二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第二百三十三話 聖天 ( No.399 )
- 日時: 2016/10/05 08:28
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
マゼンタが城に突入した後、そこから少し遅れて、レオも城の中へやって来た。
レオはそのまま城の中を上へと進んでいく。
奇しくもリョーマとは別方向へと進み、レオはただひたすら上を目指し、途中で敵とは一切遭遇せず、城の最上階へと辿り着いた。
そこには、如何にも重厚そうな扉。間違いなく、ここが最深部なのだろう。
そして、この奥にマターがいると決定付けるもう一つの理由。
それは、
「また貴方なのですね。私が相見えることになるのは」
この女の存在だ。
腰くらいまで伸びた長く美しい髪。多様な色の宝石が填め込まれた派手なドレスを着て、両耳にも宝石のピアス、首に掛けられているネックレスも虹色の宝石。そしてそのドレスの中央、腹部に、ネオイビルの紋章が描かれている。
聖天隊統率、その実力は未だ未知数——聖天将オパール。
「あんたがここにいるってことは、やっぱり、この奥の部屋にマターがいるのか」
「ええ。そして私は、我らが王を守護する者。これより先に進むには、私を倒す必要があります」
全てを滑らかに語る聖天将オパール。この女には、嘘という概念が存在しないのだろう。
しかしそれよりも問題なのはこの女の実力だ。
覚醒を見せていないどころか、そもそもオパールと戦ったことがあるのは、今までレオただ一人。
「確か、覚醒すると……セドニーが七位、ガーネットが六位、ソライトが五位。メジストが四位、ラピスが三位、トパズが二位。ということは」
目の前に立つ、聖天将オパール。この女が、序列一位ということになる。
「やっぱり、覚醒してもあんたが天将最強なのか」
「当然のことです。組織にとって一番大切な者は、組織の主。その主を守護するのは、一番強い者の役目」
流れるように滑らかな口調でオパールは話す。
「さて、勇気ある者よ。貴方はこの先に進み、我らが主を止めることを望んでいるのですね」
「ああ、そうだよ。それを邪魔するなら、お前も倒す。僕はマターを絶対に許さない」
「分かりました。それならば、今度こそ、私も全力を持って、ここで貴方を抹殺させていただきます」
オパールの口調が、明らかに変化したのをレオは感じ取った。
「それでは、お見せしましょう。聖天を司る者、オパールの覚醒を。私の覚醒を見せるのは、組織外の者では貴方が初めてです。光栄に思いなさい」
直後。
オパールの細い目がカッと大きく見開かれ、同時に虹色の光が瞳から溢れ出す。
さらに。
オパールの背中から、虹色に輝く巨大な光の翼が飛び出した。
長い眠りから目覚めた龍が飛び立つように、光の翼がゆっくりと羽ばたく。
光の大きさも、眩しさも、今まで見てきたどの天将の覚醒よりも大きい。
「これ、は……なんだ……!?」
思わず、レオは後ずさりしていた。
恐怖を覚えたのは事実だ。しかし、オパールの威圧感とか、オーラとか、そういったものに対して、ではない。
「聖天の名を持つ私に与えられた刻印は、龍の翼です」
人間の形をしているはずなのに、自分と同じ人間という生き物に見えないのだ。
人間の姿をした生物が人間の言葉を話す、たったそれだけの事実に、これほどの違和感を感じるのは初めてだった。
「これが私、聖天将オパールの覚醒です。他の天将の方々と違って、私の覚醒率は常に一定。覚醒すれば、必ず100%の覚醒率となります」
瞬きもせずに爛々と虹色に光る瞳をレオに向け、オパールは静かにそう告げる。
「どうしました? ここまで来て、怖気付いたという訳ではあり mg せんよね?」
唐突に。
オパールの言葉が、ブレた。
「……?」
怪訝な表情になるレオだが、オパールは特に気にしていない様子で、
「あぁ、失 raq しました。私が扱う龍の力は、他の天将の方々と比べ tkl も非常に強大なものでして、このような影響が出てし muz のですよ」
ブレたという言葉が適切なのか分からないが、ノイズが走ったようにオパールの声が所々おかしな音になるのだ。
しかし、
「……何かもう意味不明すぎてよく分からないけど、やることは一つ。戦って勝てばいいんだろ。そっちの方が、よっぽど分かりやすいぜ」
得体の知れない恐怖を振り払い、レオはボールを手にして再び一歩進み出る。
「それ dh は始めましょう。勝負は四対四、今度 k そ、全力で勝負いたします」
「上等だぜ。こっちもあんたにさえ勝てりゃ、もう他の天将なんて怖くねえ!」
そして、二人はそれぞれ、初手のポケモンを繰り出す。
「行きなさい、サンダース」
「頼んだぜ、ディザソル!」
オパールのポケモンは雷ポケモンのサンダース。鋭い針のような、帯電した黄色の体毛を持つ。
対するレオのポケモンは白い体に黒の体毛を持ち、額に死神の鎌のような二対の刃を持つ災害ポケモンのディザソル。
「なるほど、サンダースの動きについてこ rle るディザソルで来ましたか。ですがそう簡 tjn に勝てるとは思わないことです。それではサンダース、ミサイル針」
サンダースの全身の体毛が逆立ち、弾幕のように無数の尖った針が撃ち出される。
「なんて量だ……! だけど、ディザソル、火炎放射!」
前回戦った時よりも針の数が倍以上に膨れ上がっているが、まだまだ想定の範囲内。
大きく息を吸い込み、ディザソルは振り抜くように灼熱の業火を吹き出し、無数の針を纏めて薙ぎ払う。
「それでは、次は磁力線です」
サンダースの周囲に強い電気が発生し、磁場が歪み、サンダースを中心として部屋全体に磁力の波が吹き荒れ、
「十万ボルト」
磁力の波を受けて動きが止まったディザソルへ、サンダースが高電圧の強力な電撃を放つ。
「甘い! ディザソル、神速!」
電撃が眼前に迫った刹那、ディザソルが消えた。
次の瞬間にはディザソルはサンダースのすぐ近くまで距離を詰めており、そのままサンダースを跳ね飛ばす。
しかし、
「サンダース、ミサイル針」
宙を舞うサンダースの体毛が一斉に逆立ち、膨大な量のミサイルのような針が発射される。
返す刀で放たれた無数の針が、ディザソルへと突き刺さる。
「シャドーボールです」
さらにサンダースが狙いを定めて漆黒の影の弾を撃ち出す。
「っ、ディザソル、サイコカッター!」
対するディザソルは額の鎌に念力を纏わせ、その鎌を振り抜いて影の弾を両断する。
「さあ、行 ckm す。サンダース、ミサイル針」
サンダースの動きが一瞬止まる。
次の瞬間、風を切る音と共にサンダースの姿が消えた。
「来たか! ディザソル、引きつけてから躱せ!」
オパールのサンダースの得意技。
相手の周囲を超高速で駆け回り、全方位から弾幕のように無数の針を放つ。
だがディザソルは針をギリギリまで引き付け、直撃の寸前に光速で真上に跳躍し、弾幕を回避する。
「悪いけど、一度見た技は僕のディザソルには——」
得意げにそう言ったところで、レオは気付く。
空気を切る音だけが響き、サンダースの姿が見えない。
つまり。
「……まずった! ディザソル、第二波が来る!」
気づいた時には既に遅い。
弾幕のような無数の針が再び空中のディザソルへと一斉に飛来し、今度こそディザソルに突き刺さった。
「くっ……ディザソル、大丈夫か?」
針の弾幕を受けて床に叩き落とされるも、すぐにディザソルは起き上がり、レオの言葉に頷く。
「やるな……流石は第一位、前回と同じようにはいかないってか」
そう言いながら、レオは覚醒したオパールを見据える。
背中から虹色の翼を伸ばし、光り輝く瞳を瞬き一つさせないその姿は、無慈悲なる天使のようだった——