二次創作小説(紙ほか)
- 第38話 ジムバトルⅢ オボロジム3 ( No.112 )
- 日時: 2013/05/06 01:50
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- プロフ: どこまでも追跡するエアームド、パチリスに反撃のチャンスは訪れるのか。
「エアームド、シザークロスだ!」
エアームドは迫り来るエレキボールを、交差した翼で切り裂いてしまう。
「鋼の翼!」
そして間髪入れずに両翼を広げ、パチリスへと滑空する。
「パチリス、躱して種爆弾!」
パチリスは素早く横に動いて鋼の翼を躱し、エアームドの背に種子を投げつけて炸裂させる。
しかし威力は四分の一で物理技、エアームドにはほとんどダメージを与えられない。
「やっぱり効かないか。なら、エレキボール!」
パチリスは尻尾に雷球を生成し、スイングしてエアームドへと投げ飛ばすが、
「シザークロスで切り裂くんだ!」
交差させながら翼を振るい、エアームドは雷球を切り捨てる。どうやら普通に攻撃しても通用しないようだ。
ならばどうやってエアームドの隙を突くかフィアは考えるが、そんな暇を与えてくれるウルシとエアームドではない。
「ドリルライナー!」
エアームドは嘴を突き出し、錐揉み回転してパチリスへと突っ込んでいく。
「あれだけは受けられない……パチリス、なにがなんでも躱すんだ!」
パチリスもこの攻撃が危険だと理解しているようで、大きく横っ飛びして回避した。
「パチリス、エアームドから距離を取ろう。エレキボール!」
フィアは廊下を走り、パチリスを誘導する。さらにエアームドがすぐに追ってこないよう、パチリスは雷球を飛ばし、エアームドがそれを切り裂いている間に逃げようとするが、
「逃がさないよ、鋼の翼!」
エアームドはすぐさまパチリスを追ってきて、すくい上げるように鋼鉄の翼を叩き付け、近くの教室へと吹っ飛ばす。
「パチリス!」
フィアは慌てて教室に飛び込み、パチリスに近寄る。どうやら効果いまひとつなのが幸いし、パチリスの受けたダメージは思いのほか小さい。
「ここは……理科室……?」
ふとフィアが辺りを見回すと、そこは確かに理科室のようだった。
人体模型や元素記号の周期表、顕微鏡に薬品棚……理科の実験で使うような道具が揃っている。
「こんなものまで再現してるんだ……」
その労力と費用を考えると、この場所でバトルをすることに躊躇いと申し訳なさを覚えてしまうフィア。しかし次の瞬間、そんな考えは軽く吹き飛ばされる。
「エアームド、ドリルライナー!」
エアームドが錐揉み回転しながら教室内へと突入し、模型やら顕微鏡やらを破壊した。本来はパチリスを狙ったのだろうが、パチリスは既にエアームドから離れている。
「遠慮する必要はないってことかな……ん?」
エアームドの備品に対する容赦ない攻撃に思わずつぶやいたフィアは、エアームドが吹き飛ばしたものの中から、あるものを発見し、拾い上げる。
「……パチリス、教室から出るよ」
フィアはパチリスを肩に乗せて共に教室から出て行くが、当然エアームドも追ってくる。
「パチリス、エレキボール!」
パチリスはエアームドに狙いを定め、尻尾を振るって雷球を飛ばす。
「効かないよ、シザークロス!」
だがやはり、真正面からの攻撃はエアームドには通用せず、切り裂かれて終わってしまう。
だが、パチリスの攻撃は終わらなかった。
「種爆弾!」
続けてパチリスは無数の種子を飛ばし、エアームドの目の間で炸裂させる。けれど草技では、エアームドに有効打を与えられない……が、フィアの目的はエアームドを攻撃することではない。
「この炸裂の仕方……目くらましか」
ウルシの言うように、今の種爆弾は明らかに目を狙っており、エアームドの視界を塞ぐことが目的だ。現にフィアとパチリスは、既に廊下を曲がってウルシとエアームドの視界から消えている。
「ふむ、どうやら近くの教室に逃げ込んだっぽいね」
ウルシはターミナルを確認し、フィアとパチリスが逃げ込んだはずの教室へと向かう。
目的の教室は理科室を出た廊下の突き当りを右折してすぐのところにある。ウルシは奇襲を警戒しつつ教室に入る。そして今度は逆に、こちらから奇襲をかけようとするが、かけられなかった。
なぜなら、そこにいたのはフィアだけだったからだ。
「……パチリスがいないね。どこに隠したのかな?」
「さぁ……僕のパチリスは悪戯好きですからね」
当然と言えば当然だが、まともに答える気のないフィア。ウルシは教室内——ロッカー、机、教卓——を順番に見る。
(パチリスは小柄なポケモン、隠れる場所ならいくらでもある……特に怪しいのはロッカーや教卓だけど)
ウルシは少しだけ開いたロッカーと、大きめの教卓を交互に見遣る。どちらもパチリスが隠れるには十分だ。どちらかにパチリスが隠れていると考えるのが妥当だろう。
しかし、
(……あの机)
ウルシは見逃さなかった。教室の中央にある机。一見すれば何の変哲もない机だが、何も入っていないはずの机の中が淡く発光している。
「隠れながら帯電していたのか。隙を見てエアームドに電気技を当てるつもりだったんだろうけど、アテが外れたね。そういう隠れてこそこそする行いは、あまり褒められたものじゃないよ」
得意げにそう言うウルシ。エアームドは目標の机を鋭く睨み付けている。
そして、
「エアームド、ドリルライナーだ!」
エアームドは高速で錐揉み回転しながら、発光していた机にドリルのような嘴を押し当てる。それだけで机は簡単に穴が開き、貫通する。
「……!」
エアームドの攻撃力はそれなりに高い。中にいたのがパチリスでなくとも致命傷になるだろう攻撃だ。しかも奇襲を仕掛けようとして逆に反撃されたのだ、大ダメージは必死である。
だがそれは、中にポケモンがいた場合の話である。
エアームドが机を貫いた瞬間、天井裏のパネルが開く——
「今だパチリス!」
エアームドが机を貫いた瞬間、天井裏のパネルが開き、中からパチリスが飛び出した。
「なにっ……!?」
完全に予想を外したウルシとエアームドは驚愕していた。しかもエアームドは攻撃直後で隙だらけ、一撃なら直撃を叩き込むことなど造作もない。
「エレキボール!」
パチリスは天井裏で帯電していたのか、今までよりも大きな雷球を生成し、尻尾を大きく振るってエアームドへと投げ飛ばす。
「エアームド!」
エアームドは強化され、弱点を突くエレキボールを喰らい、ぐったりと動かなくなる。戦闘不能だ。
「まさか天井裏にいたなんて……蛍光灯の支えを足場にして上ったんだろうけど、じゃああの光は……?」
ウルシは机の中の光を確実に見た。あれは見間違いでもなんでもない。だからこそ、それがパチリスだと思ってエアームドに攻撃させたのだ。
疑念を抱きながら、ウルシはエアームドをボールに戻す。その時、エアームドが机と一緒に貫いた物体を視認した。
「豆電球……!?」
「はい、その通りです」
作戦を悟られないためにほとんど口を開かなかったフィアが、ここでやっと話し始めた。
「僕は根っからの文系で理科は苦手なんですけど、それでも豆電球くらいは分かります。さっき理科室から貰ってきました」
つまりフィアの作戦は、予めパチリスを天井裏に、電池に繋いだ豆電球を机の中に隠しておき、机の中から豆球の光を漏れさせる。そこにウルシが現れ、彼に机の中の光をパチリスの電気による光だと誤認させ、攻撃させる。その隙に、天井裏で帯電し攻撃能力を上げていたパチリスにエアームドを攻撃させる、という作戦だ。
「……まさかこんな単純な罠にかかるなんて。僕もまだまだだね」
などと言いながらウルシはターミナルと、最後のポケモンが入ったボールを取り出す。
「時間は……意外とかかったね。もう二時間半も経過しているよ」
フィアもターミナルを取り出して時間を確認すると、確かにそのくらい経過している。正確には、二時間と四十分弱。残り時間は二十分程度だ。
「このまま逃げても僕の勝ちだけど、流石にジムリーダーとしてそんなことはできない。残り二十分、全力で君の相手をするよ」
「……はい。お願いします」
「いい返事だ。それじゃあ、僕のエース——優等生というべきか——のお出ましだ」
そして、ウルシは最後のポケモンを繰り出す。
「もうすぐ終礼だよ、ユニサス!」
ウルシの最後のポケモンは、金色の角を持つ白馬、いわゆるユニコーンのような姿をしたポケモンだ。
『Information
ユニサス 角馬ポケモン
金色の角は太陽の力を秘めて
おり、その力が解放される時
角から神々しい光を発する。』
オボロジム戦その三です。思いのほかエアームド戦で文字数を喰わなかったので、この調子なら次でジム戦が終了しそうです。さて今回明らかになったウルシのエースはユニサスです。特に深い意味はありません、ただなんとなく合ってるかなーと思っただけです。そういえば言い忘れていましたが、白黒は1レスあたりの文字数がかなり多く、一話分書くのに文字数オーバーになることがよくあります。なので一度記事を分割し、後から修正という形で文字数を足していることが多々あります。なのでもしこの作品がトップに上がっていたら、すぐにクリックせず一分くらい間をおいて読むことをお勧めします。もしくは再度読み返すかですね。でないと最後の部分を見逃してしまうかもしれませんよ。というわけで次回、オボロジム戦決着です。お楽しみに。