二次創作小説(紙ほか)
- Re: ハリー・ポッターと無名の生き残り 第五話完結! ( No.54 )
- 日時: 2013/04/11 17:54
- 名前: プリア ◆P2rg3ouW6M (ID: hDVRZYXV)
第六話 魔法のいざない
ログハウスの外へ出ると、夏のむわっとした空気が肌をなでた。暗闇の中で、静かな風がそよいでいる。しじまの中に虫たちの鳴き声が、えんえんと響いていた。
ミーシャは、マクゴナガル先生の背中から空へと目を移した。黒い影のように生い茂った木の葉の隙間から、星が煌く夜空が見える。
「しかし、ここはむしむししていますね……」
独り言のように、マクゴナガル先生がぽつりと声を洩らす。
軽々しく話しかけていいのかわからず、ミーシャはじっと黙っていた。
くるりと振り向いてミーシャを見やり、先生は言った。
「ミーシャ、眠らずにいて平気ですか?」
「えっ?」
ミーシャはきょとんと目を丸くした。
先生は、じっとミーシャを見つめている。
「ロンドンは今頃お昼の十二時を回った頃でしょう。時差ぼけが……」
そこまで聞くなり、ミーシャは弾かれたように顔をあげた。
「そっか! 私がいつも寝ている時間に向こうへ行くから……。でも、平気です。今日は寝坊して昼過ぎまで寝ていましたし、今は学校も休みなので」
マクゴナガル先生がおかしそうに目を逸らしたのを見て、ミーシャはそわそわした。
何かバカなことを言ってしまったのだろうか。
この聡明そうなホグワーツの先生に、軽々しく口を聞くのは失礼なのかもしれない。小学校の先生ではない。遠い海外の、魔法界の先生なのだ。
とはいえ、自分の知らない世界が目の前にあると思うと、じっとしていることなど、出来そうになかった。
先生はふっと一息つくと、ミーシャの方に向き直る。
「……では、行きますか。怖かったら、目を瞑っていなさい」
ミーシャはその言葉の意味を考え、顔をしかめた。
「つまり、瞑っていた方がいいってことですか?」
「……ええ、その方が身のためですね」
その言葉を聞き、ミーシャはわけもわからないまま目を瞑った。
「私の腕に……」と言いかけ、先生は口を閉じる。ミーシャは無意識に、マクゴナガル先生の腕をつかんでいた。
ピィーというような、軽やかな鳥の鳴き声が、だんだんと迫ってきた。
とたん、瞼の裏に炎のような明るい光がほとばしった。水の中にいるような息苦しさとともに、体が浮き上がったような心地さえする。
足が吸い寄せられるように地面についた、と思えば、遠くでがやがやと賑わっているような声が聞こえた。夜の闇ではない明るさに、そうっと目を開けてみると……。
「……!」
森の中ではない、どこか見知らぬところに立っていた。それも、場所だけではない。時間さえ、夜から昼に変わってしまっている。
眩しさに目を細め、ミーシャは辺りを見回した。
どこかの店の裏にいるらしく、店の正面の表通りからは、人々が行き交う音が聞こえていた。
ミーシャは目をしばたくと、確かめるようにマクゴナガル先生を見上げる。先生のすぐそばで、炎のように赤いものがすうっと消えたところだった。
口を開けてぽかん、としていると、見かねたように先生が言った。
「ここは、ロンドンですよ」
「……は……?」
言われてみれば、同じ夏とはいえ、日本のような湿度がない。体にまとわり付くようなじめじめした暑さはなく、からっとしている。
「ま、まさか……」
本当に日本から、遠く離れたイギリスまで来てしまったのだ! それも、一瞬で!
外国など、童話や物語の世界と同じくらい、別世界のような気がしていたというのに。ファンタジーとばかり思っていた魔法が存在したのだから、海外へ行くことなど、さほど驚くことでもないのかもしれない。それでも、動揺と胸の高鳴りは抑えられなかった。
「えっ、えっ、本当に? まさか? 私が瞬間移動……なんて!」
「……〝私たちが〟ですね。そのまさかですよ」
マクゴナガル先生は、きっちり訂正する。
今の魔法がなんなのか、ミーシャがきいてくるかと思えば、落ち着きなさげに辺りをきょろきょろしているばかりだ。
「ミーシャ、手紙はありますか?」
マクゴナガル先生に声をかけられ、ようやくミーシャは我に返った。多少しわくちゃになってしまった羊皮紙の封筒をポケットから取り出し、マクゴナガル先生に見せる。
先生は封筒の皺を見て、一瞬呆れたように息を吐いた。
「そこに必要なもののリストがありますので、確認しておいた方がいいでしょう」
ログハウスでは、気が動転していて気づかなかった、二枚目の手紙だ。ミーシャは、ぶつぶつと口で音読しながら、懸命に読む。
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ホグワーツ魔法魔術学校
制服
一年生は次の物が必要です。
一、普段着のローブ 三着(黒)
二、普段着の三角帽(黒) 一個 昼用
三、安全手袋(ドラゴンの革またはそれに類するもの) 一組
四、冬用マント 一着(黒 銀ボタン)
衣類にはすべて名前をつけておくこと。
教科書
全生徒は次の本を各一冊準備すること。
「基本呪文集(一学年用)」 ミランダ・ゴズホーク著
「魔法史」 バチルダ・バグショット著
「魔法論」 アドルバート・ワフリング著
「変身術入門」 エメリック・スィッチ著
「薬草ときのこ千種」 フィリダ・スポア著
「薬草調合法」 アージニウス・ジカー著
「幻の動物とその生息地」 ニュート・スキャマンダー著
「闇の力——護身術入門」 クエンティン・トリンブル著
その他学用品
杖(一)
大鍋(錫製、標準二型)(一)
ガラス製またはクリスタル製の薬瓶(一個)
望遠鏡(一)
真鍮製秤(一組)
ふくろう、または猫、またはヒキガエルを持ってきてもよい。
一年生は個人用箒の持参は許されていないことを、保護者はご確認ください。
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ミーシャは、手紙の内容を口に出しながら、いちいちマクゴナガル先生に質問した。
「ローブってことは……制服があるんですか?」
「ええ、もちろんです」
中学生になってからのセーラー服は憧れだったが、三角帽子に黒いローブというのも面白そうだ。
「魔法学校にも、セーラー服のように制服があるなんて」
「セーラー……?」
先生が気難しい顔をするのにも構わず、ミーシャは読み進めていく。
「まほう……史? 魔法の歴史を学ぶんですか?」
「ええ、魔法にも古くからの歴史がありますから」
「……まさか……年代とか、人物の暗記……?」
「そのとおりです」
なんにせよ、歴史は日本史も含め、物語があるから面白い。
リサコやおばさんとともに、よく日本の大河ドラマを見たものだ。
「あの、つまり、普通の科目は一切やらなくていいんですか?」
「……普通の科目……とはなんでしょう?」
マクゴナガル先生に言われ、ミーシャは目を泳がせた。
「国語とか、算数とか、社会とか……」
「ホグワーツでマグルが習う科目を習っても、学校に来ている意味がないでしょう?」
「あー、はい、そうですけど……普通の科目の中に、魔法科目があるのかと……」
魔法史が歴史に値するのだとしたら、薬草調合法の本の内容は理科に値するのかもしれない。中学に入れば、それは化学に値するのだろう。しかし、どの科目も「魔法関係」であることに変わりはない。
読む進めていくうちに、心がどんどん弾んでいくのが、自分でも手に取るようにわかった。
「杖! やっぱり魔法使いは杖で魔法を使うんですね!」
「……木の枝でも使うと思いましたか?」
「形が似ているのなら、枝も杖代わりになったり……しそう」
「しませんよ! するわけないでしょう」
マクゴナガル先生は、目を細めて言う。
「さあ、リストを確認したら行きましょう。これから忙しいですよ」
〜つづく〜
☆最後の更新から、ちまちま書き溜めていたものです。
私も学生ゆえに、学校が始まってしまいました;
一日中勉強するわけでもないので、暇を見て
小説を描き、ある程度溜まったら投稿したいと思います!
学用品のリストについては、本からの引用です。
映画だけ見ている方もいらっしゃるのでは? と思いまして^^
- Re: ハリー・ポッターと無名の生き残り 第六話開始 ( No.55 )
- 日時: 2013/04/14 17:13
- 名前: プリア ◆P2rg3ouW6M (ID: XA550r3A)
ミーシャが頷き、あわただしく手紙をしまうのを見ると、マクゴナガル先生は悠々と歩み出した。その後ろを、ちょこまかとした足取りで、ミーシャが必死についていく。
店の裏を出ると、いくつもの店が建ち並ぶ賑やかな表通りへと出た。
その町並みに、ミーシャはきょろきょろと辺りを見回しながら歩いていく。日本と違い、石造りで、色の控えめな建物が多く建ち並んだ町並みだ。店の看板表記もお洒落なものが多く、すでに魔法の世界へ来てしまったかのような気さえする。
道行く人々も、ミーシャと同じ、色の白い人ばかり。ミーシャはなんだか嬉しくなった。
マクゴナガル先生は道行く人々の中を颯爽と歩いていくが、人々は先生の格好をちらちらと見ては通り過ぎていく。先生は何も気にしていない様子だが、ミーシャはときたま周りを盗み見した。
本屋を過ぎ、楽器店を過ぎ、ハンバーガー店を過ぎ、映画館を過ぎ……ミーシャからしてみれば、この町並みの中に魔法の店などいくらでもありそうに見えるが、ここの人たちにとっては、いたって普通の通りだ。
いったいどこに、杖やらを売っているお店があるのだろうか。
魔法の先生とはいえ、まさかボケで間違えたなんてことは……。
辺りを見回すのをやめ、ミーシャが不安に思った時、先生の足が止まった。
俯いて考えていたミーシャは先生の背中にぶつかりそうになり、慌てて顔をあげる。
「ここですよ。——『漏れ鍋』です。有名なところですよ」
ほーっと口を開け、ミーシャは「漏れ鍋」というパブを見やった。
建物と建物の間にひっそりとある、薄汚れたちっぽけなパブだ。マクゴナガル先生に言われなければ、そのまま気づかずに通り過ぎてしまっただろう。道行く人々も、「漏れ鍋」には目もくれずに、足早に歩いている。
「なんか……有名っていうわりには、存在感がないというか……」
言い終えた後に、また余計なことを言ってしまった……と、後悔した。ミーシャは、恐る恐るマクゴナガル先生の顔色を伺う。
先生は気分を悪くするどころか、むしろ感心したようだった。
「そのとおりです。魔法で、マグルに気づかれにくいようにしているのですよ」
「へぇー! なるほど!」
ミーシャが素直に声をあげると、マクゴナガル先生は口元で笑った。
「ちょっと早く歩きすぎましたか? マグルの人ごみは疲れるものですからね、ええ」
人ごみが嫌だから、あんなに早足だったのだ。
ミーシャは頷き、先生の後に続いてパブの中へ入った。
てっきり人々がくつろいでいるのかと思ったが、中はざわざわと騒々しかった。席についているものは一人もいなく、皆飲みかけのグラスをほったらかしてまで話している。
暗くてみすぼらしいパブの中を見やり、先生は言った。
「なにやら騒がしいですね」
すると、シルクハットを被った人と話していたバーテンのおじさんが、マクゴナガル先生の方を振り向いた。
「ああ、先生! ご無沙汰しております」
「ええ、トム。久しぶりですね」
バーテンは愛想よくにっこりと笑い、ミーシャに目を向けた。
ミーシャはぎくりとして、両手を握り締める。
「おや、そちらの可愛いお嬢ちゃんはホグワーツの新入生ですかい?」
「ええ」
マクゴナガル先生は答え、ミーシャの頭をぽんぽんと叩いた。
落ち着かなくなり、ミーシャは口をぎゅっと閉じる。
マクゴナガル先生は再び辺りに目を向け、早口に尋ねた。
「しかし、なにやら騒がしいですね」
「そりゃあそうでしょうとも! さきほどハグリットがここに来たんですがね、あのハリー・ポッターをつれていたんですよ!」
「ハリーを?」
舞い上がったようなバーテンの言葉に、マクゴナガル先生はほっと表情を緩めた。そうして、にこやかにミーシャに笑いかける。
「ハリーに先を越されましたね、ミーシャ」
なんと言っていいのかわからず、ミーシャははにかみながら笑うしかなかった。
先生はバーテンと短い言葉を交わした後、再びパブの奥へと進んでいった。が、急に立ち止まったので、ミーシャはまたしても先生の背中に突進しそうになってしまった。
「おお、クィレル先生!」
マクゴナガル先生の言葉に、はっと顔をあげる。
先生の前には、青白い顔をした若い男の人が立っていた。男の人は、頭にターバンを巻いている。
「マクゴ、ナガル先生。こんなところで会うとは、ゆ、夢にも思わず……」
なんだか、おどおどとした話し方をする人だ。
マクゴナガル先生は微笑し、ミーシャの頭に手を乗せた。
「ええ、今日はミーシャ・ライリーを連れてきたんですよ。ミーシャ、クィレル先生です。ホグワーツの教授で、闇の魔術に対する防衛術を教えているのですよ」
ホグワーツの先生!
これはまた厳格そうなマクゴナガル先生とは、正反対なタイプの先生だ。そのわりには、闇の魔術に対するどうのこうの、とは、なんだか物騒な教科を教えているようだ。
しかし、先生ときたら、これからお世話になる人に代わりは無い。ここは一つ、挨拶をしておこう……。
「あー、はじめまして。ミーシャ・ライリーです……」
愛想よく挨拶をするはずが、もごもごとした言葉しか出てこなかった。
ミーシャは、遠慮しがちにゆっくりと手を差し出した。クィレル先生は同じように手を差し出し、それから握手を躊躇したようにすっと引っ込めてしまった。
「き、君みたいな女の子と握手するには、わ、私の手は、お、恐ろしい闇の魔術に、染まり、きっているね」
そうして、神経質そうに笑った。
「そう、ミーシャ・ライリー……さん。さきほど、ハリーに、あ、会いましたよ。あ、あなたと同じ、あの夜に、生き残った……」
「はっ? い、生き残った……!?」
思わず、ミーシャはすっとんきょうな声をあげた。
私が? 生き残った?
過去に殺されかけた経験でもあるのか?
そうして、さきほどのバーテンも言っていた、「ハリー」という人。
ハリーとは、一体誰のことなのだろう。
魔法界には、わけのわからないことが多すぎる。
ミーシャは、頭がくらくらした。
ミーシャの困惑した様子を見、マクゴナガル先生の顔がわずかに曇った。先生はミーシャの肩に手を置き、先をうながすようにぐっと押した。
「では先生、これからこの子の学用品の買出しへ行くので、失礼しますよ」
「え、ええ……お、お気をつけて」
肩を押されているくすぐったさに耐えつつ、ミーシャはクィレル先生に軽く頭を下げた。
〜つづく〜
☆英語が話せるといっても完璧ではないので、
「闇の魔術に対するどうのこうの」としか聞き取れないミーシャです。
先日中学生の時の英語の教科書を見てみたんですが、
「Hello,Ms.Green!」とか習ってたんですよね;
あの頃はこんな長文を読まされるとはいざ知らず……。
