二次創作小説(紙ほか)

Re: 《イナクロ》カゲロウデイズ ( No.12 )
日時: 2013/04/19 21:11
名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: O59cZMDb)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode

第6話   風鈴





 ふたりが少し行った道に、なにかが立てかけてあった。

——ビルの屋上で工事中 鉄柱落下に注意——

 嫌な注意書きだ。
 輝は立ち止まってそれをながめていたが、風花はうつむいたまま、彼の先を行った。黒猫が気になっているのだろう、不安そうな目だ。あわてて、輝も追いつく。

 道を抜けるときには、なぜか、まわりの人々は、口を半開きにしたまま、上を指さしていた。


 ひやり……


 輝のほおを、冷たい汗が伝った。
 なぜだか、イヤな予感がして、立ち止まった。

 だが、風花はうつむいたまま、輝のとなりをとおり過ぎ、道を抜けてしまった。


 ガランガラン……!


 上で音がして、なにが起こるか予測したときには、もう、遅かった。

 落下してきた鉄柱が、風花の背中から腹までを、みごとに貫通していた。
 舞い上がった鮮血の一滴が、輝のほおを濡らす。

 鉄柱は、満足いかないと言わんばかりに、さらに彼女の体を、上から下へと突き進んだ。風花の顔が、苦痛にゆがむ。
 まわりの者は悲鳴を上げた。どこからか、風鈴の割れる音が響く。

 たまらず、輝は風花に寄ろうと、駆け出した。だが、そのとき。

 ねらっていたのだろう。
 わざとらしいタイミングで、カゲロウが輝とすれ違った。耳元で、彼は。


「夢じゃないぞ。」


 ささやいた。
 そして、風花に近寄れないよう、輝を後ろへつき飛ばす。

 くらんでいく、視界。

 風花が無理に笑い、なにか言っているのが見えた。