二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第三十話 『ブロック』 ( No.80 )
- 日時: 2013/08/15 13:53
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: Q1X0ZXes)
犯罪団体壊滅組織、『ブロック』。
ホクリク地方の中では規模の大きな組織で、全ての町に支部がある訳ではないものの、支部の無い町の隣の町には必ず支部が作られている。
ちなみに一番大きいのは、このアカノハ支部だ。
レオはリョーマに連れられ、カンタロウと共にアカノハ支部の建物へ来ていた。
「ま、座れよ」
レオとカンタロウは応接室へ案内され、二人はソファへと座る。
リョーマも向かいの椅子へと足を組みながら座り、その横にはテレジアが秘書のように控えて立っている。
「俺達『ブロック』は、さっきも言ったけど犯罪集団を叩き潰すために作られた組織だ。警察とはまた違った組織の類で、あくまで犯罪組織を壊滅させるための組織」
「ですから、私たち『ブロック』が出来ることは、犯罪組織の壊滅だけなのです。その構成員の逮捕などの権限は、与えられていないのですわ」
「そ。つっても、取り押さえて拘束することは出来るわけだし、逮捕の権限なんてあっても無くても変わんねえんだけどな」
軽い口調でリョーマは説明する。その軽い態度があまり好きではないのか、テレジアは後ろからジロリとリョーマを見据える。
(この子も子供なのに子供っぽさがないよなあ……)
ウチセトのジムリーダーにも子供っぽさの無い子供がいたなあ、とレオは思い出す。
「リョーマ様。そろそろ、N・E団の説明を——」
「あ? ああ。もうちょっと待ってくれ」
テレジアの言葉を遮り、リョーマは言葉を続ける。
「現在、『ブロック』総統率は二代目。副統率の俺も二代目。もともとは俺が副統率とアカノハ支部をやってたんだけど、流石に辛くてな。そんな時にそこのテレジアがやってきた」
「私は諸事情あって、いろいろと裏社会については知識がありますから、その知識を買われて、このアカノハ支部の統括補佐の地位をいただいたのです」
「俺は副統率としての仕事を優先してるから、実質のアカノハ統括はテレジアなんだけどな」
さて、とリョーマは話題を切り替え、
「それじゃあN・E団についての話をしようか。これ以上無駄話してるとテレジアに怒られちまう」
「いちいちそんなことを言わないでください」
テレジアの言葉を無視し、リョーマはレオとカンタロウに質問する。
「まずは事情聴取といこうか。君たちは、N・E団についてどこまで知ってる?」
「僕は七天将のうち三人を知ってます。さっきの二人と、あとはデンエイ炭鉱で緋天のガーネットという女に会ったことがあります」
「オラはさっきの二人だけだ。N・E団なンつー組織さ知ったのも最近だしな」
たびたび思うが、カンタロウは誰に対してもタメ口で話している。
別に話し相手が不快そうではないから構わないのだが、それにしてもレオは気になってしまう。
「へえ、緋天将に会ってんのか。直接的な対戦は?」
「いえ、してません。ユカリさんとママルさんも一緒にいたので、あいつ逃げていきました」
「緋天将は、序列も上位にいたはずだ。えっと——」
「三位です」
後ろにいるテレジアが代わりに説明する。
レオの表情が僅かに引きつった。
もしあの時ユカリとママルがおらず、正面から戦っていたら、ボッコボコにされていたに違いない。
しかもあの性格のガーネットが、負けた相手を放っておくとも思えない。
「N・E団七天将は、現在七人のうち六人判明している。だけど、あと一人の情報及びボスの情報がまったく無いんだ」
「N・Eの意味も分かっておりませんしね」
「そう。加えて、組織の目的がまったく掴めない。ある意味最も厄介な類の連中だよ」
どうやらN・E団は、結構謎だらけの組織のようだ。
イビルの奴らは、レオが初めて七将軍と会ったときに重要な単語を口にしていたのをレオは思い出す。
「と、N・E団についてはこんな感じだ。ここからが本題」
そして、リョーマは二人の顔を見つめて、言う。
「君たち二人を、『ブロック』にスカウトしたいんだが。どうだ?」
「ええ!?」
思わずレオはソファから身を乗り出していた。
「はは、そんなに驚くなよ。君の親父さんは、ぜひ入れてくれって言ってたぜ」
「親父さん……僕の父さんを知ってるんですか?」
「ああ。ライオ博士だろう? ホクリクじゃ有名な博士だぜ。その博士が言ってたんだ。息子はN・E団に確実に関わるはずだ、正義感の強い息子を止めても聞かないだろうから、『ブロック』に入団させて、力になってくれないか、ってな」
父親が有名な博士だということを、レオは知らなかった。
「入団するっつっても、いろいろ縛りがつくわけじゃない。どこか指定の場所にいないといけないわけじゃない、自由に旅を続けてくれてオーケーだ。ただN・E団のような組織の行いを許さない、っつー考えを改めて持ち、壊滅に協力してくれればいいだけさ」
「え、でも……」
「オラは入るべ」
レオが迷っている横で、カンタロウは親指を突き立て、ニヤリと笑う。
「オラはN・E団みてェな、人に迷惑さかける組織が大っ嫌いなンだッぺ。縛りとかねェなら、是非入らせてくれ」
「お、言うねえ。よし、じゃ決定だ。副統率の俺の権限で、カンタロウ、君を『ブロック』に入団させてあげよう」
リョーマは笑みを浮かべ、胸につけているものと同じバッジをカンタロウに渡す。
「さあ。レオ、君はどうする? 年齢で悩んでいるのなら心配はないぞ。何しろそこのテレジアはまだ九歳だからな」
「人を指さした挙句、個人情報をばらまかないでください」
レオは真剣に考えていた。N・E団壊滅、自身の不安、父の思い……。
それらすべてを考え、レオは結論を出す。
「僕も、入団します」
強い意志を持って、レオはそう言った。
リョーマはニヤリと笑い、
「その返事を待ってた。よし、決まりだ。『ブロック』の証のバッジを渡そう」
レオに、同じバッジを渡す。
「そのバッジは好きなところに付けてくれて構わないぜ。別に胸のところに付けろという強制は無い。あと」
リョーマがテレジアに合図を送ると、テレジアは頷き、紙袋を持ってきた。
「お土産だ。アカノハ名物の金のハチミツ。木に塗っておくとポケモンが寄ってくる、運が良ければ珍しいポケモンに会えるし、普通に食べても美味いぜ」
リョーマは二人に、瓶に入ったその金のハチミツなるものを渡し、
「それじゃ、俺達からの話は以上だ。なんか聞きたいことや言いたいことはあるか?」
二人へと質問する。
「いいえ、ありません。ありがとうございました」
レオの言葉と共に、カンタロウも首を横に振る。
「そうか。じゃあ、『ブロック』の名に懸けて、頑張ってくれな」
「はい!」
そして、リョーマとテレジアに別れを告げ、レオたち二人は『ブロック』アカノハ支部の建物を後にする。
「カンタロウは、この後どっちに行くんだ?」
「オラは先にデンエイシティ方面さ行くべ。お前は?」
「僕はデンエイジムは突破したから、あっち、えっと——コウホクシティだな」
「そォか。そげなら、ここで一旦別れンだなや」
「そうみたいだな。カンタロウ、頑張れよ」
「互いにな」
そしてカンタロウは、レオへと手を振り、デンエイシティへ向けて歩いて行った。
レオも、次の町、コウホクシティを目指し、歩き出す。