熱の風を起こし、バフォットの渾身の突撃は食い止められ、逆に押し返されてしまう。
「ストーンエッジ」
さらにプラネムの周囲に白い光が迸る。
光は無数の尖った岩を形作り、バフォットへと一斉に撃ち出される。
「バフォット、メタルブラスト!」
押し戻されたバフォットが顔を上げ、強大な鋼エネルギーの砲撃を放つ。
薙ぎ払うように放たれた鋼エネルギーが、無数の岩を纏めて粉砕し、さらにプラネム本体を吹き飛ばす。
「っ、火力で負けている……プラネム、スターフリーズ」
すぐさま体勢を立て直し、プラネムは巨大な星型の氷塊を発射する。
それも一発ではない。冷気を連続で操り、氷塊が次々と飛来する。
「バフォット、怒りの炎!」
対してバフォットは足元へと怒りの如く荒れ狂う爆炎を放ち、炎の壁を作り上げる。
爆炎の壁によって、何とか氷塊は防ぎ切ったが、
「これで終わるわけないでしょ。ストーンエッジよ」
直後、バフォットの体に無数の尖った岩が次々と突き刺さる。
鋼の体を持つバフォットに岩技の効き目は薄いはずだが、それでもダメージは大きい。
「流石は第三位のポケモンやね……バフォット、怒りの炎!」
低く唸ってプラネムを睨むと、バフォットは憤怒の感情の如く荒れ狂う爆炎を放つ。
「プラネム、熱風」
対するプラネムの背後から灼熱の風が吹き荒れる。
燃え盛る爆炎は、灼熱の風によって止められてしまうが、
「今やでバフォット、メタルブラスト!」
吹き荒れる熱風がおさまったその瞬間、バフォットの真紅の角から強大な鋼エネルギーの砲撃が撃ち出される。
鋼の砲撃がプラネムの顔面を捉え、そのまま後方の壁まで大きく吹き飛ばす。
「……ふうん。ならプラネム、黒い霧」
突如。
ただでさえ薄暗い部屋全体が、漆黒の霧に覆われる。
直前にラピスの後方までプラネムが飛んでいったこともあり、マゼンタとバフォットはプラネムの姿を完全に見失ってしまう。
「バフォット、気いつけや。どっから来るか分からへんよ」
全神経を集中させ、部屋全体に気を配る。
しかし、
「無駄よ。プラネム、熱風」
バフォットの頭上の霧が、妖しく赤色に光る。
それがプラネムの瞳だと気付いた次の瞬間、一瞬にして霧が薙ぎ払われ、灼熱の風がプラネムを中心として周囲に吹き荒ぶ。
「ぐぅっ……!」
あまりに激しい風に浴衣の袖で顔を覆うマゼンタ。バフォットも何とか踏ん張るが、少しずつ押されていく。
「プラネム、ストーンエッジ」
さらに、プラネムの周りに無数の尖った岩が浮上する。
バフォットに狙いを定め、一斉に岩を撃ち出すが、
「バフォット、メガホーン!」
その寸前、熱風を何とか耐え切ったバフォットが地を蹴って大きく飛び出す。
放たれる岩を弾き飛ばし、バフォットの渾身の角の一撃がプラネムに直撃、再びプラネムを大きく吹き飛ばした。
「うちのバフォットは優秀な攻撃力と耐久力を兼ね備えとる。効果抜群の攻撃食らってもそんな簡単にはやられへんし、すぐ反撃出来るように鍛えとるんやで」
決して受けたダメージは小さくないが、マゼンタの言葉に続けて、バフォットも太い声で雄叫びを上げる。
そして、
「……だから何? そういう勝ち誇った言葉は、あたしのポケモンを倒した後にしなさいよ」
効果抜群の攻撃を立て続けに受けて、それでもなおプラネムは浮上する。
しかし、一定だったプラネムの回転の速度にズレが生じている。恐らく体力をだいぶ消耗しているのだろう。
「せやね。ほなこれで決めるで。バフォット、ぶち壊す!」
「氷の星に沈めてやるわ。プラネム、スターフリーズ」
高く上昇し、プラネムは冷気を溜め込み、星型の巨大な氷塊を連続で放つ。
対するバフォットは思い切り地面を蹴って高く跳躍し、上空のプラネムへと渾身の突撃を繰り出す。
血塗られたような真紅の角を携えた悪魔が、氷の星の中を突き進む。