二次創作小説(紙ほか)

Re: 《イナクロ》カゲロウデイズ ( No.6 )
日時: 2013/04/16 20:58
名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: O59cZMDb)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode

第2話   黒猫





「……えへっ。」


 急に、風花が笑った。輝はびっくりして、彼女をふり返る。風花は、なぜか満面の笑み……いや、にやにやのほうが近い笑みをたたえていた。


「ど、どうしたの? 急に。」

「えへへ。輝と一緒にいられて、幸せだなぁって。俺たち、つきあい始めて1年じゃん?」

「あ……。」


 そういえば、風花の言うとおりだ。

 去年の初夏。まだ春っぽい暖かさが残る日に、部活が終わり、誰もいなくなった部室で、いきなり告白された。
 いま思いかえすと、パニックになってまっ赤になっていた自分が、ちょっと恥ずかしい。


「風花、あいかわらず一人称は、俺のまんまだけどね。」

「あ、言ったね? けっこう気にしてるのに……。あ、でもでも! しゃべりかたは、すこしマシになったでしょ?」

「うん、女の子らしくなってきてる。」

「えっへん。やればできるもん。」


 胸を張る風花は、なんだか可愛く見えた。


「じゃあ、そろそろ映画館、行こうか。」


 風花は、黒猫を腕の中にだきながら、立ち上がった。抱かれた黒猫は、ふわっとしっぽをひと振りすると、風花の体に、自分の体をすりつける。


「もう、どうしたの?」


 笑って黒猫ののどを撫でる風花。なんとなく、黒猫が輝の気を重たくしたが、立ち上がった。

 今日は、映画を観るために、集合場所として公園に集まった。

 移動中、風花がきょとんとした顔で。


「そういえば、今日見える映画って、なんだったっけ?」

「もう忘れたの? 『戦国雷牙』でしょ。言い出しっぺは風花じゃないか。
 題名が漢字だけでカッコイイ! って言ってさ。」

「ごめん、ごめん。」


 風花はそう言いながらも、黒猫の頭を撫でていた。撫でられる度に、黒猫は気持ちよさそうにしっぽを振る。


「あ、あのね、ひか……あっ。」


 風花があわてて駆け出した。その先には、風花の腕から逃れた黒猫。


「待って、猫ちゃん!」


 風花は、黒猫だけを見て、前も見ず走っていった。

 あれ……、この先に、なにかなかったっけ。

 輝は、冷や汗を流した。