二次創作小説(紙ほか)
- Re: ハリー・ポッターと無名の生き残り 第六話更新中! ( No.79 )
- 日時: 2013/08/15 11:41
- 名前: プリア ◆P2rg3ouW6M (ID: IsECsokC)
マクゴナガル先生は、ダイアゴン横丁で数ある喫茶店の中から、薄汚れて人気の少ない喫茶店を選んだ。若いお客は少なく、年老いた魔法使いや魔女が静かに話しこんでいる。
ミーシャは先生と向き合って座ったものの、天井からあの虫が降ってこないか心配だった。
落ち着かないミーシャとは正反対に、マクゴナガル先生は沈んだ表情をしている。
「……さて、何から話せばいいのでしょう……」
ミーシャは迷わず、ハリー・ポッターの名をあげた。
「ハリー・ポッター! ハリー・ポッターのことが一番知りたいです」
「彼のことを話すにしても……何から話してよいか」
もしかしたら、さまざまなことが糸でほつれあっているのかも……。
ミーシャは考え、ふとオリバンダー老人の話を思い出した。
「先生……オリバンダーさんが、『名前を言ってはいけないあの人』って言ってたんですけど……。その人がハリー・ポッターを有名にしたって。そして、私も」
マクゴナガル先生は、ゆっくりと目を見開いた。
「そうです。ことの始まりは彼なのです。『例のあの人』……」
「どうして名前を言わないんですか?」
「それだけ恐れられているということです。けれど、あなたは彼の名を知らない……」
マクゴナガル先生は、目を閉じた。
「……あなたの前で彼の名を言わないのは、失礼に値しますね。 ——彼の名は……ヴォルデモート」
「ヴォル……?」
「この魔法界では、彼の名は安易に口に出さない方がいいでしょう」
先生は、小さく身震いしたかのように見えた。
「魔法使いにも、よい魔法使い、悪い魔法使いがいることはわかりますね? もう二十年も前になります。彼は、闇の魔術の道に走った一人の魔法使いでした。……今思い出しても、恐ろしいほどの暗黒の力です。彼はその強大な力で、自分の仲間を集めていきました。……手下をね」
ミーシャは、ごくりと喉を鳴らした。
「誰を信じていいのかわからない。見ず知らずの魔法使いと付き合うなど恐ろしくてできないほど、彼の力は私たちのすぐそばまで及んでいたのです。立ち向かうものは皆命を奪われ……彼が私たちの世界を支配していくようになりました。魔法省さえも」
「どこにも安全な場所は……なかったんですか?」
「残された数少ない安全な場所、そのうちの一つがホグワーツでした。ホグワーツの校長であるアルバス・ダンブルドアは、彼も危害を加えようとは思わないほど、すばらしい力の持ち主ですから」
実感がわかないのに、その時の魔法界の恐怖や混乱が、骨まで染み渡るようだった。
「あなたが知りたがっているハリー・ポッターのご両親は、ダンブルドアと親しい魔女と魔法使いでした。その二人を、彼は片付けようと思ったのか……何を思ったのかわかりませんが……十年前のハロウィーンの夜、ポッター夫妻の家に彼が現れたのです」
「まさか……それで……」
「……彼は……二人の命を奪いました。そして、ここからが謎なのです。彼はハリー・ポッターも殺そうとしたはずなのですが、失敗に終わりました。当時有力だった魔法使いたちが、何人も彼に立ち向かい、殺されていったというのに。ハリーは額に傷を受けただけで、命を奪われることはありませんでした」
「だから、生き残った男の子なんですね」
ミーシャは言い、ダイアゴン横丁の様子を思い出しながら口を開いた。
「でも、今はもう、魔法界は恐ろしい所に見えませんけれど……」
「ええ。ハリーの命を奪うことに失敗した後、彼は行方不明になっているのです。死んでしまったのではないか、という者もいますが……とんでもない話だとダンブルドアは言います。彼は弱っているだけだと。わかっていることは、ハリー・ポッターの何かが、彼を追い払ったということだけ。だから、魔法界でハリー・ポッターの名を知らぬ者はいないのです」
「ハリー……ポッター……」
ミーシャが呟くと、マクゴナガル先生はじっとミーシャを見つめた。
「……生き残った子というのは、彼だけではないのですよ」
不意に、クィレル先生の言葉が、脳裏に蘇ってきた。
——「そう、ミーシャ・ライリー……さん。さきほど、ハリーに、あ、会いましたよ。あ、あなたと同じ、あの夜に、生き残った……」
唇が、震えた。
「それって……もしかして……」
「あなたのご両親は、ハリーのご両親と親しかったのです。二人は、ポッター夫妻が命を狙われると知って、それを阻もうとしたのか……今となっては二人の行動はわからずじまいですが……シュウとチェリーは、ポッター夫妻の住む村を訪れ……彼に……」
声をくぐもらせ、マクゴナガル先生は黙り込む。
胸に熱いものが込み上げてきて、ミーシャは何度も瞬きをした。
「……それで……?」
「彼は……二人の命を奪いました。ポッター夫妻を襲う前に。ですが、シュウとチェリーはその時、あなたを——ミーシャも連れていたのです。なぜ連れてきたのか、それは二人にしかわからないことですが……」
「私もその瞬間、ヴォル……と対面していたということですか?」
「そう。でも、彼はあなたの命は奪いませんでした。これまで何人もの魔法使いたちの命を殺めてきたというのに、あなたは彼の手を逃れたのです。」
思っていた話と違い、ミーシャは目を白黒させた。
「でっ、でも、私……なんにも、ひとっつも覚えていなくて……」
「当たり前でしょう。あなたは一歳だったのですから。ハリー・ポッターも、そんなことは一つも覚えていないと思いますよ。ハリーもあなたと同じ、つい最近までこの世界のことを知らなかったのですから」
マクゴナガル先生は言い、その瞳に一瞬敬意の光を浮かべた。
「世間では、あの人を倒したといわれるハリー・ポッターが有名です。生き残った男の子ですからね。でも、知る人なら皆、生き残った子が一人ではないことを知っています。ミーシャ・ライリー……あなたも生き残った女の子だということを」
ミーシャは詰めていた息を吐き出し、両手で顔を覆った。
とてもじゃないけれど、自分のこととは思えない。
ようやく「魔法」に実感が湧いてきたというのに、魔法界の歴史については、まだまだ伝説を聞かされている気分だ。
……ハリー・ポッターは、大変だろう。
私と同じ、つい最近まで魔法界の存在など知らなかったのに、いきなり有名人扱いで。
魔法は実在のものだ。当然、良い部分も悪い部分も存在する。マグルが考えているより、ずっと深く、恐ろしい部分が多くある世界なのかもしれない。
それでも、魔法に胸をときめかせずにはいられないのも事実だ。楽しいことがあるなら、今はそれでいいのかもしれない。「あの人」は、今はいないのだから。
ミーシャは顔から手を離し、マクゴナガル先生を見つめ返した。
「話してくれて、ありがとうございました」
先生は頷き、口元でかすかに微笑した。
「あなたのことだから、もっとパニックになるんじゃないかと思っていましたが……シュウの血もついでいるのですね」
「お父さん……?」
「あなたのお母さんは騒がしい人でしたが、お父さんは冷静でした。大事なときはね」
おじさんたちから両親の話など滅多にきかされなかったから、こういう話を聞くのは、とても温かい心地になる。
ミーシャは肩をすくめ、小さく微笑んだ。
〜つづく〜
☆炎のゴブレットまでに一つ更新したかったので、よかったです^^
最近は野球にハリポタ映画と、テレビに噛り付いてばかりですw
