二次創作小説(紙ほか)

Re: 黒子のバスケ【私にとって、君は光】 ( No.2 )
日時: 2013/03/17 01:18
名前: 詩隈伊吹 (ID: PNtUB9fS)

第1Q【桜が舞った、君と出逢う】


あたしは、チームを辞めた。

そう実感したのは、親の失望感まるだしの表情を見た時。
親に話して了承を得るまで2ヶ月。
毎日の様に、あたしは説得された。
だけど、一度決めた事をまげるほどあたしは落ちぶれていない。

チームが練習していた体育館の帰り道。
いつもは親の車で帰るが、今日は一人歩き。
それは当然で、あたしはチームを辞めたのだから。
親が監督のバスケチーム。
学校がおわればすぐ向かった体育館。
もう、あたしはチームの選手じゃない。
ずっと、心の中で何度も呟く。
だけど、いつもはこの時間バスケをしているからだろうか。

バスケがしたい。

この衝動にかられてしまう。
帰り道を少し変更して、寄り道して行く事にした。
行き先は、バスケコートのある公園。

只今の時刻は5時過ぎ。
春が近づいてきたため、日がくれるのは遅い。
まだ少し明るい外。
あたしは、バスケコートに脚を踏み入れバックから練習用のバスケットボールを取り出して、ドリブルをしはじめる。

ダムダムと、あたしがドリブルする音だけが響いている。
サワサワと、少し冷たい風が頬を撫でる。
風とともに散った、桜の花びらが美しく宙を舞う。

そして次の瞬間、風を切った。

右、左、右。
ステップを踏み相手を翻弄させるように打つドリブル。
頭の中で、あたしは選手と対峙している。
選手はあたしの手の中のボールを取ろうと手を伸ばすが、あたしは軽々しくその手を逃れる。
そのまま、一気に抜く。

一直線にゴール下に向かうあたし。
誰にもとめられないスピード。
これが、あたしの武器。

ガコンッッッ

腕を伸ばして、そのままボールを突っ込む。
ダンク。
ゴールにつかまって、ブラブラぶら下がってから地面に降りた。

バスケをしてなんとなく、心が満たされた。
それと同時に、胸が苦しくなる。

(参ったな、またか)

最近だ。
バスケをし終わったあとの胸の痛み。
確か最初に感じたのは、自分がバスケを自分の意思でやっていなかったと分かった時だ。チクリとした痛みがだんだん身体中にひろがって、バスケットボールが持てなかった。

「っ……ふっぅ……」

あまりに苦しくて、その場にうずくまった。
はぁはぁと、荒い息を繰り返しながら胸を押さえる。
いつもならすぐ収まるはずの痛み。
今日に限って、酷く長い。

(どう、しよ。本格的にやばい)

頭がぼーとする。
意識が飛ぶ感じがする。
すーと力が抜けそうになった時。

「あの、大丈夫ですか?」

肩に暖かいモノが触れて、そんな声が聴こえる。
ふっと、顔をあげるとそこには見知らぬ顔。
綺麗な肌と水色の髪の毛。そして気遣わしげな瞳。

その人の顔を見た途端。
あたしの胸の痛みはなくなった。



あたしと、彼の間に風で吹かれた桜の花弁が美しく、舞った。


『君と出逢う。14歳の春の事』