二次創作小説(紙ほか)
- Re: サトミちゃんちの8男子〜幼馴染との再会〜 ( No.40 )
- 日時: 2014/01/19 23:11
- 名前: 美咲 (ID: VW2sEslj)
〜第六話「水晶玉に映る夢」〜
「ただいま〜。」
ドアを開けて、リビングへ行けば、思った通りみんなそろっていた。
「あっ、サトミさま、お帰りなさいませ!」
「サトミ! 待ってたぞ。」
「テメ、遅ぇんだよ! サトミ 。」
「サトミ、早く早く!」
シノはいつものセリフだけど、ソウスケ、ブンゴ、ミッチー三人そろって同じようなこと、言わないでよね。
あたしはみんなが座っているソファに駆け寄った。
「さて、みんな揃ったし…始めようか。」
ゴッホンとソウスケは声を整える。
・・・。
準備中、悪いけど、言いにくいけど、言おう。
「あのさ、じ、実は・・・思い出したんだよね、夢のこと。」
あたしの言葉にソウスケはピクッと反応した。
「じゃあ、あの夢は、本当に過去にあったことなのか!?」
「…うん。だから、その映像を見せる必要もないと思って。」
もともとみんなで、なんであんなリアルな夢を見たのかを話し合う予定だったけど、もう分かったわけだし。
「はぁ? わけ分かんねぇ話にここまで巻き込んどいて、なんでそうなんだよ!」
ブンゴ、キレたよ。
確かに迷惑かけちゃったかもだけど・・・。
「まあまあ、せっかく集まったし、見ようよ。シノっちも、もう紅茶入れちゃったみたいだし・・・・ね、シノっち!」
「はい!そうですね!」
ケノとシノ、相変わらず仲良いんだね。
…確かにいろんな紅茶の香りがする。
レモンティー、ミルクティー、ハーブティー…かな。
あたしはあまり紅茶について詳しくはないけど、それぞれの好みに合せて、シノが淹れてくれたんだろうな。
「……分かったよ。」
仕方なく…ていうか、紅茶の香りに負けてOKした。
「じゃ、そういうわけで。俺は今から、集中する。」
そう言うと、ソウスケは大きめの水晶玉を取り出した。
そして、目を閉じ、全神経を映像を出すことに集中させる。
・・・つまり、あたし達は静かにしとけということだろうね。
水晶玉はソファのすぐ前にあるテーブルの上。
その水晶玉に映像が映されるのか。
でも、本当にそんなことができるのかな…。
シン、と静まり返る中で、パッと水晶玉に何かが映し出された。
だけど、それは一瞬の間に砂の嵐へ変わり、何が何だか分からなくなった。
しばらくすると、またもとに戻って、今度はきれいに映像が流れ始めた。
ほっ、とみんなが一安心したところで初めに映されたのは、
雲一つない空の下の草原、そして風が木々の葉を揺らす音と共に聞こえてくる、楽しそうな子供の声……間違いない、これはあたしが夢で見たシーン。
「すごい…!」
思わず口に出しちゃった。
あたしだけじゃなく、他のみんなも驚いてる様子。
「すっげぇ! これ、声とか音も聞けるのか!」
ミッチーなんか、興奮状態…。
「おい、静かにするんだ。犬川君の集中力が切れてしまうじゃないか。」
それを落ち着かせたのは、ゲンパチ。
映像に驚いてはいたものの、やっぱり平静さは忘れないんだなぁ。
「なぁ、この女の子って…!」
そう言ってミッチーが水晶玉に向かって指を指した先には
・・・・・小さい頃の、あたし。
「あっ、小さいサトミさまですね!」
カシャ、カシャッカシャカシャ。
「ちょっとシノ、なに撮ってんの!」
いちいち水晶玉に向かってカメラ撮らなくていいよ!
なんか変だよ、変人!
しかも「小さいサトミさま」って、
まるで今のあたしは昔のあたしが大きくなっただけみたいな言い方、やめてよね。
「わぁ、ほんとだ! サトミちゃん、幼くて可愛い! だよね、ブンゴ先輩?」
じ〜っと水晶玉のあたしを眺めるケノ。
…なんか、恥ずかしいんだけど。
「…っは? べ、別に、んなことねぇだろ!」
ケノに急に聞かれたからか、ブンゴ少し声が裏返りそうになってる。
「すげぇ、サトミが小さいぞ!」
ミッチー、いちいち感心しなくていいよ。
「…で、こいつ誰?」
ブンゴの「こいつ」は多分、龍のこと。
「し、静かにするでござるよ! 小さいサトミどの、ボーイと何か話してるでござる。」
ダイカがそう言うのを聞いたみんなは、耳をすまして映像を見た。
この会話は、龍が引っ越すという別れ話だ。
———それから、映像はどんどん進み、夢が終わると同時に、映されていた映像は消え、ただの透き通った透明な水晶玉になった。
すると、ソウスケは集中して閉じていた目をゆっくり開き、立ち上がった。
「どうだ、俺の修行の成果は!」
そして、ドヤ顔。
「君にしては、見事だな。」
なんか微妙なほめ方だなぁ、ゲンパチ…。
それでもソウスケは喜んでるけど・・・。
ブンゴはフンッて顔してるけど、他のみんなもゲンパチと同じ気持ちらしく、うんうん、とうなずいている。
そんなみんなを見て、照れながらも、ソウスケは
「それに、あの夢のリアルさ分かったろ?」
本当に見て感じてほしかったことは、忘れない。
「あ、それっ、俺にも分かった! …何つーか、現実感ありまくりじゃね?」
なんかいいことでも言ったかのように、はしゃぎながら言ってるけど、
ミッチー、分かってるよ!
「そう感じるのも当然。だって、さっきも言ってたように、
夢のシーンが実際にサトミの過去にあったんだからな!」
あれ、なんだかソウスケ……不機嫌?…気のせい?
「だとすると、『必ずまた帰ってくる、お前のために』って、
いったいあいつはサトミの何なんだよ!」
って、ブンゴまで不機嫌!?
いつもと口調はあまり変わらないけど、なんか分かっちゃう…。
「そんなに怒鳴らなくても…。
…分かったよ、全部話すから!」
なんでそんなことを聞いてくるのか、よく分からないけど、とにかく話すことにした。
「あのね、________・・・。」
あたしが今日学校で思い出したこと、全て話した。
沈黙…。
「・・・サトミさまにそんな幼馴染がいたなんて…僕、か、感激です!」
シノ、今にも泣きそうなうるうるした目で・・・。
感激って…なんか失礼だよね。
あたしに幼馴染がいたことが珍しいとでも言いたいのかな。
「で、そのボーイも一緒にいたメモリーも、今まで忘れてたでござるか?」
あたしが話してる間ずっと一人ティータイムでくつろいでいたダイカがソーサーにティーカップを置いた。
カチャンとなる音が静かな部屋に妙に響いた。
中のハーブティーが軽く波立つ。
「……うん。」
あの時あんなに泣いてお別れしたのに、ひどいよね、ひどいとは思うけど…。
「…フフフ。サトミ! 落ち込むことはないぞ、そんな前のこと忘れてても、おかしくなんてないからな!」
ん?なんかソウスケ、機嫌よくなってる!?
でも、語頭で不気味な笑いが聞こえた気が・・・。
「う、うん。ありがとう?」
っと、無意識に見た時計の針が7:30を指していた。
「あ、もうこんな時間だ、夕食にしよ。シノ、簡単なのでいいからお願いね!」
いつの間にか外は真っ暗だった。
冬に近づけば、星もふえるんだろうなぁ。
「ハッ、はい! 分かりました。…僕としたことが、時間を忘れるなんて!」
シノは慌ててキッチンへ。
「あ、ぼくも手伝うよ!」
ケノもそれを手伝いに。
あたしはダイニングテーブルに移動した。
「おい、お前たち、話したいことがある。サトミが寝
たら、またここに集合な。」
——そんなソウスケの言葉は、あたしの耳に入ることはなかった。
〜第六話終〜