二次創作小説(紙ほか)

Re: 【inzm】空色の涙 ( No.17 )
日時: 2013/05/26 21:00
名前: 志保 (ID: wxZ0SJGK)

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赤かった空はもう暗くなり、空には太陽の代わりに月が綺麗に輝いていた。
部屋には蛍光灯の光しかなく、秒を刻む時計の針の音と紙をめくる音しか聞こえない。

この書庫室に入って一体どれくらいの時間が過ぎたのだろう。
手持ちの本はとうに読み切りこの書庫室にある本に手を伸ばしたのだがつい夢中になってしまった。

ここには古くなった本、資料……沢山の本が埋まっている。
それはもう人に読まれる事が少なくなり、埃を被ってしまっているがとても貴重なのだ。

涼「(彼女はまだいるのか……?)」

そろそろ切り上げないと時間が時間。

キィ——……

扉を開ければ普段は小さく聞こえる音でも酷く響く。

向こうの部屋は暗く、一部の蛍光灯しかついていない。その蛍光灯の下では彼女が黙々とノートにペンを走らせていた。
まぁ……この量を一人でやるとなるとそれなりの時間が必要となるわけなのだが、少し不憫に思えてくる。

空「……お帰りになられますか?」

涼「そうだな……終わりそうか?」

指を示した場所は机の上に積まれた本。
果たしてどうなのだろうか。

空「あ、後は元に戻すだけです……。」

すごい。素直にそう思う。
これだけの量をひとりでやってのけたのだから。彼女を委員長候補に入れてもいい気がする。

涼「そうか。」

戻すのを手伝おうとすれば彼女はそれを制したが「書庫室を貸してもらったから」という事で宥めた。







涼「冷えるな……。」

靴を履き、一歩外に出れば触れる風が冷たい。
まだ5月の上旬、夜になれば昼の暖かさが嘘のように気温が下がってしまう。

涼「正解だったかな……。」

自分の鞄とは別にあるもう一つの鞄を見て思う。
現在の時刻は7時半。外は暗く、夕飯時というのもあって人通りは少ない。
そんな中で男はともかく、女を一人で帰らせるのは気が引けた。
話を聞く限り方向が一緒で乗る電車が同じらしい。




空「おまたせしました……。」

涼「帰るとするか。」

送ってもらう事がまだ不服なのだろう、心なしか不貞腐れているように見える。








空「(これ見つかったら私殺されるんですけど?)」