二次創作小説(紙ほか)
- Re: ハリー・ポッターと無名の生き残り ( No.28 )
- 日時: 2013/03/25 09:51
- 名前: プリア ◆P2rg3ouW6M (ID: 220Hj9Rg)
翌朝、美沙は目覚ましの音とともに無理やりに目を開けた。手紙がかかっているせいなのか、珍しく頭が冴えている。
さすが日本の夏だ。朝だというのに、すでにむっとした蒸し暑さが漂っている。
美沙は髪をとかすこともせず、パジャマ姿のままソロソロと部屋を抜け出した。玄関の前の廊下にしゃがみこみ、郵便が届くのをただひたすら待つ。おじさんたちが起きてこないか不安だったが、それよりも、わくわくした気持ちの方が大きかった。
玄関の外で車が通る音がするたびに、美沙の心臓が跳ね返った。
しかし、いつまで待っても郵便は届かない。もしかしたら、あまりに返事が来ないので、差出人が手紙を諦めたのかもしれない……。
そこまで考えて、ハッとした。リビングへ行き、カレンダーを見る。
「今日は日曜日だった!」
声をあげてから、がっくりと肩を落とした。思い付きを実践する前に、もっと大事なことを確かめておけばよかった。
なんて間抜けなんだろう。
「そう、今日は日曜日だ。郵便の配達がない!」
無駄に大きい声に振り向いてみれば、大あくびをしたおじさんが、二階から降りてきたところだった。どしっとソファに腰掛けると、テレビのリモコンを手にする。
「郵便局自体がなくなってしまえばいいものをなぁ」
おじさんの発言に、美沙は顔をしかめた。
自分宛に来た手紙は、郵便局からの手紙ではないとおばさんが言っていた。郵便局からの配達でないとすれば、日曜日だろうが何だろうが、手紙は届くはずなのに……。
「美沙。今日を機にもう二度と手紙を見ることがなければ、お前もあんな手紙のことなど忘れて……」
おじさんが言いかけたところで、「ギャアァァ!!」というおばさんの叫び声が響いた。
「あなた! ちょっと!」
「なんだ? またベランダに鳥の糞か?」
ダルそうにソファを立ち、おじさんが二階へと上がっていく。なんだか面白そうなので、美沙も後ろに続いた。
「あなた! これ、どういうことよ!」
おばさんは、おじさんとおばさんの共同部屋の中にいて、二階のベランダを指差してわめいている。
「なんだ?」
おじさんと一緒に、美沙もベランダを覗き込んだ。
「うーわぁ……なななな、何これ……!」
「なんだこれは! 悪質ないたずらか!?」
いったいどういうことなのか、ベランダいっぱいに手紙の山が広がっていた。観葉植物さえ手紙の山に埋もれ、天辺の緑色の部分しか見えないほどで、物干し竿の足元もほとんど埋もれてしまっている。
「どういうことなのよ! あなた!」
「わからん……」
おじさんたちのやりとりをよそに、美沙は「ん?」と手紙の山を覗き込んだ。
この手紙は……私宛に来た、あの外国からの不思議な手紙じゃないか!
「これ! 私の手紙!」
「よせ、美沙!」
美沙が手紙の山に潜ろうとしたとたん、おじさんがさっと美沙の手首を掴んだ。そうして、美沙を引っ張り、無理やり部屋の外へ追い出す。だんっと部屋の扉を閉め、おじさんは美沙を睨みつけた。
「どうして見せてくれないわけ!」
「ごちゃごちゃ言うな!」
美沙とおじさんがいがみあっていると、ドドドドド……と地響きがした。
「なんだ? 地震か?」
おじさんが辺りを見回した時、扉の向こうからおばさんの叫び声が響いた。
「どうした!?」
乱暴に扉を開けたとたん、おじさんの顔面に手紙が吹っ飛んできた。
美沙も横から部屋を覗き込む。ベランダにあった手紙が宙を舞い、こちらへ吹き飛んできているのが、はっきりと見えた。
「何がどうなっているの!?」
「一階へ避難だ……!」
美沙は、半ばおじさんとおばさんに押し出されるようにして一階のリビングへ戻る。
一息ついたところで、またしても地響きが鳴り響いた。
「ああ、今度はなんだ!!」
おじさんが怒鳴った次の瞬間、台所にある換気扇のプロペラがカーンッという金属音とともに吹っ飛んで外れ、そこから例の手紙が雪崩のように流れ込んできた。
「手紙! 私の手紙だ!」
なぜ換気扇から流れ込んできているのか、理由など考えもせず、美沙は飛び上がって喜んだ。なんとか飛びついて手紙を捕まえようとしたが、おじさんに手首をつかまれて身動きが出来ない。
「何事なわけ!?」
騒ぎを聞いてようやく起きてきた理紗子も、リビングに入ったとたん、「ギャー!!」と叫び声を上げた。
「手紙をとらせて!」
「行け! リビングから出ろ!」
「だって私の手紙……!」
「行けったら行け!」
おじさんに手首をつかまれ、美沙はリビングから放り出されてしまった。おばさんと理紗子も、お互いをかばい合いながらリビングから出てきた。おじさんもリビングから廊下へ出て、リビングのドアを乱暴に閉める。
手紙はまだあふれ出ているようで、壁や床に当たっては跳ね返る音が聞こえた。
おじさんは興奮した声で早口に言った。
「いいか、今すぐに花咲山にある別荘地へ移る!」
「な、何言ってんのよパパ! いつもログハウスには八月になってから行くじゃない」
理紗子の言葉にも、おじさんは耳を貸さなかった。
「口答えは無用! さっさと支度だ!」
おじさんの様子に、さきほどまでわめいていたおばさんも、心配そうにおじさんを見た。
「あなた、メアリーとマーチに連絡した方がいいんじゃないかしら。しばらくまた別荘地に移るって」
毎年夏休み、別荘地であるログハウスには八月に一週間だけ泊まる。一週間程度なので、ときどき家に遊びに来るイギリス人のメアリーおばさんとマーチおじさんに連絡はする必要はない。しかし、今回はどれほどの期間泊まるのかわからない。
メアリーおばさんとマーチおじさんに会うことができないと思うと、残念な気持ちで胸がいっぱいになった。
ログハウスは、花咲山のヒマワリ畑のすぐそばにあった。ログハウスの二階からあたりを見回すと、ヒマワリ畑がある部分だけ、緑の床の上に黄色い絨毯を敷いているかのように見える。
毎年八月のログハウスは澄んだ空気がおいしく、なによりも涼しいので美沙も大好きだったが、この時期はまだ少し肌寒い気がした。夜は、暖炉なしでは寒くて過ごせそうにない。
もちろん、別荘地に来ても美沙が雑用係であることに変わりはない。ログハウスの裏においてある薪を暖炉に運ぶのも、朝食のちょっとした準備をするのも美沙の仕事だ。それでも、山の濃い緑の大気は、連掛町にいるときよりも美沙の気持ちを軽くさせていた。
「ここなら手紙も来ることはない。ここを我が家にしてもいいくらいだな!」
おじさんは朝起きると、毎日のように言う。
こんなところからじゃ小学校にも通えない、と美沙は心の中で思うのだった。
理紗子は別荘地に来て以来、一日中機嫌が悪いので、美沙もなるべく距離をおくようにしている。
美沙はログハウス内の自分の部屋の窓からヒマワリ畑を見ながら、手紙の事を思った。
家へ帰ったら、リビングに溢れている手紙をこっそりと持ち出せるだろうか……。
☆これで第三話は終わりです。一つのレスに長めの文章を入れたので、>>○が三つで終わりました。
一週間の時が過ぎるのは早く、今日は秘密の部屋の放送日!
幼い頃は怖かったですが、今見るとあのミステリーな話、雰囲気がとても好きで、わくわくする秘密の部屋です^^
今見ても「怖い」と思うのは、ミステリーよりもホラー系な死の秘宝パート1でしょうか^^;
