二次創作小説(紙ほか)

Re: 第十一話 黒金属 ( No.41 )
日時: 2013/08/15 13:36
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: Q1X0ZXes)

「まずは貴方よ、スミロドン!」
ユカリの一番手は、青い体毛を持つ、四足歩行の肉食獣のようなポケモン。口から突き出した二本の鋭い牙が特徴的だ。
スミロドン、サーベルポケモン。岩・電気タイプ。
「スミロドンか、懐かしいポケモンだな。岩タイプが付いてるから……ポッチャマ、行くぞ!」
レオの一番手は、いきなりのポッチャマだ。
「あら、電気タイプ使いの私に、初手から水タイプ? 何か策でもあるのかしら」
「ですがスミロドンは岩タイプも持っています。だから水技がよく効く。水タイプを出すならこのタイミングでしょう」
簡単に言えば、レオはここ以外でポッチャマを出し辛いということだ。
なるほどね、とユカリは頷き、
「じゃあ行くわよ。スミロドン、マッハボルト!」
スミロドンは瞬時に電気エネルギーを作り出し、素早く電撃を放つ。
「ポッチャマ、アクアジェット!」
対してポッチャマも素早く水を纏い、跳び上がって電撃を避けると、そこからスミロドン目掛けて突撃する。
「先制技には先制技か……スミロドン、原始の息吹!」
スミロドンは古代の力の込められた息吹を放ち、ポッチャマのアクアジェットを相殺する。
「シャドークロー!」
そこにスミロドンが跳び、影で作った爪でポッチャマを切り裂く。
「ならポッチャマ、バブル光線!」
ポッチャマはすぐに体勢を整え、上手く着地し、勢いよく泡の光線を噴射する。
「スミロドン、シャドークローで破壊!」
襲い来る無数の泡を、スミロドンは影で作った爪で次々と破壊していく。
「今だぜ、アクアジェットだ!」
泡を破壊し、影の爪が尽きたところを狙って、ポッチャマは水を纏って突撃し、今度はスミロドンを吹っ飛ばす。
スミロドンが地面に落ちると、ガキン、と痛そうな音がする。
普通のバトルフィールドと違い、このフィールドは硬い黒金属で出来ている。
地面や壁へ叩きつけられたときのダメージは、通常よりも大きくなるだろう。
「いいとこ狙うね。スミロドン、原始の息吹!」
スミロドンは原始の力を込めた息吹を放つ。
「ポッチャマ、躱せ!」
ポッチャマは息吹を避けるが、一撃では終わらない。
ポッチャマに反撃の隙を与えず、執拗にポッチャマを狙い続ける。
(大丈夫だ。これは息吹、だから途中で息継ぎが必要になる。ずっと続くわけじゃない)
だからポッチャマは息吹を避けつつも、少しづつスミロドンに近づいていく。
そして、そのレオの考えは、すぐに的中する。
スミロドンの息吹が、次第に弱くなってきた。
「よし、ポッチャマ、バブル光線!」
スミロドンの息が切れた瞬間を狙って、ポッチャマは泡の光線を放つ。
「まずっ……原始の息吹!」
すぐさまスミロドンは息を吸い、原始の力を込めた息吹を噴き出す。
技の出が少し遅れ、少し泡を喰らってしまうが、致命傷には至らない。
「へえ。タイプ上では不利なのに、なかなかやるねそのポッチャマ」
そんなことをいうユカリだが、表情は全く変わらない。相変わらずのにこやかな笑みを浮かべている。
「だったら、次はこうしちゃおっかな」
ユカリは一拍置き、そして。

「スミロドン、雷の牙!」

スミロドンは長く鋭い牙に電撃を纏わせ、次の瞬間、その牙を金属の床へと思い切り突き刺す。
そう、突き刺したのだ。金属の床が、容易く貫通された。
「……! すごいパワーだな。でも、一体何を……」
スミロドンの奇怪な行動に怪訝な表情を浮かべるレオだが、その答えはすぐに分かった。
突如、ポッチャマが電撃を受けたように体を痙攣させ、苦しい表情を浮かべる。
「!? ポッチャマ、どうした!?」
少ししてポッチャマの痙攣は止まるが、相変わらず辛そうな表情を浮かべ、肩で息をついている。
「……まさか」
「ええ、そのまさかよ」
ユカリは相変わらずの笑顔だが、その笑顔に別の何かが込められているようにも見える。
「この床は知ってのとおり金属で出来てるの。電気をよく通す金属が、床を伝って貴方のポッチャマに伝わり、貴方のポッチャマは雷の牙の電撃を浴びた。そんなところね」
自慢げにユカリは言う。
「なるほど、それは厄介だな……」
「でしょ。スミロドン、マッハボルト!」
スミロドンは瞬時に電撃を発生させ、そこから電撃を放つ。
「くっ、ポッチャマ、躱してアクアジェット!」
ポッチャマは横に跳び、すんでのところで電撃を避け、さらにそこから水を纏い、地を蹴って跳び出す。
「スミロドン、シャドークロー!」
突っ込んでくるポッチャマに対し、スミロドンは影で作った爪を振りかざし、ポッチャマを迎撃する。
しかし、
「ポッチャマ、回避!」
間一髪でポッチャマは軌道を変えて爪の一撃を躱し、スミロドンに激突した。
「ッ、スミロドン! まだよ、雷の牙!」
スミロドンは何とか体勢を取り戻すと、今度は地面に突き刺すのではなく、そのままポッチャマへと向かってくる。
「上等だぜ! ポッチャマ、バブル光線!」
ポッチャマは向かってくるスミロドンへと、大量の泡の光線を放ち、迎撃を狙う。
だが、
「かかったわね! スミロドン!」
スミロドンは一瞬で横へ逸れて泡を避け、その牙を思い切り床へと突き刺した。
「……ッ! まずっ……!」
しかし既に遅い。
スミロドンの牙から瞬時に電撃が伝えられ、ポッチャマへと伝わり、ポッチャマは電撃を浴びる。
「これで決めるわ! スミロドン、シャドークロー!」
スミロドンは地を蹴り、大きく跳び、影の爪を作って、思い切りポッチャマへと斬りかかる。
だが、これはユカリにとっては失策だった。
具体的には、不用意にスミロドンをポッチャマへと近づかせたことが。
「舐めるな! ポッチャマ、アクアジェット!」
ポッチャマは痺れる体を無理やりに動かし、水を纏って突撃する。
スミロドンの爪を掻い潜り、その腹に思い切り激突した。
「スミロドン!」
スミロドンは吹っ飛ばされ、金属の床へと落ち、戦闘不能となった。
「スミロドン、よくやったわ。休んでいてね」
ユカリは屈みこんでスミロドンの頭を撫で、ボールへと戻す。
「まさか有利なはずの水タイプに先手を取られちゃうなんてね。でも、バトルはここからよ」
「ええ、分かってますよ。まだまだここからです」
ユカリは柔和な笑顔を浮かべたまま、次のボールを取り出す。