二次創作小説(紙ほか)
- Re: ハリーポッターと無名の生き残り ( No.24 )
- 日時: 2013/03/23 13:30
- 名前: プリア ◆P2rg3ouW6M (ID: O19REGE0)
第三話 はじまりの手紙
夏休みになった。
ジリジリと暑い日ざしが大地を照りつけ、木々が鮮やかな緑色の葉を揺らしている。町のどこにいても、むせ返るような夏の匂いが漂っていた。蝉の鳴き声が、大地に染み渡るように響いている。
美沙は、学校のお気に入りスポット、図書室から夏休み用に借りてきた本を、ベッドの上に寝転んで読んでいた。学校の休み時間にはよく一人で図書室にいるが、家でも大抵美沙はゴロゴロと読書をして暇つぶしをしている。読むのはいつも、ファンタジーの世界の本だ。現実ではありえないファンタジーの世界に入り込むと、退屈な日々をその時だけ忘れられるような気がする。
夏休みの宿題は、いつも夏休みが終わる一週間前に片付けるので、まだ夏休みに入ったばかりの美沙はのんびりしていた。一週間前から慌ててやり始めるとはいえ、やることはきちんとやる。
「あっついー……」
窓を開けていても部屋の中は、冷え性の美沙でも体が汗ばんでくるほど暑かった。冷え性といっても、冬にやたら指先が冷たいだけで、夏は当たり前のように熱い。だから、よく理紗子に「変温動物」とバカにされた。小学生で変温動物なんて言葉を知っているのは、理紗子がやたら塾で色々と教え込まれているせいだ。
さすがに脱水症状の危険があるので、夏は飲み物を自由に自分の部屋に持っていっていいことになっているが、それでも暑いものは暑かった。
「美沙! 美沙!」
おばさんの低い不機嫌そうな声が、階段を上る音とともに聞こえてきた。
「やれやれ。私、また何かやらかしたかな……」
ぼそりと言いながら、美沙は本を読むのをやめた。おばさんが部屋に入ってくると、美沙はゆっくりとベッドから起き上がる。
「美沙、これからお客様が来るんだから、絶対に一階に降りてきて邪魔しないでちょうだいね。わかった?」
「はーい」
わざと面倒くさそうに返事をしてから、ふと思った。
部屋の中にずっといるよりかは、外へ出たほうが楽しいのでは、と。
「あ、ねえ。外を散歩してきてもいい?」
「お昼まで帰ってくるんじゃないわよ」
「やったー! はーい」
大声ではしゃいでから、慌ててしおらしく返事をした。
おばさんは顔をしかめながら、部屋から出て行く。
美沙は手の中で財布を転がしながら、町を歩いた。
おばさんたちのイギリスの友人……メアリーおばさんとマーチおじさんは、いつも美沙にほんの少しのお小遣いをくれる。そのお金で美沙はたびたび外へ出かけては、年頃の女の子が好きそうな小物道具やお菓子を買うのだ。
「この間お店で見かけた花柄の小物入れ、売り切れちゃったかなー。でも、かっぱえびせんも欲しいなー」
独り言を言いながら、「かーっぱえびせん!」と歌いつつ、店へと続く長い階段を上る。並木道になっているので、蝉の鳴き声がうるさいくらいに響き渡っている代わりに、木洩れ日が美しかった。
「美沙ー!」
ウゲッ。今までに何度も聞いた、自分を呼ぶ声。それも、何かをたくらんでいる時の、あの声。
後ろを振り返ると、階段の下に理紗子がいた。やけに慌てたような顔をして、こっちを凝視している。
「はっ、早く逃げなさいよ!」
「なんでー?」
「上からクモが落ちてきているのよ!」
「クク、クモ!? えええ!」
美沙はキーキー叫びながら大慌てで階段を駆け下りた。クモはこの世で一番嫌いだ!
息を荒らげて理紗子の隣に座り込んでから気づいた。またいつものウソだったのかもしれない。
いつまでたっても理紗子の嘘を見抜けない自分は、まぬけ中のまぬけだ。
「あー、真に受けて損した」
「なんでよ、人がせっかく教えてあげたのに。これだから美沙は!」
「どうせまたウソだったんでしょ?」
「失礼ね、今のはホントよ。ほら、あんたの足が遅いから、背中についてるじゃない」
ゾッとして美沙は立ち上がって叫んだ。じたばたする。
「ええええ! とって、とってよ、早く!」
「アハハハハ! こっちのはウソよん」
ムッとするどころか、美沙は安心して再び座り込んでしまった。
理紗子はまたしてもクスクス笑っている。
「ふふふふ。そういえばね、急にお客様が来れなくなったのよね。それで、パパがあんた宛に手紙が来ているって言ってて……」
「何? 手紙!?」
美沙は、ばっと立ち上がった。
胸が、ドキドキと高鳴っている。
人生生きてきて十一年。美沙は誰からも手紙をもらったことなどなかった。友達も親戚もいないのだから当たり前といったら当たり前だ。それなのに今、美沙宛の手紙が来ていると、理紗子が言ったのだ。
一体、誰からだろう。
誰か、自分の住所を知っている人がいるのだろうか。
考えるより、家へ帰ったほうが早いはず!
後先考えず、美沙は大急ぎで家まで帰った。
後ろから理紗子が追いかけてくる。
家へ帰ると、美沙は咳き込みながら聞いた。
「私宛の手紙が来てるって、ほんと!?」
「ああ、間違えだよ。宛名を書き間違えてたんだ。捨てたよ」
「はぁ?」
おじさんのそっけない返事に思わず声をあげてしまい、美沙は慌てて口を閉じた。
そしていつものように、大人しく自分の部屋へ戻る。
理紗子は、この瞬間が見たかったのだろうか。間違えの手紙を本物だと勘違いして喜び、がっかりする自分の姿を。
悔しくて、涙が滲んできた。
おじさんは美沙が二階へ上がった後、おばさんが台所から歩み寄り、恐る恐る口を開いた。
「あなた……あの手紙……やっぱり来たわね」
「あんな奴らには関わらないのが一番だ。……放っておこう」
それから二日後の朝。
美沙がいつものように朝ごはんの支度をしていると、玄関からカタカタという音がした。郵便が届いたのだ、と思い、美沙は慌ててみそ汁を温めていた火を消し、玄関へ向かった。
手紙はいつものようにおじさんの会社関係のものが多かったが、ふと、目に留まる手紙があった。
「なんだろう、この古臭い手紙」
手紙は、分厚い黄色みがかった羊皮紙の封筒に入っていた。宛名はエメラルド色のインクで、しかも英語で書かれている。切手は貼っていない。
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花鶴県 花咲市
連掛町三番地 物置部屋
ミーシャ・ライリー様
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「え?」
胸騒ぎを抑えつつ封筒を裏返してみると、紋章入りの紫色の蝋で封印がしてあった。中心に大きく「H」と書かれ、その周囲をライオン、鷲、穴熊、ヘビが取り囲んでいる。
その一通だけならまだしも、それと同じ手紙があと二通、合計で同じ手紙が三通も届いていた。
なぜ、差出人は、自分のイギリス名を知っているのだろうか。
イギリス名を知っているのは、自分と、おばさんたち、そしておじさんのイギリス人の友人だけだ。もしかしたら、イギリスの友人たちが美沙宛に手紙を書いたのかもしれないが、遊びに来ればすぐに直接会えるというのに、わざわざ手紙をよこすはずがない。
「ご丁寧に物置部屋なんて書いてあるし……」
封筒の裏側の不思議な紋章に目が止まった。
やけに興味をそそられる。
一体、どこからの手紙なのだろう?
英語なのだから、海外であることは間違いないだろうが……。
……押売りか何か?
〜つづく〜
☆私は、ファンレターとして海外へ手紙を送ったことがありますが、
いきなり海外の知らない人から手紙が届くって、どんな気持ちなんでしょうか〜;
