二次創作小説(紙ほか)

Re: 《イナクロ》カゲロウデイズ ( No.7 )
日時: 2013/04/18 17:32
名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: O59cZMDb)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode

第3話   トラック





 チラチラと、視界のはじの方で、緑色の明かりが点滅した。風花の向こう側にある。
 あれは、たしか……。

 信号機。

 だけど、いまの風花の走るスピードなら、いくら点滅中でも、なんとか向こうまで渡れる。それに、この信号は、点滅してからが、他のものより長めなのだ。


(……でも。)


 風花の髪をおおう、ほんのりとした、ちょっとすっぱいレモンの香り。それが遠くに行ってしまう度、なんだか不安を覚える。


「もーう、はやいなぁ……。」


 息が切れてきた風花は、速度をゆっくり落としていく。輝は、ほっと胸を撫で下ろした。
 彼女は、中身はとても頭が良い。彼女なら、ちゃんと、自分が渡れるか渡れないかを、冷静に判断できるだろう。
 いまなら、無理だ。

 だが。

 風花は、黒猫に追いつくこと以外、なにも考えてはいなかった。

 再び、冷や汗がどっと吹き出す。

 ダメだ。このままじゃ……!


「ダメだぁ!」


 輝は、さけんだ。
 彼女は飛びこんだのだ。

 赤の信号機の元に。


 パッパーッ


 トラックのクラクションとブレーキをかける摩擦音が、鳴りひびいた。それでやっと気づき、風花はふり向いたが。

 遅かった。

 通りかかったトラックは止まれなくて、風花の体を、容赦なくひきずった。
 パッと赤い鮮血が、道路一面をいろどり、輝の服を汚す。

 生臭い、血の香り。
 風花の、髪の香り。

 ふたつの香りが混じり合い、嫌な香りを生み出した。輝はそれをかぎ、思わずむせ返る。

 顔を上げた輝の目には、向こう側の道路が見えた。