二次創作小説(紙ほか)

Re: ハリー・ポッターと無名の生き残り 第六話開始 ( No.62 )
日時: 2013/05/28 18:15
名前: プリア ◆P2rg3ouW6M (ID: c7et0oKr)

 マクゴナガル先生は慣れたように雑踏の中を進んでいき、レンガの壁に囲まれた中庭に、ミーシャを連れ込んだ。雑草が二、三本生えているだけの、ちっぽけな庭だ。

 ミーシャは、辺りを見回し、マクゴナガル先生を仰ぎ見た。

「あの、先生。ハリーって誰なんですか? クレル……先生が……」
「クィレル、先生ですよ」

 話している途中で先生に訂正され、ミーシャはつっかえつつも早口に話した。

「クィ、クィー、クィレル先生が私のことを生き残ったとか言っていたことは、なんなんですか? まさか、私が昔死んでしまったなんて……」
「一回過去に死んでしまったのなら、〝生き返った子〟と言うでしょう?」

 マクゴナガル先生は言い、少し間をおいてから、静かに杖を取り出した。
 杖を見てどきりとするミーシャをさしおき、先生はレンガの壁に杖を向ける。

「それは、この先の買出しが終わったら話しましょう」

 先生は、レンガを数えつつ、真ん中付近から三つ上がって横に二つ目のレンガに、とん、と杖を当てた。そうして、まるでレンガを諭すように、杖の先で三回叩く。
 すると、叩いたレンガが小刻みに震え、くねくねと動き出した。

「……!?」
「下がっていなさい、ミーシャ」

 先生の叩いたレンガから波が伝わったように、他のレンガもくねくねと動き出していく。壁の真ん中に穴が開いたと思いきや、そこを境にレンガが左右によけ始め、穴がどんどん広がっていった。

 レンガの動きが止まった時、目の前にはアーチ型の入り口が出来ていた。

 首を伸ばしてその向こうを覗いてみれば、曲がりくねった石畳の通りが、道の果てまでえんえんと続いている。
 ぽかんとしているミーシャに、マクゴナガル先生が満足げに息を吐いた。

「やっと来ましたよ。さあ、ミーシャ。ダイアゴン横丁です」
「魔法使いの……通り?」

 ミーシャは言いながら、両脇によけたレンガをじっくりと触っている。

「ええ、そうです。ここには魔法に無知なマグルは一人もいません」

 先生はいいながら、先をうながすようにミーシャに目を向けた。

 ミーシャは慌てて頷き、先生とともにアーチ型の門を潜り抜けた。ぱっと後ろを振り返ると、アーチ型の門はみるみる縮み、元のレンガの壁へと戻っていっている。

 背筋を伸ばして辺りを見回している先生は眩しそうに目を細めているが、ロンドンにいた時と違い、どこかリラックスしているように見えた。
 マクゴナガル先生の真似をするように、ミーシャもじっと通りの奥に目を凝らす。

 朱色や茶色のレンガで出来た店たちが、陽の光を浴びてキラキラと輝いていた。鍋の形をかたどった看板のある店内をのぞいて見れば、中では鍋がうず高く積まれている。

 丸一日時間があってもすべての店をのぞききれそうにないほど、途方もない店の数だ。

 子どもたちが周囲に集まっている店は、どうやら箒屋らしく、中には何本もの箒が飾ってあった。最も手前に飾ってある、シュッとした箒を見やり、ガラス越しに男の子が声をあげた。

「ニンバス2000の最新型だぜ! これがあれば勝利確定だね!」

 ほー、とミーシャは首を伸ばして、雑踏の隙間から箒を見た。

 箒にも、服のようにブランドがあるのだろうか。
 箒というと、魔女が黒猫を連れて空を飛ぶイメージしか浮かばないけれど……。
 なにはともあれ、もしも魔法があればまずやってみたかったことというのは、第一に「空を飛ぶこと」だった。これからホグワーツに入学すれば、それが実現するのかもしれない。

 胸をときめかせているミーシャをさしおき、マクゴナガル先生がため息をついた。箒の店に集まっている子どもたちをちらりと見やり、ぼそぼそと呟いている。

「いくら箒が優秀でも、腕がなければ勝利することは出来ません。ええ、本当に……」

 いつになく落ち込んだ様子の先生に、ミーシャは目をふせる。
 そうして、余所見をしつつ、さり気無く囁いた。

「でも先生、才能があっても性格が悪かったら、何にもならないですよ」

 ミーシャは、リサコのことを思い浮かべて言ったのだが、先生は急に瞳を輝かせた。

「そう、本当にそうです! 我がグリフィンドールの選手は皆誠実です。それに比べてスリザリンの選手は……」

 わけのわからない単語が出てきたので、ミーシャはふんふんと頷きつつ、通りの店たちに目を戻した。

 呪文の本が積まれている店もあれば、フクロウの鳴き声が響いている店、うなぎの目玉まで売っている店さえもある。コウモリの脾臓が売ってある店を見た時、ミーシャはウゲッと顔をしかめた。

「あの……先生、まずはどこへ行くんですか?」

 マクゴナガル先生が落ち着いたのを見計らい、ミーシャは遠慮がちに声をかけた。

「……ええ、まずは銀行へ行きましょう」
「銀行ー?」

 入学のために必要な学用品の店を案内してくれるのだろうと思っていたミーシャは、思わず拍子抜けしてしまった。
 何よりも、魔法の世界にまで銀行があるとは思ってもみなかった。
 なんでもかんでも魔法で解決できてしまうというのは、本当に空想の世界の魔法話のようだ。

「あのー、なぜ銀行へ行くんですか?」

 ミーシャのけろりとした発言に、先生はため息をついた。

「ミーシャ、あなたは所持金なしでどうやって学用品をそろえようと考えるのですか?」

 そう言われ、ひんやりとした不安が込み上げてきた。

 いくら魔法の世界とはいえ、お金は必要なのだ。
 買い物をすると聞いた時、なぜ第一にお金のことが思い浮かばなかったのか……。「魔法」ときいて、現実的なことはすっかり頭から飛んでしまっていた。

 冷や汗が噴出してきて、ミーシャはマクゴナガル先生を見上げた。

「ど、どうしよう……私、お金なんて持ってません……」

 ましてや、外国のお金なんて……。
 そんなミーシャに、マクゴナガル先生は、すました表情を向けた。

「ええ。ですから、これから銀行へ行くのです」
「いや、でも、銀行へ行ってもお金はないですよ」
「お金のない銀行なんて、ありませんよ」

 話のかみ合わなさに、ミーシャは歯がゆさを覚えた。

「そうじゃなくて、〝私の〟お金はどこの銀行にもありませんよ……! 私、この世界のどこにも、外国のお金なんて持ってません」

 急に声をあげたミーシャに目を丸くしつつ、先生はすんなりと言う。

「ええ、マグルの世界の銀行ではそうでしょうね。でも、ここはマグルの世界ではないのですよ」
「はぁ……」

 自分がバカなのだろうか。まるで意味がさっぱりわからない。

〜つづく〜

☆お待たせしました; 約一ヶ月ぶりの更新です;

本当はもっと長い話だったのですが、
いろいろあって文章データが消えてしまい、打ち直すハメに……。
ちゃんとコピーをとっておくべきだった、とこれほど後悔したのも久々です;

「字数オーバー」です、と表示されて戻っても、
データが消えないように配慮してくれると嬉しいですね^^;