二次創作小説(紙ほか)

Re: 第三十五話 粗雑 ( No.87 )
日時: 2013/08/15 13:56
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: Q1X0ZXes)

「ポッチャマ、アクアジェット!」
まずはポッチャマが動く。
体に水を纏い、一直線にチリーンへと突っ込んでいく。
「チリーン、ハイパーボイス!」
対してチリーンは大音量の声を発して衝撃波を放ち、逆にポッチャマを吹き飛ばしてしまう。
カンタロウのペラップも使っていた技だが、威力はこちらの方が高い。というより、発声の仕方そのものが違っていた気がする。
「チリーンは空洞の体を利用し、音を反響させる。その音は、麗しき音色にも敵を吹き飛ばす音波にも自由自在に作り替えられる」
やはりレオの推測通り、音の出し方が違うらしい。
「それでは次だ! チリーン、シャドーボール!」
チリーンは短冊状の下半身を振るい、影の弾を二発発射する。
「それなら! ポッチャマ、ドリル嘴!」
ポッチャマは嘴を伸ばし、ドリルのように回転しながら突撃する。
回転によって影の弾は弾かれ、シャドーボールは逆にチリーンを捕らえる。
さらに体勢を立て直す隙を与えず、ドリルのような嘴の一撃がチリーンに命中する。
「チリーン、サイコバーン!」
チリーンは何とか体勢を立て直すと、溜め込んだ念動力を爆発させ、周囲に衝撃波を放つ。
しかしチリーンが体勢を整えている間に、ポッチャマは後ろへと下がっており、衝撃波は当たらない。
「冷凍ビーム!」
衝撃波が切れた瞬間を狙って、ポッチャマは冷気を込めた光線を発射する。
しかし。

「チリーン、神秘の守り!」

チリーンの体が、薄い光を放つベールに包まれる。
次の瞬間、冷気の光線がチリーンに直撃した。
しかしそこまで。チリーンの体は凍りつかないどころか、氷が付着することすらない。
「!?」
「チリーン、ハイパーボイス!」
トパズは驚くレオには目もくれない。
チリーンは大音量の声を上げて衝撃波を起こし、ポッチャマを吹っ飛ばす。
「何だったんだ……?」
「よそ見をしている暇はないぞ! チリーン、シャドーボール!」
さらにチリーンは下半身を振り、影の弾を飛ばす。
トパズが今の技が何だったのか教えてくれなさそうなので、レオはポッチャマに回避を指示、さらに素早くポケモン図鑑を取り出す。
「神秘の守り……状態異常を防ぐ、か!」
つまり、冷気の光線を受けたチリーンから、ベールが氷状態から身を守り、冷凍ビームを防いだように見えた、ということだ。
「ってことは、一応ダメージは通っていないことはないってことだな」
とは言え、普通にあてた時と比べればダメージは少なそうだ。
「しかし、それが気づかれたところで大した損害にはならぬがな。チリーン、サイコバーン!」
チリーンは溜め込んだ念動力を爆発させ、衝撃波を起こす。
「ポッチャマ、躱して水の波動!」
ポッチャマは跳び上がって衝撃波を躱すと、水を凝縮した球状の波動を発射し、チリーンを吹っ飛ばす。
「チリーン、立て直せ。シャドーボールだ!」
チリーンもまだ倒れない。体勢を立て直すと、下半身を振って影の弾を発射する。
「それは効かねえぜ! ポッチャマ、ドリル嘴!」
ポッチャマは嘴を伸ばして、ドリルのように回転しながら突貫する。
シャドーボールを別の方向へと弾き返し、ドリルのような嘴がチリーンへと襲い掛かる。
「ハイパーボイス!」
激突の直前で、チリーンは大音量の声を発して衝撃波を起こす。
回転の勢いもあり、ポッチャマは吹っ飛ばされることは無いが、勢いは止められる。
「アクアジェット!」
しかしその後の動きはポッチャマの方が速い。
すぐさま水を纏い、ポッチャマは再び突撃、今度こそチリーンを吹っ飛ばす。
「やってくれるな! チリーン、サイコバーン!」
チリーンは体内に念動力を溜め込み、一気に爆発させて衝撃波を巻き起こす。
「ポッチャマ、躱して水の波動!」
「させぬぞ! チリーン、シャドーボール!」
ポッチャマは跳び上がって衝撃波を躱し、水の波動を放とうとするが、そこにチリーンは影の弾を放ち、ポッチャマを吹っ飛ばす。
「まだだ! ポッチャマ、冷凍ビーム!」
「無駄だ! チリーン、神秘の守り!」
空中からポッチャマは冷気の光線を発射するが、チリーンの体は再び光を放つベールに覆われ、氷を防いでしまう。
しかし。
「貰った! ポッチャマ、ドリル嘴!」
チリーンの真上から、ポッチャマは嘴を伸ばし、ドリルのように回転しながら急降下する。
落下の勢いも追加された嘴の一撃を喰らい、チリーンは大きく吹っ飛ばされる。
「とどめだ! ポッチャマ、水の波動!」
ポッチャマは水の力を波動上に凝縮し、チリーン目掛けて撃ち出す。
体勢を崩していたチリーンに命中し、チリーンは再び宙を舞い、地面にドサリと落ちる。
戦闘不能となって、目を回していた。
「こんなところか。チリーン、休んでいろ。お前は責務を果たした」
チリーンを労い、トパズはチリーンをボールへと戻し、レオの方へと向き直る。
「少しはやるようであるな。今から三十分の間、下っ端にお前を襲うことの休止命令を出す。その間にポケモンセンターへ行くがいい。ジムリーダーを始めとした残存戦力が残っているはずだ」
「なぜお前たちはそこを攻めない?」
「攻める必要が無いからだ。ポケモンセンター以外は全てこちらの手中にある。しばらくすれば食料が尽き、向こうから降参するからだ。無駄な勝負で無駄にこちらの戦力を削ぐ必要はない」
そして、トパズは別のモンスターボールを取り出す。
「出でよ、ガルラーダ」
中から出て来たのは、背中に卵の殻を残した、オレンジ色の、ガルダという神鳥に似たポケモン。
ガルラーダ、ガルダポケモン。飛行タイプのみという、珍しいタイプだ。
トパズはもうレオには目もくれず、ガルラーダに掴まり、飛び去って行った。
下っ端もいつの間にかいなくなっていた。
「……ちっ」
レオはポッチャマを戻し、僅かに舌打ちする。
ある程度余裕でバトルに勝ったが、レオには満足感が無かった。手ごたえを意図的に外された感覚が残っている。
「……小手調べかよ」
思えば、トパズはチリーンに一回も回避行動を指示しなかった。
輝天のトパズは、レオの力を測るために、わざと手加減していたのだ。
もう一度レオは小さく舌打ちすると、トパズの助言通り、ポケモンセンターに向かう。