二次創作小説(紙ほか)

Re: ハリー・ポッターと無名の生き残り 第六話開始 ( No.68 )
日時: 2013/07/31 17:17
名前: プリア ◆P2rg3ouW6M (ID: 8TaBVFdu)

 一度悩み出したら止まらないミーシャは、とたんに辺りの店には目もくれなくなった。お金のことで頭をいっぱいにさせ、不安な面持ちのまま、マクゴナガル先生と歩いていく。

 すると、小さな店が並ぶ通りの中で、ひときわ高くそびえる真っ白な建物が見えてきた。白い階段を上った先に、ブロンズの観音開きの扉が待ち構えている。

 建物を端から端まで見つめながら、ミーシャはほーっと声をあげた。

「まるでお城みたいですね……!」

 その発言を聞いて、マクゴナガル先生は小さく笑った。

「グリンゴッツ魔法銀行です。これほど安全な所はないのですよ。まあ、ホグワーツの次ですけどね」

 鼻を高くして言う先生に、ミーシャは苦笑いする。
 日本と魔法世界を比べるのはおかしいとわかっていても、銀行よりも学校が安全とは、日本ではおかしな話だ。

 いつの間にか、不安な気持ちなどどこかへ吹き飛んでしまった。
 興味シンシンに銀行を眺めながら、観音開きの扉の両脇に立っている生き物に目を留める。

「先生、あの小人みたいな人たちはなんですか?」
「ゴブリンです。賢い生き物ですが、冷徹な所があるのが欠点ですね」

 マクゴナガル先生は、声を潜めてささやいた。
 
 グリンゴッツへ向かって白い階段を上りながら、ミーシャはまじまじとゴブリンを見つめる。
 ゴブリンは、真紅と金色の制服を着て、ぴんと背筋を伸ばして立っていた。ミーシャよりも背が頭一つ分小さく、浅黒い賢そうな顔つきに、先の尖った顎からは髭を生やしている。目に白目はほとんどなく、耳がぴんと長かった。

 二人が入り口に進むと、二人のゴブリンが同時にお辞儀をした。そのキレのよさに、ミーシャは吹き出しそうになる。
 観音開きの扉の中には銀色の二番目の扉があり、何か言葉が刻まれていた。

 口に出して読まねばまだ内容が頭に入りにくいミーシャは、ゴブリンの目を気にしつつ、ぶつぶつと音読する。


    見知らぬ者よ 入るがよい
    欲のむくいを 知るがよい
    奪うばかりで 稼がぬものは
    やがてはつけを 払うべし
    おのれのものに あらざる宝
    わが床下に 求める者よ
    盗人よ 気をつけよ
    宝のほかに 潜むものあり


「思っていたよりも……魔法界って現実的……」

 ぽつりと呟き、本当にそうだと思った。
 お金があり、銀行があれば泥棒や強盗もいるだろう。当たり前のことだが、この世界が空想ではなく、現実なのだと改めて思い知らされた。

「でも、こうして扉に警告文を書いていても、わざわざ盗みに来る人がいるんですね」
「まあ、この文自体、飾りみたいなものですからね」

 マクゴナガル先生の一言に、一人のゴブリンが片方の眉を上げた。

 そうして、銀色の扉を通る二人に、左右のゴブリンが再び同時にお辞儀をする。扉の中にまた扉でもあるのだろうかというミーシャの考えは、見事に外れた。

 銀色の扉の先は、広々とした大理石のホールだったのだ。
 中にいるゴブリンは、百人を超えているだろう。カウンターの向こうで足高の丸椅子に座り、帳簿に書き込みをしている者もいれば、コインの重さを計ったり、宝石を吟味している者もいる。

 ホールに通じる扉は無数にあるらしく、無数のゴブリンが中に出入りする人を案内していた。

 マクゴナガル先生は、その中を何の気後れもせず通り抜けると、カウンターに近づいた。
 一回咳払いをするなり、ゴブリンに堂々と声をかける。

「ミーシャ・ライリーさんの金庫を開けていただきたいのですが」

 ゴブリンはゆっくりと顔を上げ、ミーシャを覗き込んだ。

「鍵はお持ちで? ライリーさん」
「えっ……いや、その……」

 なんの鍵のことだか、まったくわからない……。
 じっと見つめられ、頭が真っ白になったミーシャは手を握り締める。
 何か言わなければ、と口を開こうとしている間に、マクゴナガル先生がゴブリンにすんなりと鍵を渡していた。

 なんだ、先生が持っていたのか。

 拍子抜けしているミーシャをさておき、先生はヒソヒソと言う。

「さきほど、ホグワーツのハグリッドとハリー・ポッターが来ましたか?」
「ええ、確かに」

 その言葉を聞き、先生はホッとしたようだった。
 ゴブリンは眉をひそめると、ハキハキと言った。

「金庫へ案内させるのは……先ほどハリー・ポッターさんたちを案内させたグリップフックでどうでしょう?」

 ゴブリンがグリップフックの名を呼ぶと、同じゴブリンであるグリップフックがスタスタとやってきた。

「ご案内します」

 二人はグリップフックに続き、ホールの外に続く無数の扉の一つへと向かう。
 グリップフックが扉を開けると、そこは松明に照らされた細い石造りの通路だった。ジェットコースターのような急な傾斜が下へ下へと続き、床に線路がついている。

 グリップフックが口笛を吹くと、トロッコがこちらに向かってあがってきて、三人はそれに乗り込んだ。

 まるで迷路のようにクネクネした道を、トロッコはスピードを緩めることなく突き進んだ。冷たい風が顔に当たり、あまりのスピードにミーシャは悲鳴を上げたくなった。まわりの景色など、見ている余裕もない。トロッコの手すりにつかまり、しゃがみこむように伏せているしかなかった。
 
「到着です」

 グリップフックの声に、ミーシャは重い頭を上げた。
 トロッコは、小さな扉の前で止まったようだった。いつの間にかグリップフックはトロッコを降り、扉の前に立っている。

 先生に続き、ミーシャがガクガクする足でトロッコを降りると、グリップフックがじっとこちらを見つめていた。

「……あなたはポッターさんと対照的です」
「ポッターさんって……ハリー・ポッター?」
「はい、もちろんでございます……」

 先ほどからよく名前を聞く……ハリー・ポッターという名前。
 マクゴナガル先生に目を向けると、先生は気難しそうな顔をしている。

 ミーシャが再び口を開こうとした時には、ゴブリンは扉に向き直り、扉を開けていたところだった。

 扉がゆっくりを開き、あふれ出る煙の先にあったものは……ちらちらと輝く、金貨や銀貨だった。山積みとまでは行かないものの、学費で困ることはないと断言できるほどの量はある。

 ぽかんと口を開け、ミーシャは先生の顔を見た。

「あなたがホグワーツに入学した時、学費に困らないだけのお金を、あなたのご両親は残していきました」

 静かなその言葉を聞き、ミーシャは胸がいっぱいになった。
 何も心配することがないよう、お父さんとお母さんはお金を残してくれたのだ。それも、ホグワーツに入学することを考え済みで……。

 何も言えずにいるミーシャに、マクゴナガル先生は小さな布鞄を取り出した。

「一年生のうちに学費で使う分を詰めましょう」

 お金の単位や量はさっぱりわからなかったので、ミーシャは先生に言われるがままに詰め込んだ。

「……〝学費〟の分のお金ですからね。くれぐれも、無駄遣いしないように!」

 先生は「学費」という言葉に力を込める。
 ミーシャは、はにかみながら頷いた。

 お金を詰め終えると、マクゴナガル先生はグリップフックに向き直った。

「さて、戻りましょう。また案内をお願いしますよ」

 その言葉に、ミーシャは思わずゲッと声をあげた。

「またあのトロッコ? グリップフックさん、他の道は?」

 グリップフックは、にやりと目を吊り上げた。

「申し訳ございませんが、他の道はご用意しておりません」

〜つづく〜

☆「ゴブリン」と「小鬼」の表記には迷いましたが、
ここは個人的にしっくりくる、映画版の表現「ゴブリン」にしました。


……8月からいよいよハリポタが金曜ロードショーで放送されるときき、
7月中に一回は更新したい!という目標を元に……頑張りました^^;

夏休みといえど、勉強に追われ、思うように更新が出来ず><
とはいえ、早くミーシャをホグワーツに入学させたいんですよね!

個人的に退屈だった銀行の描写が終わったので、
ダイアゴン横丁での買い物をさっさと(笑)すませ、
一気に入学まで書ければいいな〜と思います。暇を見つけて;
 
 

Re: ハリー・ポッターと無名の生き残り 第六話開始 ( No.69 )
日時: 2013/08/02 15:54
名前: プリア ◆P2rg3ouW6M (ID: 4qS6O2ST)

 グリンゴッツから外へ出ると、陽の光の眩しさに目が痛かった。マクゴナガル先生でさえ、顔をしかめて目を細めている。

 ぼんやりとして、ミーシャは目をこすった。
 強烈なトロッコのせいで、指先がじーんと冷たくなってしまった。まだ体が揺れているような気さえする。

「……まずは制服を買いましょうか」

 温かい陽の光にぼーっとしていると、不意にマクゴナガル先生の声が聞こえた。
 ミーシャははっとして、お金の入った布鞄を持ち直す。
 入学のための買出しが、いよいよ始まるのだ。

「いきなり制服なんですね……!」
「ええ。あの店がいいでしょう」

 マクゴナガル先生の目線の先には、「マダムマルキンの洋装店——普段着から式服まで」と書かれた看板があった。
 ミーシャは頷きながら、先生の言葉に耳を傾ける。

「あなたのその様子じゃ、魔法使いと話すことに慣れたほうがいいでしょう。私は店の外にいますから、一人で行ってきなさい」

 諭すように言われ、ミーシャはごくりと喉を鳴らした。
 マダム・マルキンの店も、さきほどのグリンゴッツのようになんともいえない緊張感で溢れていたら……。

 逃げ腰気味で店の中に入ると、愛想の良さそうなずんぐりとした魔女が出迎えてくれた。これでもかと言うほどの、藤色ずくめの服を着ている。マダム・マルキンだ。

「お嬢ちゃんもホグワーツ?」

 おおらかな声で言われ、ミーシャはどきまぎして口を開いた。

「あー、はい。その……制服、もらえますか?」
「ええ、もちろん。全部ここでそろうんですよ。ほら、あそこにいる子もホグワーツです」

 見ると、丸顔の男の子が踏み台の上に立っていて、もう一人の魔女にローブをピンで留められていたところだった。

 マダム・マルキンはミーシャをその隣の踏み台に立たせるなり、ローブの裾をあわせてピンで留め始めた。くすぐったくてモゾモゾと体をひねるミーシャを、マダム・マルキンはがっちりと抑えている。

「お嬢ちゃんは華奢ですねぇ」

 言いながら、マダム・マルキンは慣れた手つきで採寸をしていく。
 華奢とはいえ、ミーシャは隣の男の子と背丈がそれほど変わらないようだった。
 ミーシャが体をよじらせて男の子を見ると、男の子は遠慮がちにこちらを眺めている。

 ここは自分から話しかけるべきだろうか。とはいえ、恥ずかしくて、そんなこと出来そうもない。
 おどおどしていると、男の子の方から声をかけてきてくれた。

「……やあ。僕、ネビル・ロングボトムって言うんだ。君もホグワーツ?」

 初めて同年代の子に話しかけられた……!
 興奮で頬をうっすら染めると、ミーシャはなるべく聞き取りやすいように、ゆっくり話し出した。

「あー、うん。私はミーシャ・ライリー。……よろしくね」

 小さめの声になってしまったが、ネビルは聞き取れたらしく、ブツブツと呟いている。

「ミーシャ……ライリー? うーん、なんだか聞いたことがあるような……」

 きょとんとして、ミーシャは目をしばたたかせた。

「そ、そうなの? 私、今日ここに来るのさえ初めてなのに」
「じゃあ、僕の勘違いかな? 僕も今日はばあちゃんに連れられて来たんだ。ばあちゃんは今、教科書を見ているところなんだけど」

 ネビルは、親しみやすい雰囲気の男の子だ。大の大人の魔法使いを相手にするよりも、ずっと気持ちが落ち着く気がした。
 緊張が解けたからか、くすぐったさからか、ミーシャは顔をほころばせた。

「おばあさんは魔女なの?」
「うん。でも、僕の家族はずーっと僕のことをマグルだと思ってたみたい。八歳になるまで、何にも起こらなかったもんだから。でも、八歳になって二階の窓から落ちた時に、ようやく力を発揮したんだ」
「どんな風に力を発揮したの?」
「うんとね……庭から道路まで、鞠みたいに弾んだんだ」

 その様子を想像し、ミーシャは思わず吹き出してしまった。
 ネビルは照れたようにはにかみ、頭をかいた。

「君はどんな風だったの?」
「私は……花の種類がいきなり変わっていたり、急に知らない場所に移動していたり……。あ、あと、急に人を笑い出させたこともあったかなー!」
「へえー、僕よりもぜんぜんすごいや! 君ならすごい寮に入れそう。僕は駄目だなぁ。でも、ハッフルパフでもいいんだ。あそこは優しい人が多いって聞くし、居心地がよさそうだもの」

 ハッフルパフについてミーシャが質問をしようとすると、ちょうどネビルの採寸が終わったようだった。
 ネビルは踏み台から降りると、思い出したようにミーシャをくるりと振り返る。

「じゃあね、ミーシャ。またホグワーツで!」
「あー……うん。ホグワーツで会おうね!」

 ミーシャが手を振ると、ネビルはバタバタと店から出て行った。

「ホグワーツかー……」

 話し相手がいなくなり、急にくすぐったさが復活してきた。
 マダム・マルキンの手を握り、無意識に振り払おうとしながら、ミーシャはぼんやりと「魔法族」のことを考える。

 マクゴナガル先生も、あのネビルも、魔法族の人たちは、ミーシャがまだわからないことを口にする。
 今まで知らなかったとはいえ、ミーシャも「魔女」の一人なのだ。早く皆に追いつきたい。
 そう思うと、ますますホグワーツに行きたい思いが募るのだった。

 そうして、ようやく採寸を終えてミーシャが店の外へ出ると、マクゴナガル先生はいつの間にかタータンチェック模様の缶を片手に抱えていた。ミーシャが店にいる間、ダイアゴン横丁のどこかで買ってきたらしい。

 ミーシャが尋ねるまでもなく、マクゴナガル先生は缶の蓋を開け、中身を見せてくれた。中には、ビスケットがぎっしりと詰まっている。その香ばしい香りに、ミーシャはじっと中を覗き込んだ。

「……仕方がないですね」

 マクゴナガル先生はぼそりと言い、どこからともなく小さめの缶を取り出した。またしてもタータンチェック模様の缶だ。そうしてビスケットの缶からクッキーを取り出し、きわどい手つきで小さめの缶に移していく。

 ビスケットを詰め終えると、先生はミーシャに缶を差し出した。

「ホグワーツに向かうまでの間、車内販売で無駄遣いしないように」

 なるほど。このビスケットをあげるから、お菓子でお金を無駄にするなということか。
 ミーシャはなんだか愉快になってにっと笑うと、お礼を言って缶を受け取った。

 マクゴナガル先生はコホンと咳払いすると、再びスタスタと歩き出した。歩きながら、ふと思い出したようにミーシャを見る。

「先ほどの店では、男子生徒と話してましたね」
「ネビル・ロングボトムって言っていました。おばあさんと来た、って」

 心を躍らせてミーシャが答えると、先生もなぜか瞳を輝かせた。

「ロングボトム……! 彼女と会うのは久しぶりです」
「あの、先生。ネビルは男子でしたけど」
「ネビルのことではありません。彼の祖母のことです」

 なんだ、とミーシャは胸を撫で下ろした。

 ホグワーツへ行けば、ネビルだけでなく、他にも色々な子に出会えるだろう。
 そのことを考えると、胸が高鳴って仕方がないのだった。

〜つづく〜

☆アズカバン放送まであと一週間!
その前に一度更新したかったので、出来てよかったです^^
3月に「連続で放送すればいいのに」と思っていましたが、
案外早くアズカバンの放送日がやってきました。

今回はネビルも登場させられたし、書いていて楽しい話でした。
誤字・脱字はのちほど修正します!