二次創作小説(紙ほか)

Re: 第二十四話 振るう炎剣 ( No.68 )
日時: 2013/08/15 13:48
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: Q1X0ZXes)

「コーシャン、悪の波動」
「ポッチャマ、躱してアクアジェット!」
コーシャンは悪意に満ちた波動を発射するが、ポッチャマは素早く跳んで波動を避け、水を纏って突貫する。
「あらあら、コーシャン、バグノ——」
モミジが指示を言い終える前にポッチャマはコーシャンに激突し、コーシャンを吹っ飛ばし、体力が残り少ないコーシャンを戦闘不能にする。
とはいえ、今のはモミジが指示を急いでいれば十分間に合うタイミングだったが。
この辺りはモミジのマイペースがマイナスに働くのだろうが、本人は全く気にしている様子もなく、
「まぁ。コーシャン、よく頑張りましたね」
ニコニコ笑顔のまま、コーシャンをボールに戻し、最後のボールを取り出す。
「さあ、私の一番星の登場でございますよ」
一番星とはおそらくエースのことだろう。
「サムラダケ、出番でございますよ」
モミジのエースは、水色の服を着たようにも見える、赤いキノコのようなポケモン。
カサの部分に目があり、頭の先端は尖っているが、最大の特徴は細長いキノコのような剣を持っていることだ。
サムラダケ、キノコポケモン。草・炎ポケモン。
「サムラダケ……確かグレースさんが使ってたよな……」
グレースとはウチセトのチャンピオンのことである。ただこのサムラダケは、グレースのと比べると少しおっとりしているように見える。
「だけど勝つのは僕だ! 行くぞポッチャマ、アクアジェット!」
ポッチャマは再び体に水を纏い、突撃する。
「ではサムラダケ、辻斬りでございますよ」
突っ込んでくるポッチャマに対し、サムラダケはその剣を横なぎに振るい、ポッチャマを迎撃する。
しかし、その直前でポッチャマは軌道を下げて剣の一撃を避け、そこから地を蹴って改めて跳びだし、サムラダケの顎へと激突する。
「あらあら、サムラダケ、反撃でございますよ。火炎放射」
サムラダケは頭を振って体勢を立て直すと、口から灼熱の炎を噴射する。
どうやらモミジのポケモンは三体とも火炎放射を覚えているようだが、
「ポッチャマ、バブル光線!」
ポッチャマは泡の光線を勢いよく噴き出し、炎を打ち消し、さらにサムラダケにも襲い掛かる。
「躱してリーフブレードでございますよ」
今度はサムラダケは地を蹴って跳び、上空から剣に草木の力を込めて斬りかかる。
「ポッチャマ、下がってからの乱れ突きだ!」
サムラダケの上からの斬撃をポッチャマは後ろに下がって避け、そこからサムラダケ目掛けて嘴を突き出す。
しかし、サムラダケはもう一度剣を振るい、ポッチャマの嘴を弾き飛ばし、
「もう一度でございますよ」
さらにもう一なぎの剣を振るい、ポッチャマを切り裂く。
咄嗟にポッチャマは身を捻って剣を避けるが、それでも剣がポッチャマを掠める。
「やるな! ポッチャマ、バブル光線!」
ポッチャマは素早く起き上がり、大量の泡の光線を放つ。
「サムラダケ、クロスポイズン」
対してサムラダケは毒を込めた剣を十の字型に振るって泡を破壊。
「アクアジェット!」
そこにすかさずポッチャマの水を纏った突進が襲い掛かる。
「辻斬りでございますよ」
サムラダケは剣を横なぎに振るい、ポッチャマの動きを止めるが、
「乱れ突きだ!」
そこでポッチャマの動きは止まらない。
嘴を突き出し、連続でサムラダケを突く。
「まぁ。なかなかやるようでございますね。では、こちらも」
ほんの若干だが、モミジの声色が変わる。
と同時に、サムラダケも剣を構え直し、攻撃態勢を取る。
「サムラダケ、剣へと火炎放射」
すると、サムラダケは自分の剣へと炎を放つ。たちまちサムラダケは炎の剣を手にする。
「炎の剣か。だけど僕のポッチャマの水技の前では、その戦術は無意味ですよ」
自信満々に言い放つレオ。
しかし、そのレオの言葉に、モミジは、うふふ、と返すと、
「サムラダケ、リーフブレードでございますよ」
サムラダケはその剣を高く振り上げ、

その炎の剣を、地面を抉るように振るう。

「はあ……?」
一瞬、レオは何を考えているか分からなかった。
しかし。
次の瞬間、フィールドを覆う草が炎に包まれ、激しく燃え上がる。
「ッ!? 嘘だろ……?」
「残念ながら本当でございますよ」
フィールドを燃え上がらせる炎は、周囲の草へと恐るべきスピードで燃え移っていく。
レオから見れば、まるで炎の津波が襲い掛かってくるように。
「くそっ、こんなもん避けようがない! ポッチャマ、少しでもダメージを減らすぞ! バブル光線!」
あまり意味は無いと分かっていながらも、レオはこうするしかない。
ポッチャマは無数の泡の光線を発射するが、炎の大きな波は泡を容易く破壊し、ポッチャマに襲い掛かる。
「ちっ、ポッチャマ、アクアジェット!」
ポッチャマは体に水を纏うが、攻撃用ではない。体を水で覆い、少しでもダメージを減らすための苦肉の策だ。
直後、炎の波が容赦なくポッチャマを呑み込む。
最初は水で何とか耐えていたポッチャマだが、少しするとポッチャマを覆う水は吹き飛ばされ、ポッチャマは炎に体を焼かれていく。
炎の大波が消えると、ポッチャマはまだ何とか立っていた。
そしてバトルフィールドは凄いことになっていた。先ほどの綺麗な緑色の草は焼き尽くされて跡形もなく消えており、所々黒く焦げた地面と岩だけが残っている。
「まぁ。効果今一つといえ、今の攻撃でまだ立っていられるとは、流石でございますね」
サムラダケの後ろだけは、わずかに草が残っている。
「見ての通り、この技は一バトルに一度のみ使える私の切り札でございますよ。ですが、この後の草を植え替える作業も大変なのでございますけど」
モミジは笑顔のままそんなことを言うが、今大事なのはそこではない。
「それでは。サムラダケ、そろそろ決めましょう。リーフブレードでございますよ」
サムラダケは草の力を込めた剣を構え、ポッチャマとの距離を一気に詰めていく。
「今のポッチャマじゃ躱せないな……くっそ! ポッチャマ、やれるだけのことはやるぞ! アクアジェット!」
ポッチャマも何とか立ち上がり、地を蹴って跳び出す。しかし、

水を纏わずに、だ。

「!?」
驚いたのはむしろレオだ。
水を纏わず、ポッチャマは嘴を伸ばし、その嘴を体ごと高速回転させてサムラダケへと突っ込む。
回転しながら突っ込むことによって、サムラダケが振り下ろした剣は遠くへと弾き飛ばされ、ドリルのような嘴がサムラダケをまともに捕らえた。
「これは……ドリル嘴! 新技だな!」
レオは図鑑を取出し、技を確認する。
アクアジェットの代わりに放ったのだが、代わりに消えていたのは乱れ突きだった。
いや、それだけではない。我慢も消えて、もう一つの別の技を覚えている。
そして、飛行技のドリル嘴は、サムラダケには効果抜群。予想外の一撃に、サムラダケは大きく吹っ飛ばされる。
「まぁ。ここで新技とは、流石でございますね」
サムラダケはまだ何とか起き上がる。
剣が無いことに気づき、慌てて剣を取りに行こうとするが、
「させませんよ! ポッチャマ、冷凍ビーム!」
ポッチャマは冷気の光線を発射し、剣を氷の中に封印してしまう。
「あら? これは少々まずい状況でございますね」
表情を崩さないまま、モミジは言う。
「ですが、まだでございますよ。そのポッチャマは体力は残りわずか。サムラダケ、火炎放射」
剣を失ったサムラダケだが、もう一つ技がある。
最後の手段、サムラダケは灼熱の炎を噴射し、ポッチャマを狙う。
「ポッチャマ、決めるぞ! アクアジェット!」
ポッチャマも、その身に水を纏う。
しかし、特性激流により、ポッチャマを覆う水は激しい水の流れのように荒れ狂う大量の水だ。
その水を纏い、ポッチャマは跳ぶ。
灼熱の炎を打ち破り、水の砲弾となったポッチャマはサムラダケに激突し、サムラダケは壁まで直線で吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられる。
「……あらぁ?」
ゆっくりとモミジは後ろを振り返る。
サムラダケは戦闘不能となり、目を回していた。


「大変いいバトルをさせていただいたのでございますよ。ありがとうございました」
満面の笑顔でモミジは言う。
カンタロウも観客席からレオの元へ来ていた。
「いいバトルだッたべ、レオ。あスこでポッチャマが新技さ習得したのは、お前ン事信頼してるッて証拠だべ」
「ありがとう、カンタロウ。僕ももっとポッチャマの強さを引き出してやらないとな」
「あらあら、二人とも、いい友達でございますね」
二人のやり取りを見てモミジはニッコリと笑い、箱を取り出す。
紅葉にも炎にも見える、赤いバッジだ。
「アカノハジム勝利の証、シルマバッジでございますよ」
「ありがとうございます!」
ホクリク地方三つ目のバッジ、シルマバッジが、レオのバッジケースに填め込まれた。