二次創作小説(紙ほか)

Re: ハリー・ポッターと無名の生き残り 第六話更新中! ( No.86 )
日時: 2013/10/28 17:18
名前: プリア ◆P2rg3ouW6M (ID: dE592tWd)

 喫茶店の外に出ると、ようやく陽が傾きかけてきた所だった。ダイアゴン横丁の店の屋根が、夕日を浴びて赤く輝いている。ゆったりとした空の流れとは対照的に、通りは魔法使いたちで今だ賑わっていた。

 長いようで、短い一日だった。
 今日一日で、いくつ魔法界について学んだだろう。マグルよりもずっと知識をつけたはずだけれど、まだまだ学び足りない。まだずっと、魔法界にいたい。

 帰りたくないのに、帰らなければならない時間になったことが、空気を通して伝わってきた。
 ふいに帰ることを思うと不安に思い、ミーシャは言った。

「あのー、先生、どうやって瞬間移動で帰ればいいんですか?」
「あなた一人で帰すわけないでしょう。送っていきますよ」

 マクゴナガル先生は言い、思いだしたように付け加えた。

「始業式は9月1日ですけれど、あなたはイギリスに行く手段がありますか?」

 そうか。私は日本の子桜家に住んでいるのだ。ホグワーツはイギリスにあるというのに、国境線を越えて学校へ通わなければいけないなんて。

 ミーシャは考えをめぐらせ、ふとメアリーおばさんとマーチおじさんのことが思い浮かんだ。毎年八月に一週間、イギリスへ帰る二人に頼めば、その時に連れて行ってもらえるかもしれない。ただ、二人はすでに今年の予定は決めてしまっているはずだから、この案は実現するとしても来年からだろう。

 顔をあげて、ミーシャはマクゴナガル先生を見上げた。

「来年からなら……たぶん、自分でイギリスに行けると思います。でも、今年はちょっと……」

 口を濁らせてごまかすように笑うと、先生は予想通りといった反応をした。

「そんなことだろうと思いました。9月1日に、またあなたを案内しなければなりませんね。その時に切符も渡しましょう」
「切符って……それが魔法になんの関係があるんですか?」
「まったく、あなたは……。駅からどうやってホグワーツに行くのです?」

 そもそも、ミーシャはホグワーツがどこにあるのか知らない。
 ぼんやりと想像していたことを、ミーシャはためらいもなく口にした。

「箒に乗って行くとか……魔法の扉をくぐるとそこはもうホグワーツとか……」
「はぁ……マグルはいったいどんな教育をしているのでしょう」

 心底呆れたというようにため息をつき、きっぱりと説明する。

「ホグワーツには、汽車で向かいます。そこで友達も出来るでしょう」
「ど……どうかなぁ。私、初対面の人とはあまり……」
「慣れれば素が出るでしょうね。半日前に会ったばかりの私にも、あなたはまったく……」

 マクゴナガル先生は、緑色の瞳をおかしそうに輝かせた。
 ミーシャもはにかんで笑うと、先生は急に姿勢を正す。

「とにかく。9月1日になるまでには、まだ時間があります。それまでに、今日買った教科書を読んでおくことです。あなたは魔法についての知識がゼロに等しいのですから、しっかり予習しておくこと」
 
 いかにも「教授」らしくなったので、ミーシャは背筋を伸ばした。
 魔法族にとっては、そこら辺にある魔法は当たり前のものなのだろう。ミーシャが算数を勉強するくらい、普通のことなのかもしれない。
 しかし、ミーシャにとっては違う。教科書といえど、ごく普通に読書をする気分で読めるだろう。

「大丈夫です。予習なんて今までしたことないけど、魔法なら!」
「そういう生徒が一番心配なんです、毎年」

 先生は頭に手を当てると、息を吐いた。

「汽車は9月1日の十一時発ですから、三十分前には駅についていなければなりませんね。ロンドンには九時すぎには着いていた方が無難ですし、時差のことを考えると……日本には2日、夜中の一時に迎えに行くことになりますが……」
「いちっ、いちじ!?」
 
 いつも昼の十一時近くまで寝坊するとはいえ、宿題が終わらなくてパニックになる時以外は、遅くても夜の十時過ぎには寝てしまう。夜中の一時なんて、おじさんが寝る時間じゃないか。

 いや、でもホグワーツのため、マグル生活脱出のためだ。
 なんとか計画を立てて、イギリスの時間に合わせてみよう。

 ミーシャは一人で気合を入れると、頷いた。

「マグル生活脱出計画でなんとかします!」
「頼もしい話ですね、ええ」

 マクゴナガル先生は、棒読みで答えた。



 再びマクゴナガル先生とともに子桜一家のログハウスに戻ってくると、どうやら朝のようだった。
 どっさりと荷物を抱え、ミーシャはあたりを見回してみる。

 辺りは朝霧に覆われ、涼やかな空気に鳥たちの鳴き声が響いていた。視線を落とせば、桃色のあざみがあちこちに咲いている。いつの間に花を咲かせていたのだろう。

 葉から水の雫が滴り落ち、ミーシャは肌寒さに身震いした。

 ダイアゴン横丁に比べると、朝とはいえ、本当に静かだ。

 謎の瞬間移動の間、今度こそ目を開けていようと思ったのに、気がついたら反射的に目を閉じてしまっていた。結局、またしても赤い何かが目の端を通っただけだ。

 朝霧の湿気に、マクゴナガル先生は顔をしかめた。

「いいですか。2日の夜一時ですからね。また不審者扱いされるのはごめんですから、ミーシャが外に出て待っていてください」
「わかりました」

 夜中、外で待っていると、暗がりの中からいきなり魔女が現れるなんて、まるでどっきりのようだ。
 
 笑いそうになったのもつかの間、不意に寂しさが込み上げてきた。あと何分もしないうちに、先生とも別れなければならないのだ。一度考えると、じわりじわりとその思いが広がり、ミーシャは手を握り締めた。

「よ……予習、ちゃんとします。特にあの、変身術が面白そうなので」
 
 マクゴナガル先生はミーシャ見つめ、かごの中のふくろうに目を移した。ふくろうは、まだぐっすりと眠っている。

「その子に名前をつけるのも忘れないことですね。さ、あのマグルたちがどんな顔をするか、見物でしょう」

 ミーシャは努めて笑うと、名残惜しげにマクゴナガル先生を見やった。今日一日、マグル同然の自分の面倒を見てくれた先生を。そうして、ぺこりと頭を下げると、ミーシャはログハウスの扉へと向かう。
 
 扉を開ける寸前、空気が弾かれたような音にぱっと振り返ると、マクゴナガル先生の姿は消えていた。

 私もいつか、あんな風に瞬間移動ができるようになったらいいな。
 リサコの前に突然現れて、腰を抜かさせてやりたい。

 一人苦笑いし、ミーシャはログハウスのドアノブに手をかけた。



☆第六話、ようやく終わりました……長かった……orz
日本はイギリスより八時間進んでいるので、計算の結果、
マクゴナガル先生は真夜中に迎えにいくことになりましたw

今週は不死鳥の騎士団が放送されますね! 楽しみです^^
だいぶ忙しくなってきたのですが、
第七話からはいよいよホグワーツについての話が始まるので、
なんとか……なんとか早めに更新したいです。