二次創作小説(紙ほか)

Re: ハリー・ポッターと無名の生き残り 第四話UP!! ( No.33 )
日時: 2013/04/08 17:51
名前: プリア ◆P2rg3ouW6M (ID: ulToBPjW)

第五話 変身術の先生

 蝉の鳴き声が、静かな夜の闇の中に響き渡っている。虫たちの涼やかな鳴き声とともに、時々草むらの中で、山猫や鹿が動いているような奇妙な音がした。

 おばさんを手伝って夕食の後片付けをした後、美沙はリビングにて窓から景色を眺めていた。闇の中に木々や草の陰が見えるだけだが、虫の鳴き声にじっと耳をすませていると、心が休まる。

 このログハウスでは電気はほとんど使わないので、夜はテーブルの上に蝋燭が一本、置いてあるだけだ。おまけに今は暖炉に火もつけていないので、夏と言えども部屋の中は肌寒かった。

 ログハウスに来ても、相変わらず理紗子はゲームに励んでいる。今回はテレビゲームではなく、家から持ち出してきた小型のゲーム機だ。

「リサちゃん、こんな薄暗いところでゲームしてると、目を悪くするわ。こっちでババ抜きをしましょ」

 テーブルごしに、おばさんが声をかけた。
 ゲームの電源を切り、理紗子はしぶしぶテーブルにつく。

 ババ抜きなんだから、おばさんを抜きにして、私と理紗子でやればいいのに。
 美沙はため息をつき、食器洗いで冷たくなった手を握り締めた。椅子の上にわざわざ膝を抱いて丸く座るのは、いつもの美沙の癖だ。

 今日が終われば、同時に七月も終わってしまう。もう二十時を回っているが、一体家の中はどうなっているのだろう。手紙の海になっているのだろうか。差出人は、今頃どうしているのだろう。

 退屈な生活の中に、ようやく何かが舞い降りてきたと思ったのに、取り逃がしてしまうなんて。

 思いがけず、美沙はぱっと草むらを見た。

「ん?」

 草むらが音を立てて動いた気がしたが、ここからではよく見えない。
 じっと目を凝らして見ていると、やはり何かが動いた。長い尻尾が、草の合間からぼんやりと見える。二つの目が、うっすらと光っている気がした。

 ……山猫だろうか。

 もっとよく見ようと顔を近づけた瞬間、その山猫らしき何かと目があった気がして、美沙は「ひゃっ」と反射的に身をかがめた。

「なんだろう……?」

 もう一度窓の外を見てみると、すでに草むらの不自然な揺れは消えていた。今はただ、静かに風になびいているだけだ。

 トントントントン! 

 突然、ドアを何度もノックする音が響いた。誰かが外にいる!

「ギャー! なんなのよ!?」

 テーブルの上でおばさんとババ抜きをしていた理紗子が、跳びはねて叫んだ。
 おばさんとおじさんも、飛び上がってどこからともなく箒を持ってきて縮み上がっている。
 美沙も椅子から飛び降り、部屋の奥へ行こうとした。

「みみみみみ、美沙! 美沙! ドアを開けなさい!」

 おばさんが早口に捲くし立てた。美沙は飛び上がって首をぶんぶん振る。
 こんな山の中で誰かが来るなんて、ありえない! 絶対に不審者か何かだ。

「な、なんで私が!」
「いいから早くしなさい! ただドアを開けるだけよ!」
「じゃあ、その箒を貸して!」

 美沙はおばさんから箒を受け取ると、ソロソロとドアに近づいた。箒の先を前に向け、ドアノブに手をかける。

「いいか? 少し開けて、こっちへ戻……」

 おじさんが言い終わらないうちに、ガチャッという音がして鍵が開けられた。
 美沙は、すかさず跳ねとんで机の下に隠れた。
 おじさんとおばさんは箒を持ったまま後ずさりし、理紗子はおばさんにベッタリしがみ付いている。

 ドアが軋みながら開き、ゆっくりと不思議な人物が入ってきた。
 美沙は驚いて、放心状態になった。

 ドアから入ってきたのは、まるで仮装大賞にでも出るような、不思議な格好をした女性だった。厳格そうな目つきをしているわりには、緑のマントを羽織り、とんがり帽子をかぶっていたりと、どこかおかしい。鼻がとても高く、冷静な緑色の瞳をしている所から見ると、どうやら外国人のようだ。

 メアリーおばさんとマーチおじさんの知り合い? 
 何かの仮装パーティの帰り? 
 ハロウィーンじゃあるまいし……。
 しかし、それにしては醸し出している雰囲気が厳格すぎて、格好とマッチしない。

 美沙は、興味しんしんに女の人を見つめた。

「こんばんは」

 女の人は、イライラしたような口調でゆっくりと言った。やはり、英語だ。
 そしてあたりを見回し、いぶかしげに目を細める。

「おかしいですね。ここにミーシャ・ライリーがいるはずなのですが。私としたことか、間違えたのでしょうかね?」
 
 どきりと、胸の鼓動が高鳴った。

 なぜ、私のイギリス名を知っているのだろう。
 しかし、この人は、私がこの部屋にいると確信している上で、からかっているような様子だ。

 この人は、美沙に用があって、ここを訪れたのだろう。

 美沙は心を決めると、机の下から出ようとして、頭を角にぶつけた。

「いっ……」

 頭に手をやりつつ、美沙は箒を持ったまま立ち上がる。そうして、緊張で引きつった顔で女の人を見上げた。

「わ、私が、ミーシャ・ライリーです……」

〜つづく〜

☆ここでこのタイトルは妙な気がしましたが、
ハリポタ本でもハグリッドがハリーを迎えに来た章は「鍵の番人」となっているので、一応……。

参照400突破、ありがとうございます!