二次創作小説(紙ほか)
- 第36話 ジムバトルⅢ オボロジム1 ( No.110 )
- 日時: 2013/05/05 22:20
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- プロフ: 始まるオボロジム戦、フィアvsウルシ。
フィアの三番目のジム戦、オボロジム戦。ジムリーダーは鋼タイプ使いにして教職も持つウルシ。
使用ポケモンは三体で、交代挑戦者のみ可能。
ここまでは一般的なジム戦ルールだが、フィールドはオボロ学園の旧校舎とグランド全域、制限時間は三時間で、互いの居場所はターミナルを通じて表示されるという、非常に特異なレギュレーションでのバトルとなった。
「さて、それじゃあ早速始めるよ」
言ってウルシはボールを構えた。
「一限目の始まりだよ、ゴートン!」
ウルシが繰り出したのは、白い体毛に覆われ、前足と尻尾、そしてカールした角が黒く染まった山羊のようなポケモンだ。
『Information
ゴートン 山羊ポケモン
どんなに劣悪な環境にも耐える
強靭な体を持つ。そのため、
レンジャーなどに重宝される。』
「ゴートンは鋼タイプ。なら君の出番かな」
フィアもボールを取り出し、ポケモンを繰り出した。
「出て来て、ヌマクロー!」
フィアの先鋒は先日進化したばかりのヌマクローだ。水と地面の複合タイプなので、鋼技は通りづらく、こちらは地面技で弱点を突ける。
「ヌマクローか……セオリー通りだね。でも、相性だけで負けるほど、僕も僕のポケモンも甘くはない」
ウルシは少しだけ目を細め、フィアを見据える。そして、
「ゴートン、氷柱落とし!」
次の瞬間、虚空からいくつもの大きな氷柱が降り注ぐ。
「っ、ヌマクロー、躱すんだ!」
咄嗟にヌマクローは後ろに跳び、難を逃れる。しかし、
「まだ終わらないよ。思念の頭突き!」
刹那、廊下に壁を作っていた氷柱が粉砕され、奥からゴートンが突っ込んで来る。
今度は横に躱そうとしたヌマクローだが、両サイドは砕かれた氷の破片が散っており飛び込めば全身ズタズタになってしまうだろう。
そんなどうしようもなく手をこまねいていたヌマクローに、容赦なくゴートンの頭突きが炸裂する。
「ヌマクロー!」
思念の頭突きの直撃を喰らったヌマクローだが、進化して耐久力も強化されている。致命傷には至らない。
「ヌマクロー、反撃だ。瓦割り!」
ヌマクローは立ち上がり、ゴートンへと拳を振りかぶるが、
「躱すんだ」
スピードではゴートンに分があり、ゴートンが大きく後退したためヌマクローの拳は盛大に空振った。だがヌマクローの攻撃は終わらない。
「マッドショット!」
ヌマクローはすぐさま口から泥を噴射して、追撃をかける。しかし、
「氷柱落とし」
ゴートンがいななくと、虚空からいくつもの氷柱が降り注ぎ、廊下に壁を作る。発射された泥は氷柱の壁に阻まれてゴートンへは届かない。
そして、
「思念の頭突き!」
ゴートンは頭に思念を集め、氷柱の壁を突き破ってヌマクローに突撃する。
さっきと同じように、砕けた氷の破片が飛び散っているので横には逃げられない。かと言って後ろに逃げてもゴートンが突っ込んで来るので逃げ切れない。
この瞬間にフィアは理解した。廊下というこの狭い空間は、ゴートンの戦術に非常にマッチしている。
このゴートンはまず氷柱落としで廊下に壁を作り、続く思念の頭突きで攻撃するというパターンのようだ。その時、飛び散った氷の破片が横の退路を断ち、ゴートンはまっすぐ突っ込むため後ろにも逃げられない。
(クリさん以上にフィールドを有効活用した戦術だ……!)
しかも氷柱の壁はこちらの視界を塞ぎ、さらには攻撃もシャットアウトしてしまう。
普通のフィールドならこうはいかないだろうが、ここは狭い廊下だ。逃げ道が制限されているところにそんな攻撃を繰り出せば、回避は不可能。
「う……ヌマクロー一旦ここから離れよう!」
時間制限があるのであまりもたもたしていられないが、このまま戦い続けてもヌマクローに勝ち目はない。
フィアとヌマクローはウルシとゴートンに背を向けて走り出し、廊下を曲がって撤退した。
「まあ、この状況だとそうするしかないよね。でもそこが罠……さて、この僕からどこまで逃げられるかな?」
ウルシは不敵に微笑み、廊下の先を見つめる。
「はぁ、はぁ……ここまで逃げれば、とりあえず大丈夫かな」
フィアはゴートンから逃げ、ひとまず近くの空き教室に飛び込んだ。追ってくる気配はなく、ターミナルでウルシの位置を確認するが、ほとんどさっきの場所から動いていない。
「とりあえず氷柱落としと思念の頭突きのループからは逃げられたけど、ここでジッとしてはいられないよね」
極論、ウルシは時間が経過するまで逃げ回っていれば時間制限で勝利できる。流石にそんなことはしないだろうが、フィアがここから出て来ない事には、バトルは進展しない。
「とりあえずヌマクロー、戻って」
フィアは結局まだ何もしていないヌマクローをボールに戻し、
「ブースター、出て来て」
ブースターを出した。
「ゴートンのあのコンボを打ち破るには、ブースターしかない。それでも不安だけど、まだ勝機は——」
とフィアが言いかけた次の瞬間。
廊下から銀色の球体が飛び出し、ブースターを爆撃する。
「!? ブースター!?」
ダメージは小さいが、今のは恐らくゴートンによる攻撃。
「遠くからでも攻撃できるのか……?」
フィアは図鑑で今の技を調べる。その間にも何度か爆撃を喰らったが、それでも相手の技の正体はつかめた。
「マグネットボム……電撃波みたいな必中技か。厄介だな……」
普通のフィールドと、校舎の中という入り組んだフィールドでは必中技の持つ意味合いや強さが変わってくる。
今のフィアのように、ゴートンのコンボから脱するために逃げても、こうして追尾して攻撃してくるのなら、逃げる意味も薄くなってしまう。一ヶ所に留まってジッとしていてもジリ貧のようだ。
「っ! 火炎放射!」
また廊下からマグネットボムが飛来し、ブースターは炎を噴射して相殺する。
「危なかった……ブースター、ウルシさんのゴートンを倒す鍵は君なんだ。頼んだよ」
フィアがそう言うと、ブースターは威勢のいい鳴き声を上げた。
そしてフィアとブースターは、教室から出ていく。
「こうして爆撃し続けていれば、そのうち相手の方から出て来るんだよね。でも大抵の挑戦者はジリ貧になるよりマシっていう考えだから、無策で出て来ちゃうんだ……で、君はどうなのかな、フィア君?」
最初にバトルが開始された廊下で、ウルシは戻って来たフィアに向けてそう問いかける。
「僕にもそういう考えはあるんですけどね……でも、まったくの無策じゃないですよ」
「そうか。それは楽しみだな……それじゃあ、答え合わせだ。君の解答が正しいかどうか、採点してあげるよ」
と言った瞬間、ゴートンがいななく。
「氷柱落とし!」
すると虚空からいくつもの氷柱が降り注ぎ、廊下に壁ができる。
「ゴートン、思念の頭突き!」
ゴートンは頭に思念を集め、氷柱の壁を突っ切ってブースターへと突進するが、
「ニトロチャージだ!」
ブースターも炎を纏って駆け出しており、両者は激しくぶつかり合う。
力ではブースターに分があったのか、ゴートンの思念の頭突きはニトロチャージに突き破られ、吹っ飛ばされる。
「……! 氷柱落としだ!」
ブースターの攻撃力に目を見開くウルシだったが、すぐに気を取り直して指示を出す。
空中で態勢を整えながら、ゴートンはいなないて虚空から何本もの氷柱を落とす。しかし、
「ブースター、火炎放射!」
廊下を塞ぐはずの氷柱は、ブースターが放つ炎を受けて全て溶けてしまった。
「ニトロチャージ!」
そしてゴートンが着地したところにブースターが突っ込み、廊下の奥まで吹っ飛ばす。効果抜群なのでダメージは大きいだろう。
「完全に破られちゃったか……参ったね」
しかしウルシはさほど落胆した風もなく、軽く息を吐く。
廊下という狭い通路を利用したゴートンのループコンボは確かに強力だが、対策自体は簡単だ。
まず一つ目は、最初にブースターがニトロチャージで突っ込んだように、真正面からぶつかって競り勝つこと。攻撃力に自身のあるポケモンならこの方法でまず攻略できる。
二つ目は壁となる氷柱そのものを排除すること。ヌマクローのマッドショットでは威力が足りなかったが、もっと高火力の技や、火炎放射のような炎技なら氷柱の壁を取り除ける。壁さえなくなれば後は普通に攻撃するだけでいい。
「ゴートンのコンボは破った……後はこのまま攻めるだけだ」
「さて、そう上手く行くかな。ゴートンのバトルスタイルが一つとは限らないよ?」
ブースターは低く唸り声を上げ、ゴートンは蹄を鳴らす。
いきなり高度なバトルが繰り広げられているが、オボロジムの戦いはまだ、始まったばかりだ——
さあいよいよ始まりました、オボロジム戦。ウルシの一番手はゴートンで、初っ端から地形を利用したコンボが炸裂します。ちなみのウルシが教師という設定なのは、学校をフィールドにしてバトルがしたかったから、ただそれだけです。さて、それでは次回、オボロジム戦その二です。今回は四話分くらい使いそうですね。次回もお楽しみに。