二次創作小説(紙ほか)

Re: ハリー・ポッターと無名の生き残り ( No.27 )
日時: 2013/03/25 09:44
名前: プリア ◆P2rg3ouW6M (ID: 220Hj9Rg)

「あー! パパ、パパ! 美沙が手紙を持ってるわよ!」

 理紗子がわざとらしく大声をあげた。
 ギクリと心臓が跳ね上がって、美沙はごまかすように苦笑いをしてみせたが、すぐにおじさんに手紙をひったくられた。

「ちょっと、返してよ。それ、私宛に来たものなんだから!」
「本当に美沙なんかに手紙が来るわけ? 私宛の間違えじゃないの?」
「二人とも静かにしろ!」

 おじさんがいらだったように一喝すると、おばさんがすかさず美沙と理紗子をリビングから追い出してしまった。ぴしゃりとドアを閉められてしまったが、美沙は理紗子とともに、ドアに張り付いて聞き耳をたてる。

「ああ、またこの手紙だ! 今度は三通も!」
「あなた、どうするつもりなの?」
「郵便局へ行く。嫌がらせの手紙だから、届けずに処分するように言う!」

 裏返ったおじさんの声とともに、ビリビリと紙が破れる音が響く。
 まさか手紙を! と、すかさず美沙はリビングへ飛び込んだ。

「またこの手紙ってことは、前に言ってた知らない人からの手紙っていうのも、私のだったんでしょ!」
「今回も間違えだったんだよ」

 おじさんのよそよそしい言葉にひるむこともせず、美沙は引き下がらなかった。

「間違えなんかじゃない! だって私のイギリス名が書いてあった!」
「黙れ! これ以上何か言うと、お前を家に置いておけないぞ」

 怒鳴り返されて、美沙はようやく口をつぐんだ。

 悔しかったが、おじさんたちをこれ以上怒らせるようなことをすれば、本当に家から追い出されてしまう。おじさんたちは、やるといったらとことんやる人だ。美沙もそれはよく知っていたので、今は引くしかなかった。

「ああ、待て、美沙」

 ぞくっとして美沙はおじさんの顔を見た。明らかに無理をして作り笑いを浮かべている。口の端が不自然に曲がっているので、美沙は思わず笑いそうになった。

「美沙、お前の部屋をもうちょっと綺麗にしよう……今は物置みたいに狭く、汚い部屋だから……」

 確かに、小物を飾るスペースすらないような部屋だ。ごもっとも、と美沙は心の中で頷く。

 手紙の差出人に、美沙にろくな生活をさせてないことを悟られたのが、おじさんにとって気に障ったのだろう。住所に「物置部屋」と書かれては、人面の良いおじさんとしても、何もせずには言われなかったに違いない。

 しかし、ここで何かと文句をつけてくる人物がいるので、美沙はいつも不遇なのだ。せっかくおじさんたちの機嫌がいい時にも、理紗子が文句をつけてくるおかげで、おじさんたちの「いい機嫌」は理紗子の方へ流れる。

「なんで美沙の部屋をわざわざ綺麗にしてあげなくちゃいけないわけ? 私、絶対に嫌よ!」
「リサちゃん、あとでおいしい食べ物を買ってあげるから」
「いやよ! 絶対にいや!」

 そうして理紗子はここ三日間の間、暇さえあればそのことでわめき続けた。


 

 翌日、美沙がリビングで理紗子がやっているテレビゲーム画面を眺めていると、おばさんが郵便局から帰ってきた。ひどく不機嫌そうな顔だ。

「あなた! あの手紙、郵便局から配達されてきたものじゃないみたいだわ!」
「どういうことだ?」

 聞いていないふりをしつつ、美沙はこっそりと聞き耳をたてる。

「だから、うち宛の手紙の中に、ここ最近海外から来たものはないって言うのよ! 頭のおかしい郵便局だわ」

 おばさんが罵っている途中で、理紗子のプレイ中のテレビ画面がピコーンと鳴った。

「やった! フォイベロスを倒したわ!」
「リサちゃん、静かにしてちょうだい」

 不機嫌な時のおばさんは、理紗子にも容赦ない。
 ざまあみろー、と美沙は理紗子に念を送った。

 しかし、郵便局から送られてきていないとすると、あの手紙はどこから来ているのだろう。誰かが直接、美沙の家のポストに手紙を届けているのだろうか……。もし、本当にたちの悪い押売りなのだとしたら……。
 



 おばさんに部屋を片付けられ物置のような部屋ではなくなったものの、美沙はいつものようにベッドの上に膝を抱いて丸くなっていた。

 学校にいる時も、家にいる時も、あの手紙のことが頭から離れない。緑色の宛名、妙に古臭い封……日本でまずやりとりされないような手紙だというのに、中身も見ないまま、破られてしまったなんて。

 ぼんやりとしていると、一階から理紗子の甲高い声が飛んできた。

「パパー! また来たわよ! 連掛町三番地、一番小さい部屋……ミーシャ・ライリー様……! しかも五通も!」

 美沙はバッとベッドの上で立ち上がって床に飛び降り、ドタドタと階段を駆け下りた。

「私の手紙ー!」
「黙れ!」

 美沙が駆けつけたときにはすでに遅く、おじさんが五通とも手紙をぐしゃぐしゃに鷲づかみにしてしまっていた。

「美沙も理紗子も! 二階の! 自分の部屋へ行け!」

 おじさんはやっとのことで怒鳴ると、空気が抜けたようにヘナヘナと床に座り込んでしまった。

 美沙はがっくりと肩を落として自分の部屋へ戻った。ベッドにうつ伏せにバフンと倒れこむと、どうすればおじさんに奪われずに手紙を受け取れるか考える。

 ……もう黙って見ていられない。
 押売りでも何でもいい。中身を見ないことには始まらない。

 明日の朝、早起きをして玄関で待っていよう。

 まだ小学生で、一番早くても今までで七時にしか起きたことがない。七時は七時でも、朝に弱い美沙は大抵おばさんにたたき起こされる。だが今回は、大切な手紙がかかっている。そう思うと、やれる気がした。

〜つづく〜

☆ふくろう便での配達なので、郵便局が関係ないのは当然ですね;

ホグワーツのあの手紙は、普通の手紙じゃまずありえないような、
本当に魔法の世界らしい雰囲気の手紙ですよね^^


ところで、小説図書館の紹介文に、この小説の紹介を載せました。