二次創作小説(紙ほか)

Re: 第十二話 磁力 ( No.42 )
日時: 2013/08/15 13:37
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: Q1X0ZXes)

「じゃあ、次は貴方ね、コイル!」
ユカリの二番手は、鋼の丸い体に一つの目があり、左右にはU字型磁石のようなユニットが、上下に合計三本のネジが填められたようなポケモン。
磁石ポケモンのコイル。電気・鋼タイプ。
「コイルは見たことあるぞ。確か特攻と防御が高いんだったな」
ウチセトでの記憶をたどり、レオはコイルの特徴を記憶から引っ張り出す。
「だったら特殊技だな。ポッチャマ、バブル光線!」
ポッチャマは勢いよく泡の光線を発射する。
「コイル、電撃波!」
対してコイルは素早く電撃の波を撃ち出し、泡を破壊。
「磁力線!」
さらにコイルは左右のユニットを回転させて磁力を操作し、磁力の波を放つ。
磁力線は軌道が見えない攻撃のため、避け辛い。効果今一つだが、軌道の見えない一撃をまともに喰らい、ポッチャマは大きく体勢を崩す。
「そこよ! 電撃波!」
その隙を逃さず、コイルは素早く電撃の波をポッチャマに浴びせる。
電気技は効果抜群。加えてスミロドン戦でのダメージもあり、ポッチャマは戦闘不能となって倒れてしまう。
「ポッチャマ、よく頑張った。戻って休んでてな」
レオはポッチャマを労い、ボールへと戻す。
(次はどっちがいいかな。コリンクもトゲピーも特に有効打はないけど、エースにトゲピーをぶつけるのも危ないか。だから……)
「次はお前だ。頼んだぞ、トゲピー!」
レオの二番手はトゲピー。だがこの意図としては、ここでトゲピーを出したいというより、ここでコリンクはとっておきたい、といったものだ。
「へえ、珍しいポケモン。どこでゲットしたのかしら?」
「父の知り合いから卵を貰ったんです。その卵から孵りました」
それを聞くと、ユカリは、へえ、と頷き、
「じゃ、始めましょうか。コイル、目覚めるパワー!」
コイルはユニットから水色のパワーの球体を放つ。
「色的にそのパワーは水タイプだな。トゲピー、躱して神通力!」
トゲピーはジャンプして球体を避けると、神々しい念動力を放って反撃。
コイルの動きを操り、コイルを地面へと叩きつける。
「やるねえ。だけど私のコイルの体は硬い鋼で出来ている。金属に叩きつけられたくらいでは、そうダメージは大きくないわよ」
実際、コイルは硬い床に叩きつけられた直後とは思えないように、即座に宙へと浮かび上がってくる。
「コイル、次は凍える風!」
コイルは凍りつくような冷たい風を放つ。
「トゲピー、原始の力で防御だ!」
対してトゲピーは宙に浮かべた岩をトゲピーの前まで移動させ、風を受け止める。
「今だぜ、原始の力発射!」
コイルの放つ風が尽きたところを狙って、トゲピーはその岩をコイル目掛けてぶつける。
しかし、やはり効果は今一つ。コイルへのダメージはそう多くない。
「その程度じゃ私のコイルは倒せないわよ。コイル、電撃波!」
すかさずコイルは反撃に出る。
電撃の波を放ち、その波は素早くコイルへと襲い掛かる。
トゲピーは電撃をまともに喰らうが、勿論それだけでは倒れない。
「だったらこれを使ってみるかな。トゲピー、まずは神通力!」
トゲピーは神々しい念道力を操り、コイルの動きを止め、地面へと叩きつける。
「よーし、運試しだ! トゲピー、指を振る!」
トゲピーは素早く指を振り、指が青白く輝いていく。
そして。
今回は相当な運が向いたらしい。
トゲピーの手に、ドリルにも見えるオーラが宿っていき、トゲピーはそのドリルを思い切りコイルへと振りかざす。
「いいぞ、ドリルライナーだな!」
ドリルライナーは地面技。加えて、コイルはようやく神通力から抜け出せたばかりで、ドリルライナーを避けることは不可能だ。
しかし。

ユカリは、その不可能を容易く可能へと変えてしまう。

「コイル、磁力を強めるのよ」
その指示で、コイルは素早く右のユニットを持ち上げて壁へと向け、磁力を思い切り強める。
次の瞬間、コイルの体が思い切り横へとブレた。
「!?」
突然とんでもない動きをしたコイルに、驚くレオ。
パッと横を見ると、コイルはユニットを使い、金属で出来た壁にくっついていた。
「君には言ってなかったと思うけど、壁や床の金属は鉄でできているのよ。鉄は磁石にくっつくのは知ってるわよね」
つまり、コイルの強めた磁力により、鉄の壁がコイルを引き寄せ、コイルは高速で移動できた、ということだ。
「なるほど……。くっ、せっかくのドリルライナーだったのにな……」
トゲピーの指先から出ていたドリル状のオーラは、既に消滅してしまっていた。
「作戦としては上手いものだったし、運もよかったみたいだけど、私の方が一枚上手だったってことね。コイル、磁力線!」
コイルは壁から離れると、磁力を操作し、軌道の見えない磁力の波を発射する。
磁力線は軌道が見えず、避け辛い。
「くっ、トゲピー、原始の力!」
トゲピーは宙に岩を浮かべ、その岩で防御しようとするが、磁力線は岩には強い鋼タイプの技。
磁力線は岩を突き破り、岩の破片が飛び散り、トゲピーは磁力線に吹っ飛ばされる。
しかし、思ったよりもダメージが少ない。
(……? どうしたんだ……?)
そう言えば、先ほどの神通力も、やや威力が上がっていた気がする。
最初は効果今一つで大したダメージは無かったはずなのに、指を振るの前に放ったものはそこそこの威力があった。
レオは頭を回転させ、考える。
トゲピーの特性は……。そしてトゲピーが行った技は……。
(! 原始の力か!)
そう。
原始の力により、今のトゲピーは全能力が上がっているのだ。
本来、原始の力のその追加効果は簡単には発動しないが、トゲピーの特性は天の恵み。追加効果が発生しやすい。
「よし、賭けるか! トゲピー、原始の力!」
トゲピーは宙に岩を浮かべ、その岩をコイル目掛けて放つ。
「そんなに効かないわ。コイル、耐えてからの電撃波!」
コイルは動かず、すぐさま反撃の準備をするため、電撃を溜め込む。
しかし、その岩にはユカリが思っていたよりも大きい威力があったらしく、コイルは思わぬ一撃に体勢を崩す。
「……え? あ……!」
「ようやく気づきましたか! トゲピー、頭突きだ!」
その隙を逃さず、トゲピーは地を蹴って跳び出す。
体勢が整っていないコイルに、堅い頭突きを喰らわせ、コイルを吹っ飛ばす。
効果今一つだが、思いもよらない威力。
「くっ、コイル、磁力線!」
「なら、トゲピー、神通力!」
コイルの放つ、軌道の見えない磁力の波を、トゲピーは正面全体に神々しい念動力を放つことで、磁力線を相殺する。
「もう一撃だ!」
間髪入れず、トゲピーはもう一度その念動力を操作し、コイルの動きを操ってしまう。
「原始の力!」
トゲピーは念力を操り、コイルを思い切り地面へと叩きつけると、宙に岩を浮かべ、コイル目掛けて放つ。
「避けきれないわね……コイル、壁へ!」
コイルは再びユニットの磁力を強め、壁へと移動しようとするが、
「その手はもう通じませんよ! トゲピー、神通力!」
コイルが高速で動く寸前、トゲピーはコイルへと念力を掛け、コイルが動こうとしていた方向へとコイルを投げ飛ばす。
そちらへ動こうとしていたコイルは、念動力の力も上乗せされ、とんでもない勢いで壁へと叩きつけられる。
「ッ、コイル!」
あろうことか金属の壁にめり込み、コイルは戦闘不能になっていた。
「うーん、コイルも負けちゃったか。ありがとうコイル、休んでてね」
ユカリの立っている位置から直接ボールに戻すこともできたが、ユカリはコイルのところまで近づき、コイルを壁から引き抜くと、その頭を撫で、ボールへと戻す。
スミロドンの時と言い、ユカリはポケモンに愛情を注いでいるのがよく分かる。
「さあ、遂に私のエースの登場よ。覚悟はいい?」
ユカリは自信に満ちた笑顔を浮かべ、最後のボールを取り出す。