二次創作小説(紙ほか)

プロローグ transformed world ( No.1 )
日時: 2013/04/14 16:46
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
プロフ: これが、少年の人生が外れた日——

 わけが分からなかった。一体全体、この世界はどうしてしまったのだろうか。自分の目を疑うというか、目の前の現実を受け入れられない。
 ついさっきまで、普通に帰宅をしていたはずだ。学校へ行き、授業をこなし、部活を終えて、すっかり日も暮れた帰路に着く。ここまでは何もおかしなことはない。いつものローテーションをこなしているだけだ。なのに、
「何、これ……!?」
 見たこともない生き物が視界を埋め尽くさんばかりにはびこっていた。犬猫でも驚くが、そこに存在しているのはただの犬や猫ではない。火を吹いたり、パチパチと火花を散らしたり、体が凍りついているものまでいる。およそ現実ではありえない生物、そして現象だ。
 空にも同じように奇怪な生物がいる。鳥のようなもの、虫のようなもの、挙句の果てには金属の板やUFO染みたものまで浮いていた。
「一体、何が……」
 視界いっぱいに広がる未知の生物に、今までにない恐怖を感じた。今まで何度も思ってきたが、今以上に怖いと思ったことはない。
「と、とにかく逃げないと……」
 そう思って振り返るが、さっきまでは何もなかった道には、同じように謎の生物がはびこっていた。気付けば、囲まれていた。
 この生き物たちはまだ、襲ってくる気配はない。が、いつ飛びかかって来るかは分からない。
「ど、どうしよう……」
 一本道なので前後を塞がれると身動きが取れない。そうしてもたもたしていると、生き物たちの一匹がこちらを向いた。
 全体的に黒色の犬か狼に似た生き物だ。頭部には髑髏のような模様か何かがあり、目つきは鋭い。
 その犬のような生き物は唸り声をあげてこちらを睨んでいる。今にも飛びかかってきそうな気配を放っており、姿勢を少し屈め——飛びかかってきた。
「うわぁ!」
 咄嗟に鞄を盾にして九死に一生を得たが、相手はまだこちらに敵意を向けており、再び襲い掛かってきそうだ。鞄は引き裂かれてしまったので次は避けるしがないが、足が震えて上手く動けない。
 それに周りの生き物にしたっていつ襲ってくるかは分からない。この犬のような生き物さえなんとかすればいいというわけではないのだ。
(もう、ダメか……)
 唐突に訪れた意味不明な状況で絶望する。自分の人生はどこで間違ってしまったのかと、自問自答する。しかし、その時だった。

 背後から草を含む竜巻のようなものが飛んできて、犬のような生き物を吹っ飛ばした。

「!?」
 ほぼ反射的に竜巻が飛んできた方向に振り返る。するとそこには、手足の生えた緑色の蛇のような生き物と、自分がよく見知った顔があった。
「部長!」
「や。大丈夫?」
 女性にしてはやや高めの背。自分ほどではないが若干色の濃い赤毛を二つに結ったその人物は、自分が所属する部活の部長その人だった。
「な、何でここに? いや、それよりもその生き物……」
 彼女の足元の生き物を指差す。恐らくさっき吹っ飛ばした犬と同じ種類だろうその妖精のような生物は、まるで彼女が使役しているかのように見えた。
「意味が分かんないって顔してるわね。大丈夫、一つずつ教えてあげるから」
 彼女は一歩一歩こちらに歩み寄って来る。それと合わせて妖精のような生物も歩を進める。
「まずはこの生き物たち。この子たちはね、ポケモンっていうのよ。私たちが知っている動物とよく似た生き物なの」
「ポケモン……?」
「そう。そんでもって、この子はバジールっていうの。覚えておいてね」
 バジールは挨拶をするように軽く鳴く。人間の言葉が分かるのだろうか。
「あ、あの、それでこれは一体……」
「状況の説明は後。とにかく今は、あそこを目指すわよ」
「あそこ?」
 彼女が指差したのは、この街の少し小高い丘の上。いつもは何もないただの原っぱだが、今は黒い瘴気のようなものが渦巻いている……ように見える。
「はい、これ」
 突然、彼女は何かを手渡してきた。赤と白のボールのようなものだ。継ぎ目の中央部にはボタンが付いている。手触りからして、何かの機械っぽい。
「それはモンスターボール。中にあなたのポケモンが眠っているわ」
「ぼ、僕の、ポケモン……?」
 受け取ったモンスターボールをじっと見据える。するとどういうわけか、安心感が湧き、心が少し安らいだ。
「真ん中のボタンを押せば、ポケモンが出て来る。さあ、やってみて」
「えっと……こう、ですか?」
 言われたとおりに中央の白いボタンをプッシュする。するとボールは半分に割れるようにして開き、白い光と共に中からなにか——ポケモンが飛び出す。

 ブイッ!

 そんな威勢のいい鳴き声を発しながら現れたのは、茶色い体毛に覆われたポケモン。体つきは猫のようだが、耳が長いので兎にも見える。首回りは白くふさふさした毛で覆われており、30cmほどの小さな体躯だ。
「進化ポケモン、イーブイ。あなたの最初のポケモンよ。さあ、早くあの丘に向かいましょうか」
「あ、ちょっと……部長!」
 ダッと駆けだす彼女を追い、自分も駆けだした。思えばこの時が、前に踏み出した最初の一歩だったのかもしれない。自分の世界が変わる、最初の一歩だったのかもしれない——



ひとまず、プロローグです。これを読んで分かったと思いますが、今作の作風は前作とは趣が異なります。その説明も追々していきますが。あ、それと今作から、URLに煽り文を入れることにしました。たまにキャラクターの豆知識とかも入れるかもしれませんが。それでは次回をお楽しみに。