二次創作小説(紙ほか)

Re: 黒子のバスケ【私にとって、君は光】 ( No.30 )
日時: 2013/03/19 22:45
名前: 詩隈伊吹 (ID: LfHD8N1N)

第12Q【緑、印象変化】


あたしが、彼等『キセキの世代』の個人練習相手になって2週間たった。
もはや、部員と言っていいほどあたしはバスケ部の練習に参加している。
赤司は、個人練習の時だけ相手をしてくれればいいとか言ってたけど、なにもしないでいるのは身体もなまっちゃうので、一軍バスケ部の練習メニューをこなしている。

そんな、ある日のこと。

「時雨沢、シュート練習に付き合って欲しいのだよ」
「あ、いいよ」

初めて、緑間くんに練習相手を頼まれた。
びっくりした。あたしなんかに練習相手を任せてくれるなんて。
緑間くんはいつも一人で練習しているから、なんか、真面目な硬い人で、頼られることはないんだろうなぁと思っているから。

彼の武器はスリーポイントシュート。

正確に、確かにボールをネットに通す。
あたしはどちらかというと、スリーは苦手だ。
普通のシュートより、入る回数が減る。
最近、緑間くんのシュートはキレが増した。
だけどシュート届くのはきっちりスリーポイントラインの所から。

「ねぇ、ここら辺からやってみよ」
「……ここか?」
「うん。こう、ためて……ほっ!」

スリーポイントラインから1メートル離れている場所からボールを放つ。
あたしの手から放たれたボールは、綺麗な弧を描きネットに吸い込まれる。

(今日は、調子がいいかな)

「……改めて、すごいのだよ。時雨沢のシュートは」

緑間くんは感心したようにあたしを見つめていってくる。
真顔で言うから、なんか、恥ずかしい。

「いや、まぐれ。だって、いつもなら5本中3本が限界だもん」

目をそらしながら言う。

「そうか。時雨沢、お前は何座だ?」
「へ?星座の事か?」
「そうなのだよ」
「魚座ですけど」
「なるほど。さすが、おは朝なのだよ」
「……おは朝?」

確か、朝の情報番組にそんなものがあった気がする。
てか、さすがおは朝?

「どいうこと、緑間くん」
「あぁ。今日のおは朝の占い。魚座は総合第2位なのだよ。しかも、ラッキーアイテムは、黒のリストバンドなのだよ」
「リストバンド……これ?」

朝から右手首についてあるリストバンド。
これは、小さい時父さんに買ってもらったもの。

あたしの中では、父さんの記憶は少ない。特に幼少時のときは。
いつも、母さんがあたしの面倒をみていたし、当時現役のプレーヤーだった父さんは、いつも外国にいた。そのため、会えるのはお正月のみ。
このリストバンドを貰ったのも、お正月だったと思う。試合のときに必ずつけていたリストバンド。幸運を運んでくれると言っていたような気もする。

「そうなのだよ。やはり、おは朝はあたるのだよ」
「……え?なにそれ。あたしがシュート決めたのはラッキーアイテムを持っていたから?」
「当たり前なのだよ。ちなみに、俺の蟹座のラッキーアイテムはクマさん縫いぐるみなのだよ。ほら、そこにいるだろう?」

眼鏡を直しながら、彼は体育館のステージの上を指さした。
指の先を辿り、彼のラッキーアイテムとやらを見つめる。
そして、あたしは吹き出した。

可愛らしいふあふあのテディベア。
ふあふあのっ……可愛いっ……て、テディ……

「?どうしたのだよ。時雨沢、震えているのだよ」
「いっ……いや、だいじょ、ぶ……」

かなり、大きいテディベア。
多分、140センチはいく。
それを、彼はっ、朝家から学校まで持ってきたと?!
緑間くんがテディベアを抱えて学校にきている姿を想像すると、もう笑いが止まらない。

「……なにを笑っているのだよ」
「わっ、笑ってなんかっ……くくっ……」
「しっかり、わらっているのだよっ!!」

緑間くんが叫ぶ。
顔を真っ赤にして。
この時、彼の印象がガラリとあたしのなかで変わった。


『彼はとても、可愛い人』