二次創作小説(紙ほか)

第39話 ジムバトルⅢ オボロジム4 ( No.115 )
日時: 2013/05/06 15:03
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
プロフ: 知略を張り巡らせるウルシ。フィア、三つ目のバッジゲットなるか……!

 ウルシのエースは、黄金の一本角を持つポケモン、ユニサスだ。
「ユニサスは……エスパーと鋼タイプか」
 ならパチリスにとってそれほど不利な相手でもない。むしろ今のパチリスは帯電で攻撃と特攻がかなり上がっているので、攻撃面では有利とも言える。
「速攻で行くよ。パチリス、噛みつく!」
 パチリスは鋭い歯を剥き、ユニサスへと飛びかかる。しかし、
「ユニサス、ミラーショットだ!」
 突如ユニサスの体が光を発し、パチリスを攻撃する。威力は大したことはないが、その一撃でパチリスの視界は塞がれ、動きも止まってしまった。
 そして、
「メガホーン!」
 次の瞬間、ユニサスの黄金の角がパチリスを捉える。
「! パチリス!」
 強烈な刺突を喰らったパチリスは壁に叩き付けられ、あえなく戦闘不能となってしまう。
「……戻って、パチリス」
 フィアは戦慄しながらも、パチリスをボールに戻す。
(なに、今の攻撃……とんでもない威力だ……)
 先ほどユニサスが繰り出したメガホーンは、フィアが今まで見た攻撃の中で一番威力のある攻撃かもしれなかった。実際はどうか分からないが、そう思うほどの破壊力があったのは確かだ。
「最後は君か。頼んだよ、ヌマクロー!」
 フィアの最後のポケモンは、先発で出たもののすぐに引っ込められたヌマクロー。ゴートン戦での傷はほぼ完全に癒えている。
「とにかく、あのメガホーンに注意しないと。ヌマクロー、マッドショット!」
 ヌマクローは息を吸い、口から大量の泥を発射する。
「ユニサス、サイコショック!」
 ユニサスも実体化した念波を放ち泥を相殺——するかと思いきや、威力を削いだだけで相殺せず、ユニサスはマッドショットを喰らってしまう。効果抜群だが威力は削がれ、ダメージは大きくない。
「……?」
 その光景に違和感を覚えるフィア。タイプ不一致のメガホーンの威力は凄まじかったのに、タイプ一致のサイコショックはマッドショットを相殺できない程度。その威力の格差に、戸惑いを覚える。
「……もう一度マッドショット!」
「サイコショックだ!」
 ヌマクローは再び泥を放ちユニサスも念波で応戦するが、やはりマッドショットがサイコショックを打ち破ってユニサスを攻撃した。
「瓦割りだ!」
 今度はその隙に、ヌマクローの拳が繰り出される。瓦を粉砕する勢いで突き出された拳がユニサスの屈強な体へと叩き込まれた。
「引き剥がすんだユニサス、ダイヤブラスト!」
 ユニサスは瓦割りを耐え切ると、煌めく爆風を放ってヌマクローを引き剥がす。しかし攻撃こそ派手だったが、効果いまひとつであることを差し引いても威力が低い。
(もしかしてこのユニサス、特攻は低いのかな……?)
 普通に考えれば、もしかしなくてもそうだろう。となるとこのユニサスは、物理攻撃一本に特化していることになる。
(ならより一層、メガホーンだけに気を付けてればいいんだよね)
 特殊技のダメージは微々たるもので、注意すべきはメガホーンのみ。そのように考えたフィアは、次なる指示を出す。
「ヌマクロー、スプラッシュだ!」
 ヌマクローは全身に水流を纏い、水飛沫を散らしながらユニサスへと特攻する。
「迎え撃て、ダイヤブラスト!」
 ユニサスは煌めく爆風を放って対抗するが、爆風は簡単に突き破られ、ユニサスにスプラッシュが叩き込まれる。
「瓦割り!」
「ダイヤブラスト!」
 ヌマクローはそのまま拳を突き出して追撃するが、すぐさまユニサスも爆風を放って今度こそヌマクローを引き剥がす。
「まだまだ……ヌマクロー、スプラッシュ!」
 だがヌマクローの攻撃の手は緩まらず、ヌマクローは全身に水流を纏う。その時。
「ユニサス、ミラーショット!」
 ユニサスが光を受け、その光を反射して光線のような攻撃を放ってきた。
 いつものフィアなら普通に回避するだろうこの攻撃。しかしフィアはミラーショットが特殊技だと知ってしまっているため、スプラッシュで突っ切れると考え回避行動を指示しなかった。
 それが命取りだ。
「……かかったね」
 ウルシが不敵に笑う。
 ヌマクローはそのまま飛沫を散らして突っ込んでいったが、途中でユニサスのミラーショットが直撃し、目が眩んでしまう。
 そして、

「ユニサス、メガホーン!」

 刹那、ユニサスの黄金の角がヌマクローの腹に突き刺さる。
「!? ヌマクロー!」
 強烈な一突きをまともに喰らい、ヌマクローはこれでもかと言うくらい突き飛ばされ、廊下を転がっていく。吹っ飛び方も盛大だが、受けたダメージはそれ以上だろう。
 そしてこの時、フィアはウルシの作戦に気付いた。
 ウルシの作戦も、フィアの囮豆電球ほどではないが単純なものだ。主要な部分だけ言うと、まずミラーショットで相手の目を眩ませて動きを止め、その隙にメガホーンを突き込むというものだ。
 無論、これだけではすぐに対策されるので、そのための下準備がある。それが、異様に威力の低い特殊技だ。ウルシはあえて特殊技の低威力を見せ付け、相手に特殊技なら喰らっても問題ないという思考を与える。そして頃合いを見計らって、ミラーショットを撃ち、動きを止めてからメガホーンで仕留めるのだ。
 生半可なポケモンなら一撃で瀕死にしてしまうほどの威力を誇るメガホーン。それを確実に当てるための、物理学や心理学を利用した作戦。このような戦術を立てる辺り、流石はジムリーダー。その場の思い付きの作戦しか立てられないフィアとは違う。
「……ヌマクロー、大丈夫?」
 フィアは吹っ飛んだヌマクローに駆け寄り、声をかける。どうやらまだ戦闘不能ではないようだが、今の一撃で体力のほとんどを持って行かれた。あと一撃喰らえば間違いなく瀕死になる。
「ここは二階……行けるかな」
 しつこいが、ユニサスのメガホーンは驚異的だ。たとえミラーショットから繋げると理解したところで、今度はその技の存在自体がプレッシャーになり、迂闊に攻められなくなる。この辺りも人間の心理を上手く利用している。
 だがそれでも、フィアはその打開策を思いついていないわけではなかった。
「ヌマクロー、きついと思うけど頑張って上までダッシュしてほしいんだ。一番上まで行ってほしいんだ」
 フィアはヌマクローに小さく耳打ちし、ヌマクローもコクリと頷く。
 そして次の瞬間、フィアとヌマクローは——駆け出した。



 全速力、全力疾走でフィアとヌマクローは近くの階段を駆け上っていく。
「何をする気だ……? ユニサス、追うよ」
 フィアの意図は読めないが、それでも野放しにしておくわけにはいかない。ウルシとユニサスも同じように階段を駆け上っていく。
「追いつかれる……ヌマクロー、マッドショット!」
 時々追いつかれそうになると、ヌマクローは泥を発射してユニサスを妨害し、ひたすら上を目指す。
 しばらく走ると、フィアは最上階に見える扉を押し開け——屋外へと出た。
 即ち、屋上である。



 フィアとヌマクローが屋上まで辿り着いてから少しして、ウルシとユニサスも同じように屋上に足を踏み入れた。
「やっぱり学校と言えば、屋上ですよね。僕が通ってた学校は立ち入り禁止でしたけど」
 だからこうして屋上に来てみたかったんです、とフィアは言う。
「……こんなところまで来て、どういうつもりかな」
「勿論、ユニサスを倒すためです」
 内心では不安に駆られながらも、フィアは強気に出る。
「そうかい……ユニサス」
 そんなフィアを見て、少しだけ目を鋭くするウルシ。ユニサスはいななき、黄金の角を構える。
「メガホーン!」
「躱して!」
 ユニサスは黄金の角を構え、そのまま突っ込んで来る。凄まじい気迫だが、それでも一直線の攻撃だ。ヌマクローはなんとかその一撃を回避する。しかし、
「まだ終わらないよ、ミラーショット!」
 ユニサスは素早く振り返り、光を反射した光線を放つ。
 これを喰らえば、続けて放たれるメガホーンの餌食。しかし満身創痍のヌマクローでは、素早く切り返されたミラーショットを回避することはほぼ不可能。
 けれど、ヌマクローにはまだ奥の手があった。
「ヌマクロー、水の誓!」
 刹那、ヌマクローの正面から間欠泉のように水柱が何本も立ち上がる。それはゴートンの氷柱落としのようにヌマクローの前に水の壁を作った。
 だが氷柱と違いこれはただの水。防御力は低い。しかしここで重要なのは防御力ではない。ここで重要なのは——

 ——水が光を反射するということだ。

「っ……!」
 反射した光をさらに反射され、ユニサスは目が眩み、動きを止めてしまう。
「今だ! スプラッシュ!」
 その隙にヌマクローは飛沫を散らしながらユニサスに突貫する。特性、激流が発動したスプラッシュの威力は相当なものだが、それでもまだユニサスを戦闘不能にはできない。
 なのでヌマクローはフェンスを突っ切り、ユニサスと共に空中に飛び出す。
「なっ……!?」
 流石のウルシも驚愕する。ここは四階のさらに上の屋上。そんなところから飛び降りるのは、人間でなくとも自殺行為だ。
 しかしそれでも、ユニサスを倒すべく、ヌマクローは空中で拳を構える。
 そして、

「瓦割り!」



 あの後、ユニサスは落下の勢いを合わせた瓦割りでとどめを刺され、戦闘不能となった。ヌマクローはユニサスを下敷きにしたので助かって当然だが、あの高さから落下しても特に外傷がないユニサスは流石鋼タイプと言えるだろう。
「負けたよ、完敗だ」
 バトルが終わり、校舎の玄関でフィアとウルシは向かい合っていた。
「サミダレで見た時よりずっと強くなっているね。知識はまだ乏しいみたいだけど、判断力や適応力は高い。知識は経験だから、このまま旅を続ければ、君はもっと強くなると思う」
「はぁ……」
 ウルシから評価されるフィアだが、彼の性格上、曖昧にしか返事ができない。
「さて、それじゃあこれがジムバッジだよ」
 やがてウルシはフィアに箱を差し出す。蓋を開くと、中には銀色で尾を引いた彗星のようなバッジが収められていた。
「オボロジムを制覇した証、メテオバッジだ」
「……はい、ありがとうございます!」

 こうして、フィアは三つ目のジムバッジを手に入れた。しかしポケモンジムは、ここからが難関であるのだった——



オボロジム戦、決着です。メテオバッジの形状は、知っている人ならFF7のロゴマークを思い浮かべてください。あれを細長くした感じです。それとメテオは流星という意味です。英語で正確に発音するとミーティというらしいですが……まあメテオの方が分かりやすいでしょう。ちなみにメテオと言うと隕石を連想し、隕石なら岩タイプだと思うでしょうが、実は隕石の主成分は鉄なんですよ。だから鋼タイプのジムバッジでも問題ないはずです。なんか今回はやたらジムバッジについて語りましたが……次回予告です。予告と言うか、次回は一応今作での新キャラ登場です。何人出るかは分かりませんが……ともかく、次回をお楽しみに。