二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第十六話 緋天将 ( No.53 )
- 日時: 2013/08/15 13:40
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: Q1X0ZXes)
「緋天……将……?」
まずい。
素直にそうレオは感じた。
まだ相手のポケモンすら見ていない状況だが、トレーナーから放たれる戦意のようなものが圧倒的に違う。
その女——ガーネットは隊長を後ろへと蹴っ飛ばし、懐からボールを取り出す。
「で、貴方はこのメモリーカードを取り戻しに来たんでしょう? ジムリーダーはどこかしら、教えなさい」
「生憎だけど、途中から別行動だ。どこにいるかは僕も分かんねえよ」
気持ちを奮い立たせ、平静を装い、レオはそう返す。
対して、ガーネットは薄笑いを浮かべると、
「私を騙そうとしたって無駄よ。もう一度聞くわ、ジムリーダーはどこ? さあ、教えなさい」
「何度聞いても答えは一緒だぜ。別れたところまで案内なら出来るけどな」
レオの答えも変わらない。ガーネットは表情を特に変えず、
「そう。だったら少々痛い目に遭ってもらうしかないわね」
懐からボールを取り出す。
「我が血筋にかけて、グレイシア!」
ガーネットが繰り出したのは、水色や青を基調とし、耳元が垂れ下がっており、体のところどころに菱形の、氷の結晶の模様がついた四足歩行の獣型のポケモン。
グレイシア、新雪ポケモン。氷タイプ。
(まずい……)
レオは見た目でグレイシアの強さをはっきりと感じ取ることが出来た。
それはレオがポケモンを見る目に優れているからではない。このグレイシアが、素人でも見れば分かるほどのオーラを放っているからだ。
「だけど……やるしかない! 出て来い、ポ——」
「ワークロ、マグナムパンチ!」
レオがポッチャマを繰り出す直前で、ガーネットの後ろの壁が吹き飛び、そこから出て来たワークロが大砲のような拳を構えて跳んできた。
しかし、ガーネットは全く焦らない様子で、
「グレイシア、守る!」
グレイシアは素早く守りの結界を張り、ワークロの拳を弾く。
「レオ、大丈夫?」
「ええ、何とか……。それより、まずはこいつを」
レオはガーネットを指さす。
そのガーネットは後ろから来た襲撃者の方を向き、ため息を付き、
「何がデンエイのジムリーダーよ。シヌマのジムリーダーが来てるじゃない。ほんっとに下っ端は使えないわね」
わざわざ蹴っ飛ばした隊長の下っ端のところまで近づくと、突っ伏している隊長の下っ端の背中を思い切り踏みつける。
隊長は完全に気を失っているのか、声を上げないが、それでも痛々しい。
「さて、ジムリーダーの貴方が相手ね。この高貴な私が、貴方みたいな野蛮な奴に負けるはずはありませんが、メモリーを取り戻したいんでしょう? かかっておいでなさい」
「上等じゃないの。私はそういう身分を利用して気取ってるクソ野郎が大っ嫌いなんだよ」
ガーネット&グレイシア、ママル&ワークロが対峙し、睨みあうが、その時、
「パチリック、メガショック!」
どこからか現れたパチリックが、ユカリの声と共に、バチバチと弾ける電撃を放つ。
「ん? グレイシア、シャドーボール!」
素早くガーネットは反応し、グレイシアは影の弾を発射し、電撃を相殺する。
「さっきの下っ端はジムトレーナーに引き渡してきたわ。ジムリーダー一人ならともかく、二人のジムリーダーと私に勝ったトレーナーの三人が相手よ。貴方に勝ち目はないわ」
ユカリの言うとおり、これで三対一。ガーネットの勝ち目はない。
「はあ、これは詰んだわね。『本気』を出す許可はまだ出てないし、任務失敗か、つまらないわ」
ガーネットは投げやりな口調でそういうと、ユカリへとペタメモリを放り投げる。
さらに、まるで目の前の三人など気にしていない様子で呟く。
「そうだ、下っ端のせいにしちゃえばいいじゃない。というか実際、この馬鹿どもが足止めに失敗したからこうなったんだわ。そうよ、私は悪くないじゃん」
そして、ガーネットは薄ら笑いを浮かべたまま、三人を一瞥し、
「グレイシア、冷凍ビーム!」
グレイシアは地面へと冷気の光線を放ち、地面に氷の壁を作り上げる。
「逃がさないぞ、クソ野郎! ワークロ、マグナムパンチ!」
少し遅れてワークロが大砲のような勢いで拳を氷の壁へとぶつけるが、一発では壊れない。
二、三発打ち込み、ようやく氷の壁が破壊されるが、既にガーネットとグレイシアは跡形もなく消えていた。
「くっそ、逃がしちゃった……」
「いいんだよ、ママル。ペタメモリは無事に取り返せたわ。さ、町に戻りましょう。レオ君もありがとうね」
ガーネットは取り逃したものの、隊長含む多数の下っ端を捕らえ、とりあえず、事件は一件落着。
デンエイシティの電気は、間もなく復旧した。
塔にペタメモリが再びはめ込まれ、ジムや民家にも電気が再点灯した。
「じゃ、私はそろそろシヌマに戻るね。レオ、なるべく早くシヌマに来てね。ジム戦楽しみにしてるよ」
ママルはレオとユカリに手を振り、去っていった。
「レオ君、一日お疲れ様。今日はデンエイに休んでいくといいわ」
「ユカリさんこそお疲れ様です。ペタメモリ、無事に戻ってきてよかったですね」
「レオ君のおかげよ。次の町、アカノハシティは、デンエイ炭鉱を抜けてしばらく行ったところにあるわ。次のジム戦も頑張ってね」
「ありがとうございます!」
N・E団がデンエイに呼んだ危機はこうして去った。
明日は新しい町、アカノハシティに出発だ。