二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第二十五話 碧天将 ( No.70 )
- 日時: 2013/08/15 13:49
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: Q1X0ZXes)
レオとカンタロウが、ジムを出ようとしたとき、唐突にライブキャスターの着信音が鳴った。
「?」
自分のライブキャスターを確認するレオだが、どうやら自分のではないようだ。
カンタロウの方を見るが、カンタロウも首を横に振る。
「あらあら、ソライト博士からでございますね」
後ろでモミジの声がした。どうやらモミジもライブキャスターを持っているようで、そっちに着信があったようだ。
しかも、
「ソライト博士だって?」
思わずレオは振り返る。
「レオ、どォした? 知り合いだか?」
「ああ、僕のトゲチックは卵から生まれたんだけど、その卵をくれた人なんだ」
とりあえず、ソライト博士に一言お礼も言いたいので、レオはこの場でお礼を言えないだろうかとモミジに駆け寄る。
レオの話が聞こえていたようで、モミジは特に気にせず、
「まぁ。ソライト博士、お久しぶりでございますね」
レオも画面が見えるように腕を動かす。
モニターの向こうに写っているのは、懐かしい蒼い髪のメガネをかけた博士だ。
しかし、
『たっ、大変です!』
ソライト博士の様子がおかしい。
「まぁ。どうしたのでございますか?」
『アカノハの研究所がN・E団の襲撃を受けました! い、今すぐ増援を……うわあぁぁぁ!』
「!? ソ、ソライト博士!」
レオが叫ぶが、モニターの画面はテレビの砂嵐のような画面となり、ザーザーと音が響く。
あらぁ? とモミジは首をかしげるが、その直後。
『お前がアカノハシティジムリーダーか』
モニターの画面に、別の顔が映った。
緑色の髪を立てており、瞳は若草色で、顔だちの整った美男子だ。
「お前は誰だ?」
真っ先に反応したのはレオだった。カンタロウは先ほどから一言も発さず、じっと画面を見据える。
『俺はN・E団七天将の一人、碧天のセドニー。アカノハ研究所は占領した。ジムリーダーよ、研究所を開放したければここに来い』
レオとカンタロウの表情がわずかに引きつる。
対して、モミジの表情はにこやかなままだった。
「まぁ。ソライト博士の、お友達でございますか?」
モニター越しに写る、碧天将セドニーと名乗った男を含め、モミジ以外のその場にいた全員が凍りついた。
「私はアカノハシティジムリーダーのモミジでございますよ。よろしくお願いしますね」
『……ちょっと待て。俺の話を聞いていたのかお前——』
「そうそう、今日は週に一度の木の実の入荷日でございますよ。ソライト博士を誘っていっしょにいかがでございますか?」
恐るべきモミジのマイペース。
ユカリとは違い、たとえどんな状況においても笑顔とペースを崩さない。
相手を自分のペースへとどんどん引き込んでいってしまう。それがアカノハシティジムリーダー、モミジ。
『くそっ、こっちの話を——』
「あ、あらあら、ソライト博士へ頼まれていた花を買いわすれていたのでございますよ。申し訳ありませんが、ソライト博士に言っておいてほしいのでございますよ」
セドニーの言葉が途切れる。レオとカンタロウは別の意味で驚いた表情を浮かべ、モミジを見つめる。
『……ちっ、とにかく、町のはずれにある研究所に来い!』
面倒くさそうにセドニーは怒鳴り、一方的に通話が切られてしまう。
「……あらぁ?」
不思議そうにモミジは首を傾げるが、
「ソライト博士にも楽しいお友達がいるのでございますね」
いかにも天然な笑みを浮かべる。
「……モミジさん、あいつはN・E団ですよ」
「しかも天将とか言ッてたべな。確か幹部的立ち位置だッたか」
レオとカンタロウの言葉を聞いて、ようやくモミジは先ほどの相手が誰だったか理解したようだ。
しかし、ユカリとは違ってニコニコ顔を崩すことは無い。
「あらあら。でしたら、助けに行かなければいけないみたいでございますね」
そう言うとモミジは畳から立ち上がる。意外と背が高い。
しかし、
「待ッた」
モミジをカンタロウが止める。
「まぁ。どうしたのでございますか?」
「オラの予想だが、多分こりゃ罠だべ。奴ら、多分町の中心のジムリーダーさ誘い込んで、集団で叩いて、一気に町さ支配すッて戦法よ」
だから、とカンタロウは続け、
「ここはオラとレオが行く。モミジさンはここで待ッとるべ。レオ、いけッか」
「そういう事なら僕も行くぞ。モミジさんを危険に晒すわけにはいかないぜ」
任せてください、と二人はモミジに告げる。
「まぁ。それでは、お願いするのでございますよ」
モミジは笑顔でそう返す。
そして二人は、モミジから研究所の場所を聞き、その研究所へ向かう。
モミジの話によると、ソライト博士はあちこちの町に研究所を設けているらしい。
アカノハ研究所はその中の一つ。
「ここか」
入口の近くには、たくさんの足跡がある。
「ッし。じゃ、まずオラが先入る。多分たくさんの下っ端が一斉に襲い掛かってくッから、そこをお前が纏めて薙ぎ払う。大丈夫か」
「よし、任せとけ。ルクシオ、出て来い」
レオはルクシオを出し、まずはカンタロウが先に入る。
ドアを開けて、一歩踏み入れた瞬間。
大勢の下っ端が、カンタロウ目掛けて襲い掛かってきた。
「やッぱな! レオ、今だべ!」
「任せろ! ルクシオ、メガショック!」
そこにすかさずレオが跳び込む。
下っ端がポケモンを出すよりも早くルクシオは弾ける電撃を周囲へと放ち、下っ端をまとめて感電させ、地に伏せさせる。
「……ケッ、ジムリーダーかと思えば、ガキが二人か。つまんねえな」
その様子を見て、奥にいる碧天将ことセドニーは呟き、立ち上がる。
胸にN・E団の紋章が入った青い服を着、迷彩柄のコートを羽織っているが、背が高く、スタイルもいい。
N・E団でさえなければ、間違いなくモデルくらいはなれるだろう男だ。
そして、奥にソライト博士とは別の影が。
その影は人間ではなく、ポケモンだった。
人間の女性を思わせる姿をした、白と黄緑を基調とした色のポケモン。
サーナイトという、エスパータイプのポケモンだ。
「あれはお前のポケモンか?」
レオの言葉に、セドニーは頷く。
セドニーの後ろには、後ろ手に縛られたような感じで座らされている、ソライト博士がいた。
「本当はジムリーダーを直接叩き、この町の権力者を倒すことで町の征服に利用しようとしたのだがな」
淡々とセドニーは語る。
「残念だったな。僕たち二人が来たせいで、お前の作戦は失敗みたいだな」
「大人しく観念するべ。そこの博士さ解放すれば、見逃してやらンこともねェべ」
レオとカンタロウは強気な姿勢で出るが、セドニーの表情は変わらない。
「構わねえ。二対一のダブルバトルといこうじゃねえか」
セドニーは二つのボールを取り出し、不敵に笑う。
「あくまで衝突は避けられないか……いいじゃねえか。カンタロウ、やるぞ!」
レオもボールを取り出す。
この時、レオはカンタロウの返事、および彼の動きが無いことに気づいていなかった。