二次創作小説(紙ほか)
- Re: ハリーポッターと無名の生き残り ( No.1 )
- 日時: 2013/07/04 17:26
- 名前: プリア ◆P2rg3ouW6M (ID: PR3Fak4z)
第一章 賢者の石
第一話 生き残った女の子
1981年。真夜中近くのプリペット通りでのことだ。
街灯の消えた暗闇に沈む街の中で、三人の「おかしな人たち」が声を潜めて話し合っていた。三人とも、プリペット通りでは見かけないような格好をしている。
一人は背が高く、長い白髪と髭を持った、相当のお年寄りだった。長いローブの上に、地面を引きずるほどの紫色のマントを羽織り、半月形のメガネをかけている。そのメガネの奥では、淡い青の瞳がいたずらっぽく輝いていた。
——アルバス・ダンブルドアだ。
ダンブルドアは、毛布に包まれた赤ん坊を抱いている。
そして、そばにいる厳格そうな女性も、不思議な格好をしていた。四角いメガメをかけ、やはりマントを、それもエメラルド色のものを羽織っている。頭には、魔法使いのような黒いとんがり帽子をかぶっていた。
顔をくしゃくしゃにして目に涙を溜めている大男は、さらに不思議だった。背丈は普通の男の二倍、横幅は五倍もある上に、黒い髪と髭がもじゃもじゃと顔中を覆っている。手も、革ブーツを履いた足も、尋常ではないほど大きい。
そんな二人をさしおいて、ダンブルドアは庭の生垣をまたぎ、とあるマグルの家の玄関へと歩いていった。赤ん坊をそうっと戸口に置くと同時に、マントから手紙を取り出し、赤ん坊をくるんだ毛布に挟み込む。
「幸運を祈る——ハリー・ポッター……」
ダンブルドアが、しずかに、厳かにつぶやいた。
そうして、二人のところへ戻ってきたダンブルドアの瞳は、心なしか、沈んだ色をしている。
三人は しばらくの間その場にたたずんで、小さな毛布の包みを見つめていた。
「アルバス……あなたにまだ、ききたいことがあるのですが」
毛布の包みから目を逸らすと、女の人——マクゴナガル先生が口を開いた。これだけはきいておかなければ、と言わんばかりに、射るような眼差しをしている。
「なんじゃね?」
ダンブルドアも、赤ん坊から目を離し、マクゴナガル先生と目を合わせた。マクゴナガル先生の質問に予想がついているからなのか、どこか沈んだ口調だった。
「ハリーについての噂に比べたら、こちらはまったく知れ渡っていない話です。ヴォ……ヴォルデモートがポッター夫妻を殺しにゴドリックの谷へ向かった時、それを阻もうとした者がいると……チェ、チェリーが……殺された……と」
マクゴナガル先生の声は、震えていた。
「残念ながら本当じゃ……」
ダンブルドアのうなだれた様子に、マクゴナガル先生は顔を歪めてダンブルドアから目を逸らし、大男——ハグリッドははっとダンブルドアに目を向けた。
「そんな、ダンブルドア先生! チェリーまで? あのリリーの親友だった? そんな……そんな……」
「なんて惨い……」
マクゴナガル先生は緑のチェックのハンカチを取り出して、メガネの下の目にあてた。
遠い昔を見るような眼差しをして、ダンブルドアはマクゴナガル先生の肩に手をそえる。
「チェリーは実に優秀じゃった。リリーのよき友人で、変身術についてはずば抜けて優れておった」
「そんなこと、私が誰よりも知っていますよ!」
声を震わせて、マクゴナガル先生がぴしゃりと言う。
沈痛な声で、ダンブルドアがささやいた。
「そうとも。じゃから、ハリーも……チェリーの娘・ミーシャも、優れた魔法使いになるじゃろう」
その言葉をきいて、マクゴナガル先生は目からハンカチを話した。
ハグリッドは、まだぐすぐすと鼻を鳴らしている。
「それで、チェリーの子は今どこにいるのです? ……まさか、夫のシュウもろとも……」
「そんなことになったら、俺は、俺は……」
「これこれ、想像が行き過ぎているようじゃよ」
ダンブルドアの瞳に、いつもの輝きが戻ってきたようだった。
「シュウも残念ながら一緒に……のぅ。じゃが、ミーシャは生き残った。今は聖マンゴにおるよ。チェリーが殺されるその時まで、その背におったのじゃ」
「連れてきたんですか? まったく、チェリーはなんて無鉄砲なことをしたんでしょう。なぜ……」
「ヴォルデモートに出くわすとは思ってなかったんじゃろう」
すると、ようやくハグリッドがはっきりとした口調で言った。
「ダンブルドア先生、どうしてミーシャは聖マンゴなんかにおるんですか? 怪我でもしちまったんですか?」
「今は、他に連れて行くところがなかったのじゃよ。わしが預けた。大きな怪我は見られなかったようじゃが……そこのところはチェリーもしっかりしていたのじゃ」
「それはよかったでさあ。でも、奇妙じゃありませんですか?」
「なにがじゃ?」
「奴はチェリーとシュウは殺したのに、ミーシャは殺さなかった。そしてハリーも、奴に殺されずに生き残った。おかしくねえですか?」
「そうじゃのう。ミーシャも殺そうとしたはずじゃが、なぜ殺さなかったのかはわからぬ。これも想像するしかないのじゃよ」
ハグリッドとダンブルドアの会話に、マクゴナガル先生も怒ったように鼻を鳴らした。
「アルバス、私も奇妙だと思います。ハリーたちのように元々命を狙われていなかったとしても、自分を阻もうとした奴の子どもですよ? すぐそばに命があるのに殺さないなんて。今まで何人もの魔法使いや魔女を殺めてきたことか……」
「わしは物知り博士ではないのじゃよ、二人とも。落ち着くのじゃ」
ダンブルドアはレモン・キャンディーを取り出し、わりと落ち着いた様子で食べた。
「じゃが、一つ頼まれてもらえるかのぅ。早いところ、ミーシャを日本へ連れて行ってあげないといけないのじゃ」
そして、優しい眼差しでマクゴナガル先生を見た。
「私に頼まれてほしいと? ミーシャのことを?」
「そうなれば、こんなに幸いなことはない。君はチェリーと親しかったじゃろう? どうかな?」
「そんなら先生! また俺に行かせてくだせえ! チェリーとシュウの娘ときて、遠い日本に行っちまうときたら俺が……!」
マクゴナガル先生が答える前に、ハグリットが弾かれたように叫んだ。
「しかしハグリッド、君は日本に行ったことはなかったじゃろうが」
力なく、マクゴナガル先生がため息をついた。
「ええ、確かに私は留学生の入学手続きで何回か日本へ行ったことがあります。でもアルバス、なぜ遠い日本へ連れていくのですか? そりゃあ、シュウは日本出身ですが……チェリーはイギリス出身ですよ」
「シュウの側にしか親戚がいないのじゃよ。ハリーと同じ、マグルと暮らすことになるのじゃが……」
ダンブルドアの答えに納得がいかなそうな、不機嫌そうな顔でマクゴナガル先生は頷いた。
「……わかりました。後日、私がミーシャを連れて日本へ行きます」
ハグリッドが、またしてもぐずるように目に涙を溜めている。
「ハリーがマグルたちと暮らすってだけで我慢できねえのに、ミーシャときたら遠い日本へ、おまけにマグルとなんて! せめて、俺もマクゴナガル先生と一緒に、ミーシャを病院に迎えに行きますだ」
「時が来れば、二人とも帰ってくるのじゃよ」
静かにささやくと、ダンブルドアはハグリッドの肩に手を置いた。
〜つづく〜
☆オリキャラを主人公にするというのは、難しいですね……;
- Re: ハリーポッターと無名の生き残り ( No.2 )
- 日時: 2013/07/04 17:29
- 名前: プリア ◆P2rg3ouW6M (ID: PR3Fak4z)
翌朝。聖マンゴ魔法疾患傷害病院の受付で、ハグリッドとダンブルドアが、ミーシャを抱えて出てくるであろうマクゴナガル先生を待っていた。
受付にいる案内担当の案内魔女は、患者や見舞客の整理にあたっていて忙しそうだ。
「マクゴナガル先生は、まだなんでしょうかね」
待ちきれないと言わんばかりに、うずうずしてハグリッドが言った。
「そう急いでも急ぐだけ無駄じゃよ。レモン・キャンディーはいるかね?」
「ああ……もらいますだ。ありがとうございます」
ダンブルドアがレモン・キャンディーを取り出そうとした時、ようやくマクゴナガル先生が現れた。厳格そうな表情の中に、どこか疲れたような気配が漂っている。腕には、黄色い毛布の包みに包まれた赤ん坊を抱いていた。
「戦いの最中にもこの子はずっとチェリーと一緒だったためなのか、呪文のかすり傷があったようですが、それも日が経つにつれてすぐによくなるようです」
「それはよかったのぅ」
ダンブルドアとハグリッドは、毛布の包みの中を覗き込んだ。小さな女の子の赤ん坊が見えた。茶色がかった黒髪をしており、柔らかな頬をかすかに上下させてぐっすり眠っている。
「ハリーの場合は髪だけでジェームズそっくりだとわかっちまいましたが、ミーシャの場合はわかりませんですね。チェリーとシュウも黒髪だったですから」
ハグリッドが、これからの別れを考えてすでに涙ぐんでいる。
ダンブルドアはマントから手紙を取り出すと、マクゴナガル先生に渡した。
「わしからの手紙じゃ。ミーシャと一緒に置いておいてくれるかのぅ」
「また手紙なんですか? マグルが手紙で一切を理解するなんて、出来ないと思いますよ?」
「そのとおり。じゃが君もわかっておるじゃろう? 先生」
マクゴナガル先生は口を開きかけたが、思いなおして言葉を飲み込んだ。マグルたちを驚かせず用件を伝えるためには、これが一番いいのだとわかっている。それも、海外に住むマグルときたら、手紙で伝える方がもっとも理解してもらえるはずだ。
「……そうですね。おっしゃるとおりです。しかしダンブルドア先生、今回はどうやってミーシャを日本へ連れて行くのが賢明なんでしょう? 私一人の場合はいつも姿くらましで通用しますが、赤ん坊のこの子を姿あらわしに付き添わせるなんて、私には出来ませんよ」
毛布に包まれたミーシャを厳格な目つきでちらりと見やると、マクゴナガル先生はきっぱりと言った。
「フォークスを使うといいじゃろう。屋敷しもべ妖精と同じでな、フォークスは魔法使いと違った魔法が使えるのじゃ。フォークスの力で姿くらましすれば、負担も少ないじゃろう」
「ええ、ではお言葉に甘えて。帰りは私一人で戻りますから、フォークスは必要ないので、先にアルバスの元へ帰しますよ」
ダンブルドアが「何か用事でもあるのか?」と聞く前に、マクゴナガル先生はいらいらした口調で宣言した。
「ハリーの住む家のマグルがあんなに最低な連中だったのです。ミーシャが住む家のマグルたちも、私がこの目で見ておかないと気がすみません」
「そうでさあ、ダンブルドア先生! ダドリーのような奴らが、マグルにはうじゃうじゃいるかもしれねえです!」
マクゴナガル先生の言葉に、ハグリッドも鼻を鳴らして怒鳴った。あまりに声が大きかったので、受付にいる魔法使いたちがハグリッドをちらりと見やる。ハグリッドはバツが悪そうにコホンと咳をすると、「失礼」と呟いた。
「日本はいい国じゃよ。わしも行ったことはあまりないのじゃが、何よりも食べ物がうまいのじゃ」
穏やかにダンブルドアが言った。
「さて、そろそろおいとましようかのう。いつまでもここにいても仕方がなかろう」
ハグリッドは頷き、マクゴナガル先生は返事の変わりに不機嫌な顔で鼻をすすった。
そうして、ハグリッドとマクゴナガル先生が重い足取りで病院を出ようとしたところで、ダンブルドアが小さく呟いた。淡い色の瞳で、ミーシャを見つめながら。
「忘れてはいかんよ。世に知れ渡っていないとはいえ、ミーシャも生き残った子なのじゃ。——生き残った女の子なのじゃ」
その日の正午過ぎ。マクゴナガル先生はダンブルドアの部屋からフォークスの尾につかまって、その腕にいるミーシャもろとも姿くらましをした。時差のこともすべて考え済みだったので、日本へ姿あらわしした頃には、ちょうど真夜中だった。
マクゴナガル先生は庭の低い生垣をまたいで玄関へ向かった。そうして、ミーシャを包んだ毛布をそっと戸口へ置き、ダンブルドアから預かった手紙を毛布の中へ入れた。
空がよく澄み渡り、星がきらめいている。
ミーシャを置いた戸口からそっと離れると、マクゴナガル先生は目をしばたかせた。
「幸運を祈りますよ——ミーシャ・ライリー」
☆これで第一話は終わりになります^^
