二次創作小説(紙ほか)

Re: 《イナクロ》カゲロウデイズ ( No.15 )
日時: 2013/04/21 13:04
名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: O59cZMDb)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode

第9話   賭け





 ガラス越しに見える、塗りかえられてしまった『時計』たち。
 血がつき、本来の『時間』は失われ、すべて、本当に塗りかわっていた。

 笑った時間も、泣いた時間も、怒った時間も、すべて。

 楽しかった時間も、苦しかった時間も、悲しかった時間も。

 ただひとつ、止まったままの、塗りかえられていない『時計』。少女を失った、あの日。
 そう、あの日から……。


(おれ……本当にこれでいいの?)


 誰がやったかは分かっている。
 全部、カゲロウなのだ。

 大切な時間が失われていく輝を見るのを楽しむ、あのカゲロウだ。輝は、カゲロウのわなに、まんまとはまり、けっきょく風花を失う。

 本当に、彼にやられっぱなしで、良いのか?

 あいつを、見返せなくて良いのか?

 最後の『時間』を、あいつに染められても良いのか?

 あいつなんかに、風花を盗られても良いのか?

 いいわけ、ない。
 ゆっくりと、輝はふり返る。赤信号に飛びこんだ彼女と、それを止めようとする自分。


『これが、ラストチャンスだぜ。』


 カゲロウは、そう言いたいのだ。
 ぼんやり見ていた輝の頭に、ひとつの言葉が浮かんだ。




 これが、最後の賭けなんだ。