二次創作小説(紙ほか)

Re: 第三十四話 制圧 ( No.84 )
日時: 2013/08/15 13:56
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: Q1X0ZXes)

アカノハでレオは一晩過ごし、次の日を迎える。
十時頃には、既にレオはコウホクに向かって歩き出していた。
この時間に出発すれば、昼ちょいにはコウホクに着くからだ。
丁度正午ごろに、レオはアカノハとコウホクの中腹に差し掛かる。
既に破天のメジストはそこにはいなかった。人影は全く見当たらない。
「よし、行くぞ。おそらく、コウホクでは何か起こってるぞ」
気を引き締め、レオは歩き続ける。唐突に、ライブキャスターが鳴る。
「レオか。今どのあたりだ?」
相手はリョーマだ。
「ちょうど中腹あたりまで来ました。人影は全く見えません」
「そうか。すまないが、緊急の仕事が入っちまった。そっちに行くのは、少々遅くなる」
「分かりました。任せてください。仮に危険な事態に陥ったらさっさと引き返します」
「そのほうがいいな。決して無理はするなよ」
最後にもう一度、すまねえ、とリョーマは言い、通話は切れる。
再び、レオはコウホクシティ目指して突き進む。


コウホクシティ。
アカノハと大きさは同じくらいだが、かなり賑やかな町だ。
商店街はいつでも賑わい、ビルが立ち並んでいる。
そして、町の中央にはジムとポケモンセンターが並んでいる。
平日や休日を問わず、いつでも町はたくさんの人でにぎわっているらしい。
しかし。
現在、コウホクシティには人がまったく見えない。
「どうなってやがんだ……? 何が起こってる?」
コウホクシティに入り、レオが呟いたその瞬間。
「誰だお前は!」
「まだ逃亡者がいたのか!」
怒声と共に、家の物陰から五人ほどのN・E団の下っ端が跳び出してきた。
「……ッ! 出て来い、ポッチャマ、トゲチック!」
素早くレオはポッチャマとトゲチックを出し、戦闘態勢に入る。
「ちっ、まだ抵抗するだけの力を残した奴がいたのかよ」
「コウホクの制圧は完了したと思ったんだがな」
下っ端はレオを見据えながら、会話をしているが、
「制圧……!? それ、どういう意味だよ……」
突然出て来た、制圧、という言葉を、レオは聞き逃すわけにはいかなかった。
「ああ? 特に深い意味もねえよ」
「単純に、この町を制圧したってことだよ。殆どの住民をひっ捕らえたぜ」
「つっても、厳密には完全に制圧しきれてねんだがな。ジムリーダーを中心とする実力者気取りの数名が、ポケモンセンターに立てこもってやがる」
「そ。まあそれでも、メジスト様が到着すれば俺達の勝ち。制圧完了も時間の問題だ」
本当によくしゃべる奴らだ、とレオは思った。レオが知りたい情報を、ほとんど教えてくれた。
「そうかよ。それさえ知れば十分だ! 出て来い、ルクシオ、ヘラクロス!」
さらにレオはルクシオとヘラクロスを繰り出し、
「ポッチャマ、水の波動! トゲチック、神通力! ルクシオ、メガショック! ヘラクロス、瓦割り!」
慌てて下っ端五人衆がポケモンを出そうとするが、それより早くレオのポケモンたちが動く。
五人の下っ端のうち、一人は水流に吹っ飛ばされ、一人は念力によって地面へと叩きつけられ、一人は痺れてその場に崩れ落ち、一人は強烈な打撃で吹っ飛ばされる。
「やるか?」
レオは残り一人の下っ端を睨み付ける。
「ぐっ……」
残された下っ端は表情を引きつらせ、後ずさりする。
しかし、その時。

「何をしていたのかと思えば、子供一人に苦戦していたのか」

下っ端の後ろから聞こえた、低音ボイスの男の声。
「!?」
「誰だ!」
下っ端とレオは同時にそちらを向く。
そこにいたのは、黄色に染めた髪を無造作に跳ねさせ、橙色の軍服を着た、非常に体躯のいい、長身の男。背中には赤いマント。
「お前は、元からここにいた者ではないな。お前のことは知っているぞ。確か、レオと言ったか」
「何で僕の名前を知っている」
「ソライトから聞いた。N・E団の者は全てお前の顔と名は把握している」
「で、お前は誰だって言ってんだ」
「我が名は輝天のトパズ。N・E団七天将、第四位である」
その男は、すぐに自分の名前と序列を名乗った。
「抵抗は無意味だ。我は闘いにおいては天将第四位。しかし、戦いにおいては、N・E団一位だ。ここを切り抜けようと、すぐに我が軍がお前を捕らえる。我はN・E団に入団する前は、軍隊の指揮官を務めていた。戦場では、軍神と恐れられた。もう一度繰り返す、抵抗は無意味だ」
感情のこもらない声で、輝天のトパズは告げる。
「そうかよ。だったら、この場で司令塔のお前を直接ぶっ倒して、強引に突破してやる」
強気に出るレオだが、トパズはびくともしない。
「ほう、このトパズにバトルを挑むか」
「軍神だか輝天将だか、そんなの知らねえよ。とりあえず序列四位ってことが分かれば十分だ。てっとり早く一対一だ!」
「いいだろう。この軍神トパズが相手になってやろう!」
その言葉を引き金に、トパズとレオは同時にボールを取り出す。
「頼んだ、ポッチャマ!」
「占領せよ、チリーン!」
レオのポケモンはエースのポッチャマ。
対するトパズのポケモンは、白を基調とし、体のところどころに赤い模様のある、風鈴のようなポケモン。
風鈴ポケモンのチリーン、エスパータイプ。
軍神の名を持つトパズには、とても似合っていない気がする。
「さあ、お前のその力を我に見せてみよ!」
「上等じゃねえか。行くぞ!」
双方の怒声と共に、バトルが開始される。