二次創作小説(紙ほか)

Re: 第三十七話 応援 ( No.89 )
日時: 2013/08/15 13:59
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: Q1X0ZXes)

「よう。大変なことになってんなあ、コウホクシティ」
軽い口調で入ってきた、その男は、男としてはやや長めの黒髪に、青い瞳の青年。
「リョーマさん!」
『ブロック』副統率にして、アカノハ支部統括、リョーマだった。
「ヒーローは遅れてやって来るって言うだろ?」
ニヤリと笑ってリョーマは言い、カラタチの方に向き直る。
「コウホクのジムリーダー、カラタチさんですね? 自分は『ブロック』副統率兼アカノハ支部統括、リョーマです。N・E撃退の応援に参りました」
「それは助かる。見ての通り、現在コウホクはN・E団に占領されている。貴方たちの力が必要だ」
「そのことですが」
リョーマは扉の外を示し、
「俺と統括補佐で、町にいる下っ端どもは殲滅しました。今は統括補佐を中心とするうちの部隊が、奴らの拠点と見られる高層ビルを包囲しています」
「そうか。しかし、そのビルの中には捕らわれたこの町の住民がたくさんいる」
「そうですか。だとすると、あまり状況は変わっていませんね」
メジストのこともありますし、とリョーマは続ける。
「時間がありません。皆さん、いいですか。今から、俺の指示に従ってください」
リョーマの言葉に反論する者はいなかった。リョーマは『ブロック』の副統率だ。ある意味では、カラタチよりも頼りになるだろう。
「これ以上の増援を待つのは無駄でしょう。あまり時間をかけすぎると破天将が到着してしまう恐れがある。これから、奴らの拠点を叩き、この町を解放していきます」
何名かざわめく者がいたが、無視してリョーマは続ける。
「まず、カラタチさん。この中で——レオの力は俺も知ってますから、彼を除いて——、特に腕の立つ人は?」
「そうだな。そこの女の子二人と、あとうちのジムトレーナーに三人ほど強い者がいる」
カラタチは順にアスカとマゼンタを指し、そのあと、ジムトレーナーの中の三人を指す。
「そうですか。では、カラタチさん。レオと、そこの浴衣の子、あとはそこの三人組を連れて、奴らの拠点のビルへと向かってください」
「了解した」
「分かりました」
カラタチとレオは応じたが、マゼンタが疑問の声を上げる。
「そんな少人数でええの? 下っ端が町ん中の奴らで全部っては限らへんで?」
「大丈夫だ。狭いビルの中では、かえって少人数のほうがいい。こちらの動きは捕捉されづらくなるし、何より狭い空間では大人数で動きづらいからな」
リョーマが説明を入れると、マゼンタは納得したようだ。
「で、そこの赤髪ロングの子は、何かあった時のためにここに残って俺をサポートしてくれ。ポケモンセンターはこちらの本拠地だ。こっちを守る隊も必要だからな」
「分かりました。任せてください」
自信たっぷりにアスカは返答する。
「ことが決まれば早い方がいい。皆の者、行くぞ! 準備はいいな!」
「おおっ!」
カラタチの号令に合わせるように、皆の声が響き渡る。
コウホク争奪戦の幕が、切って落とされた。


カラタチを先頭にし、レオとマゼンタ、及びジムトレーナーの三人は、N・E団が本拠地とする、町で一番高いビルへとやってきた。
「アカノハ支部副統括、テレジアでございますわ」
カラタチ一行を確認した、ビルを包囲していた部隊の中心にいたテレジアがこちらへやってきた。
「奴らの動きは?」
「全く動きを見せておりませんわ。正直、この扉が異様に堅く、ここで手詰まりですの」
そう言って、テレジアはビルの自動ドアを軽く叩く。
しまったな、とカラタチが呟いた。
「セキュリティとして、このビルのドアは超強化ガラスで作られている。私の格闘ポケモンですら、このドアは壊せないんだ。まさか、このシステムが仇になるとはな」
悔しそうにカラタチが呟く。とりあえずレオも試してみることにした。
「ヘラクロス、出て来てくれ。このドアに瓦割りだ」
レオはヘラクロスを繰り出し、ヘラクロスは自慢の角を勢いよく、思い切りドアに叩きつける。
しかし、ガキィン! と音がし、ヘラクロスは逆に弾かれてしまう。
「……マジかよ」
「言った通りだろう? 暗証番号とかも作らず、ただ非常時にはロックされる、アナログ的な作りにしていたから、解析で開けることも通用しないしな」
しかし、そこで自慢げに進み出た者がいた。マゼンタである。
「なぁんや。そんなことやったら、うちにお任せやで」
マゼンタは得意げな笑みを浮かべると、モンスターボールを取り出す。
「ほな、私が開けたるさかい、よー見ときや? 行くで、ポコキング」
マゼンタが繰り出したのは、藁傘を被り、『酒』と書かれた瓢箪を持った、大きな狸のようなポケモン。
大狸ポケモンのポコキング、ノーマルタイプ。
「ポコキング、腹太鼓や」
すると、ポコキングはその場で腹を叩き出す。体力と引き換えに、ポコキングの攻撃力は最大まで上昇する。
しかし、
「おそらく無駄だぞ」
カラタチはそう言った。
「いくら攻撃を上昇させようと、このドアは破壊できないように作られている。それこそ、伝説のポケモンでもない限り——」
「へえ」
だがマゼンタの表情は変わらない。
「ジムリーダーさん、今何て言うた?」
「ん? だから、伝説のポケモンでもない限りは、このドアは割れない、そう言ったんだ」
「へえ。ほな、伝説のポケモンよりも高い攻撃力のポケモンをうちが持っとったら?」
「馬鹿な。そんなポケモン、いるはずないだろう」
「ところがどっこい、それがいるんやな」
そして、
「ポコキング、バトンタッチ」
次の瞬間、ポコキングはボールへと戻ってしまう。
「ほな、ラムパルド、次はあんたやで」
次にマゼンタが出したのは、岩のように硬い皮膚を持つ、恐竜のようなポケモン。特に頭の部分は、岩どころではなく、世界で一番硬いと言われるダイヤモンドよりも硬い頭蓋骨をもっていると言われる。
ラムパルド、頭突きポケモン。化石から蘇る古代ポケモンの一匹で、岩タイプだ。
「まさか」
カラタチの言葉が浮つく。しかしレオはこのポケモンを見たことが無いので、その理由がよく分からない。
分かるのは、腹太鼓の攻撃上昇がラムパルドに引き継がれた、ということだけだ。
そして、
「ほなラムパルド、諸刃の頭突きやで」
何気なくマゼンタは指示し、ラムパルドは額に赤い光を浮かべ、ドアに思い切り頭突きをぶちかます。

刹那、超強化ガラスで出来た自動ドアが、粉々に砕け散った。

「……!」
レオは唖然としていた。
強化ガラスは、跡形もなく、粉々になって吹き飛んでいた。
それだけで、今の一撃がどれほどのものだったかが分かるだろう。
「ほな、行こか。正直N・Eなんてけったいな連中なんか知らんけど、町の人らの為や。さっさと終わらせるでー」
そして何事もなくマゼンタはラムパルドを戻し、ビルへと入っていく。
「よ、よし! レオ、私たちも行くぞ!」
「もちろんです!」
カラタチとレオも、ビルの中へと突入していく。