二次創作小説(紙ほか)

Re: 黒子のバスケ【私にとって、君は光】 ( No.41 )
日時: 2013/03/20 17:47
名前: 詩隈伊吹 (ID: S78i8iJk)

第15Q【突然止まった運命】


突然、本当に突然。
大輝は、才能を開花させた。


「うそ、だろ……」

涼太の呆然とした声が聞こえた。
あたしは、その声に答える事ができない。

「……青峰が、梓に勝っただと……?」

真太郎が呟いた。

全中を2連覇という輝かしい結果を残して終わらせた帝光中バスケ部。
いままでずっと、あたしはある理由でバスケ部にいなかった。
アメリカに行ってたのだ。
だから、久しぶりにバスケ部にきて全中2連覇の事で大輝を褒ようとした。
大輝のおかげで勝ったと他の選手たちから聞いたから。
だけど、大輝にあってそうそう言われた事。

『1on1、しよーぜ』

いつもの無邪気な彼の顔は、どこにもなかった。

「っはぁ!はぁっ!はぁ……」
「……はぁ、はぁ、はぁ……」

10対19。
あたしが10本。大輝が19本。
大輝が、強くなった。
それはすぐわかったけど、こんなに点数に差をつけられるとは思わなかった。
でも、今の大輝の強さは異常だ。

「ははっ……梓も、そんなもんなのか?」
「……大輝」

薄く笑った大輝。
なんでそんなに苦しそうなんだよ。
なんで?あたしに勝って嬉しいんじゃないの?

「じゃ、俺帰るわ」

そう言って、あたしの隣を通り過ぎる。
あたしはただ、そこに立っていた。

「梓……大丈夫ですか?」

テツヤの気遣わしげな声が聞こえた。
でもあたしは、顔をあげることができなかった。
すごい違和感を感じた。
大輝が、すごく、遠く感じた。

「梓……」
「梓っち……」
「あずちん……」
「……」

「ごめん、みんな」

どうしてだろう。
今、すごく。
泣きたい。

「あっ、梓っち!」

あたしは、体育館を飛び出した。
外は雨が降っていた。
ザーザーザーザー、あたしの今の心のよう。
あたしは、全身雨に濡れる。
身体が冷えていくような気がしたけど、あたしは雨にあたるのをやめなかった。
今は、頭を冷やしたい。

「梓、濡れます」

くいっと、腕を引っ張られた。
声からしてテツヤだ。
嫌だな。
今、テツヤに会いたくない。
だって、会ったら……

「梓……」
「…っ!ぅ…テツっヤぁぁ」

ポロポロ涙が零れた。
ぬぐいきれない涙が、あたしの目から溢れ出る。

「梓っ……!」

キュウッと、抱きしめられた。
温かい感触があたしを包む。
すごく安心する感覚。
だから、もっともっと涙がでる。

大輝が変わった。
彼は、バスケを好きじゃないのかな?
大輝とやってて、思った。
あの頃の自分のようで。
すごくすごく苦しかった。
なんで?
あんなにバスケが好きだった大輝が、どうして?

「うっ、うわぁぁぁっっ」

悲しい。
苦しい。
彼は、もう、
バスケを楽しめないのか。
彼もあたしを、救ってくれた人なのに。

『おい、梓!1on1しよーぜ!』
『うおっ!?すっげーダンクっ!』
『俺はバスケが大好きだ、そりゃ堀北マイちゃんもだけどな!』

楽しかった、彼と一緒にするバスケ。
勿論、バスケ以外も。
テツヤとすごく仲が良くて、少し羨ましかったけど、同時に

嬉しかったのに。

あたしは涙を流し続けた。
これから彼が受ける苦しみをわかったから。
それがすごく残酷なことも。

分かっていたから。


『神様は、彼等をどうしたいんですか』