二次創作小説(紙ほか)

Re: ハリーポッターと無名の生き残り ( No.5 )
日時: 2013/04/02 09:58
名前: プリア ◆P2rg3ouW6M (ID: 0UyQBddh)

第二話 とめどない笑い

 マクゴナガル先生が小さな女の子を預けた家には、子桜(こざくら)夫妻とその娘が住んでいた。
 町の名は連掛町(つなかけまち)——緑豊かな小さな町で、心優しい人々が多く住むところだ。目立って貧乏な者や乱暴な者はいない、素朴で質素な町。
 とはいえ、子桜夫妻は、連掛町では異質な存在だった。

 そして、そんな子桜夫妻の間には、自慢の娘・理紗子がいる。まるで天使のようだ、と毎日親が褒めちぎるので、理紗子もそれなりに高慢に育っていった。

 怖いもの知らずのように見える子桜夫妻だが、唯一気にかけていることが一つある。それは、「他人の目線」だった。他人の目には、常に良いように映っていなければ気がすまない。

 そのポリシーを貫くために、何よりも問題だったのが、「ライリー一家」のことだった。子桜夫妻の奥さんの実の兄である柊(しゅう)は、イギリス人の女性と結婚したのだ。現在はイギリスに住んでおり、姓もライリーと名乗っている。

 しかし、問題はそれだけではない。

 ライリー一家が、他の家庭と大きく違った面を持っていることを、子桜夫妻は知っていた。だからこそ、子桜夫妻は、ライリー一家と自分たちに関わりがあるということを、他人に知られたくないのだ。あんな奴らと関わりがあるということを近所の者たちに知られれば、珍しいものを見るかのように扱われるだろう。それどころか、気味悪がられるかもしれない。それが何よりも、恐ろしかった。

 おまけに、ライリー夫妻にも理紗子と同じ年頃の幼い娘がいるのだ。なおのこと、奴らとは関わりたくなかった。




 子桜夫妻が戸口で眠る赤ん坊を引き取ったあの時から、長い年月が過ぎた。
 それほどの長い年月がたっても、連掛町は少しも変わっていない。朝、太陽のまばゆい光が町に差し込み、緑豊かな土地を照らしていく。雀が澄んだ鳴き声をあげ、いつもと変わらない一日がはじまるのだ。

 あれから約十年、子桜夫妻の居間は、大してあの頃と変わっていなかった。部屋には年頃の女の子が好きそうなぬいぐるみで溢れ、目の細い女の子の写真が飾ってある。
 
 理紗子は、もう小さな赤ん坊ではなく、年頃の女の子へと成長していた。壁に飾られている写真には、小学校六年生になった現在の理紗子が写っている。長い黒髪を腰まで垂らし、ツンとすましている表情の写真ばかりだった。

 しかし、この家に、子桜夫妻と理紗子以外にもう一人住んでいる気配は、ほとんどないに等しかった。他人がもし家にあがってきたら、周囲に置いてあるものを見て、「三人家族」だと思うに違いない。

 それほどまでに、子桜夫妻は「ライリー一家」を毛嫌いしていたので、その娘であるミーシャ・ライリー——ここでは如月美沙(きさらぎみさ)と呼ばれている——に愛情を注ぐはずがなかった。



〜つづく〜
☆子桜、如月……私がなりたかった、きれいな響きの苗字たちです^^

そして、今日は早起きして炎のゴブレットを見ました!

Re: ハリーポッターと無名の生き残り ( No.6 )
日時: 2013/04/02 10:02
名前: プリア ◆P2rg3ouW6M (ID: 0UyQBddh)

 今、美沙は、自分だけの夢に浸りながら、ぐっすりと眠っている。もうすぐ、金切り声で起こされることも知らずに。

 子桜夫妻の奥さん——真弓(まゆみ)おばさんが、甲高い声で怒鳴った。

「美沙! 起きなさい! 朝食抜きにするわよ!」

 厳しい母親のような言い回しだったが、どこか冷ややかな響きがあった。
 朝に弱い美沙は、「むぅー……」と寝返りを打ち、耳をふさぐ。見ている夢はまだ消えていないのに、その中におばさんの甲高い声だけが飛び込んできている。

「ほら、起きなさい!」

 ドンドンドン! と部屋のドアを叩かれ、ようやく美沙は飛び起きた。さきほどまで見ていた夢はどこかへ吹き飛び、目を開けると、埃っぽい自分の部屋が見える。

 おばさんが「早く!」ともう一度怒鳴り、最後に一発ドン! とドアを叩いた。
 そっと耳を済ませると、おばさんは美沙の部屋のある二階から階段を下り、一階へ行ったようだった。

 のろのろとパジャマを着ながら、美沙はため息をつく。

 夢と現実の差は、なんて激しいのだろう。おばさんの声が響くその寸前まで、心地よい夢の世界に浸っていたのに。童話の世界のような魔女が出てきて、本が空を飛んでいたのに。現実逃避なのか何なのか知らないが、最近はよくそういったおとぎ話のような夢を見る。

 ファンタジーが大好きな美沙は、もっと夢に浸っていたかった、と顔をしかめた。

「美沙、早くしなさいって! 今日はコンサートに行くのよ!」

 理紗子が、乱暴にドアを開けて入ってきた。

 細長い目、細長い顔。まるでお面のような顔だ。腰まである長い黒髪はコンサートに行くためか、上品に頭の上で一本に縛られている。服は桃色のフリフリのワンピースで、わざわざ頭にカチューシャまでつけていた。親は「まるで天使だ」と褒め称えるけれど、美沙には意地の悪いいじめっ子にしか見えなかった。
 理紗子には内緒で、美沙はひそかに「白い大根」とあだ名をつけている。

 そんな理紗子はいつも決まって、美沙の部屋に入ると「汚い!」と顔をしかめる。

 それもそうだ。

 美沙の部屋は、いらない物を閉まっておく、物置のような存在の部屋だったのだから。元々美沙がこの家に来る前は物置として使われていた、空き部屋だったらしい。他に空き部屋がないから、とおばさんたちが言うので、美沙はそこに住まわせてもらっているが、汚くて仕方がない。

 「綺麗にしたい」と思い、掃除しようとするのだが、学校の掃除と違い、片付けの苦手な美沙が部屋を整理すると、何がなんだかわからなくなってしまう。

 汚い部屋に住んでいるだけ花粉症にならなくて住むのだから、ありがたく思いなさいね——。小さい頃から、耳にたこが出来るほど聞かされてきた、いかにもこじつけた、というような言葉……汚い所に住んでいると埃に慣れ、外で花粉症にならなくなるらしい。

「どう? 可愛いでしょう? あんたみたいな外人が着ても、周りから浮いて変なだけよ」

 自分のワンピースを見せびらかしながら、理紗子は鼻歌を歌っている。

「あんた、その格好で行くの? もっと綺麗な服ないわけ?」

 美沙の着ている服は、親の買ってきた服を理紗子がわがままで着ない、お下がりのものだった。たいてい理紗子が好かない服といったら地味な服なので、今美沙が来ている服も当然地味だ。

(元々は理紗子——白大根行きの服だったのに)

 理紗子に嫌味を言われるたび、美沙は心の中でブツブツと不満をこぼす。

「これから身支度するけど、この部屋、汚いんでしょう? 出て行かなくて平気?」

 美沙が言うと、理紗子はわざとらしく鼻をつまみながら部屋を出て行った。

「大成功!」

 へへっといたづらっぽく笑うと、美沙はクシを手に取った。そうして、肩にかかる程度の茶色がかった黒髪を、手早くとかしていく。毛先のウェーブした髪はひどく絡まっていたが、お構いなしにぐいぐいとかした。
 前髪を二つに分けるなり、「よし!」と一声かけると、部屋を出て階段を下りていく。

 リビングへ出てくると、真弓おばさんと康介(こうすけ)おじさんが、理紗子のワンピース姿に惚れ惚れとした表情をしているところだった。

 こげ茶色の髪を持ち、すらりと痩せたおばさんと違い、おじさんは妙にがっしりした体格をしている。有名な自動販売機会社の社長で、よく飲み食いするというのに、何とか肥満にならずにすんでいるのは、おばさんのカロリー計算のおかげなのかもしれない。

 美沙の姿をみとめると、おばさんはさりげなく顔をしかめた。

「早く、朝ごはんの支度をしてちょうだい」
「はい、おばさん」

 唸るようなおばさんの声に、美沙はだらだらと台所に立つ。

 おばさんの兄であるお父さん似のためなのか、美沙は痩せた体型をしていた。お菓子を食べるのは好きだが、身長が伸びるだけで、どうしても太ることが出来ない。着ている服はだいたいいつも理紗子のお下がりなので、よく言えば質素に、悪く言えばみすぼらしく見えた。

 体型はお父さん似だが、顔立ちはイギリス人であるお母さん似だ。くっきりとした輪郭をしているが、白い頬はどこかふっくらとしている。茶色がかった黒髪に、明るいヴァイオレットの瞳を持った顔は、日本人離れしているが、どこか東洋らしい素朴な面影も残していた。

 とはいえ、ただでさえ手足の長さや色の白さ、そして服の地味さなどで「気味悪い」と、理紗子をはじめとする女子軍団に陰口を叩かれているのに、日本人離れの顔をしているからもっと最悪だった。「日本語しゃべれる?」などのからかいの言葉は、もう慣れっこというほど聞き飽きている。

 理紗子が何かしら機会を見つけてはクラスメイトに美沙の悪口を言っているので、学校でもほぼ孤立しているに等しい。美沙自身、自分の容姿は嫌だと思ったことはないが、周りの子が自分と同じ、外国人らしい顔立ちをしていれば、とは思う。
 
 けれど、この瞳の色だけは、ひそかなお気に入りだった。日本人離れした、この紫色——ヴァイオレットの瞳……外国人でも、ヴァイオレットは珍しい色だと聞く。これを見ると、自分に子桜夫妻ではない両親がいたことを、いつも思い出す。

 イギリスでの美沙の名前——「ミーシャ・ライリー」という名前も気に入っていた。むしろ、日本人離れした顔なのだから、「如月美沙」ではなく、いつも「ミーシャ・ライリー」でいたいとも思う。


〜つづく〜

☆実を言うと、この第二章までは2011年の夏に書いたものなんです。
妙に更新スペースが早いのも、これが理由ですw

第三章くらいまでは、二日に一回くらいのペースを目標に、
それ以降は本当に不定期更新となる予定です;
早くホグワーツが書きたいな〜と思う今日この頃……。