二次創作小説(紙ほか)

Re: 黒子のバスケ【私にとって、君は光】第二幕開始! ( No.51 )
日時: 2013/03/23 20:20
名前: 詩隈伊吹 (ID: d9JZZrk4)

第3Q【君に逢いに】


私立誠凛高等学校はあたしが通うこととなる高校。
新設校で、2年生までしかいない。
あたしがこの高校を選んだ理由は『キセキの世代』が入学しないと思ったから。
みんな、名のしれた強豪校に入学すると思ったから。
あたしは時間が合わず入学式にまにあうことが出来なかった。
だから、転入という形になったのだ。

あたしがこれから一人暮らしをする家。
何故か父さんが一軒家をくれた。アパートは危ないとかなんとか。
引っ越しの荷物はそんなに多くなくて、家具なんかも父さんが全部揃えてあって家に行ったら全部揃ってた。
ここら辺はあたしの前住んでいた家と近いから、地理も詳しい。
まぁ、そこまではいいだろう。いいとしよう。
しかし……

「わふっ!」

当然というように玄関に座っている犬。

「なんで犬がいるーーー?!?!」

ゴールデンレトリバー。
大きい犬だ。
うん。犬。ワンコ。
だから、なんで行ったらワンコがいる。
首についたいるリボンが愛らしい。
プレゼントのつもりだろうか。

(ん……?……わかった。父さんか。)

あたしは苦笑する。
父さんの思いがわかった。
父さんは少し過保護……てか、ものすごい過保護。
あたしが1人でこっちに来て一人暮らしすることを最後まで反対していた。
だから……

「番犬か。君は」
「わふっ」

そうだと言わんばかりに吠える。
ゴールデンレトリバーは、番犬には向かないと思うんだけどな。
でも、少し嬉しい。やっぱり、家に1人は淋しいから。

「よし、君に名前をつけようか」
「わんっ!」

玄関に座り込んで、名前を考える。
というか、この子は女の子だろうか、男の子だろうか。わからない。

「うーん……どうしよう……」
「わふ〜……」

あたしが考えていると、ワンコも考えるように難しい表情をする。

「うーん……可愛い名前がいいかな。カッコいい名前の方が……」
「わふ〜、わぅ〜〜……」

……可愛い。
あたしは我慢ならず、キュッと優しくワンコを抱きしめた。
暖かい。毛がふあふあしていて気持ちいい。

「君、あったかいね……」
「わふ?」

ワンコを抱きしめていたら、彼の事が頭によぎった。

「……テツヤ……」

何も言わずに消えちゃって、怒ってるかな?
嫌われちゃったかな……。
胸が苦しい。

「わふ!」
「へ?……あ、ちょ」

急に暴れ出したワンコにびっくりして、尻餅をついた。

「わんわんわんわんっ!」
「ちょっ!えっ?!なに?」

何か訴えられているような感じ。
てか、まさか……。

「テツヤ……って、名前がいい、とか?」
「わふわふっ!」

ま、じ、で?

「テツヤ」
「わふ」
「テツヤ」
「わふわふ」
「ワンコ」
「……」
「テ……」
「わんっ!!」

マジか。
あたしは苦笑する。
まさか、テツヤの名前を使うとか。

「……もぅ、会うこともないだろうから。いいかな」

自分で言って哀しくなる。
馬鹿じゃないのかな、あたしは。

でも、アメリカにいたって。
バスケをしてたって。
何をしていても、テツヤはいつもいた。
ずっとずっと、あたしの中で……

「梓」

そう言って、微笑む君の顔。
あたしは、ずっとずっと…………


『テツヤ。この名前は、多分一生忘れさせてくれないだろう』