二次創作小説(紙ほか)
- 第46話 ジムバトルⅣ カゲロウジム3 ( No.129 )
- 日時: 2013/05/11 22:49
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- プロフ: 白熱するカゲロウジム戦、次々に倒されるフィアのポケモンたち——
アーロンは戦闘不能となったウインディをボールに戻し、静かに次のボールを構える。
「さあ行け、サムラダケ」
アーロンの三番手は、擬人化キノコとでも言うようなポケモンだ。人型だが、体は青く頭部は赤いキノコの傘状、手に持っている刀もキノコを細長くしたように見える。
『Information
サムラダケ きのこポケモン
自分の主人であるトレーナーを
生涯を賭けてまで守り抜く。
非常に忠誠心の高いポケモン。』
「草と炎タイプか……パチリスじゃ厳しいかな」
しかしパチリスはウインディとのバトルで消耗している。手負いのまま戻しても、すぐには回復しないだろう。
「それに帯電もあるし、ここは攻める。パチリス、必殺前歯!」
パチリスは前歯を剥き、サムラダケへと駆け出す。
「サムラダケ、リーフブレード」
サムラダケも刀を腰に溜めて構え、パチリスを迎え撃つ姿勢を取った。
パチリスは勢いのまま前歯を突き出し、サムラダケはスッと刀を抜いて横薙ぎに振るう。双方の攻撃が交錯し、互いに背中を向けた。そして、
「サムラダケ、真空波」
サムラダケは素早く刀を返し、真空波を放ってパチリスを撃墜する。
「パチリス!」
その一撃でパチリスは地面に落ち、戦闘不能となった。
「……戻って、パチリス」
フィアはパチリスをボールに戻し、すぐに次のボールを構えた。
「頼んだよ、ブースター!」
フィアが繰り出したのは、当然ながらブースターだ。
「……サムラダケ、成長」
サムラダケは一度刀を下ろし、天を仰ぐようにして目を閉じる。するとサムラダケの体が見るからに滾っていく。
「成長は、確か帯電と同じで攻撃と特攻を同時に上げる技……日差しが強いと、二段階一気に上がるんだ……」
つまり今のサムラダケは、攻撃も特攻も通常の二倍ということになる。
「だったら早めに決めないと。ブースター、ニトロチャージ!」
「サムラダケ、炎のパンチ」
ブースターは全身に炎を纏って突進。サムラダケの炎を灯した拳と激しくぶつかり合う。
「アイアンテールだ!」
やがて互いの攻撃が弾かれると、ブースターは空中で一回転しながら鋼鉄の如く硬化された尻尾を振り下ろし、サムラダケの脳天に叩き込む。
「火炎放射!」
さらに空中から炎を噴射して追撃。日照りの恩恵を受け、ブースターの炎技も強化されている。
「ニトロチャージ!」
「炎のパンチだ」
着地したブースターは、間髪入れずに炎を纏って突進し、サムラダケの拳とぶつかり合って互いに弾かれる。
「ブースター、火炎放射!」
「リーフブレードで切り裂け」
ブースターは攻撃の手を緩めることなく炎を噴射するが、今度はサムラダケの刀で切り裂かれてしまう。
「真空波だ」
サムラダケはそのまま素早く刀を振るい、真空波を飛ばしてブースターを攻撃。成長で強化されているが、素の威力が低いので大打撃にはならない。
「リーフブレード」
だがサムラダケはブースターが怯んだ隙に接近し、刀で切り裂く。成長で攻撃が倍加しているので、実質等倍のダメージだ。
「くっ、アイアンテール!」
「炎のパンチで弾き返せ」
ブースターはターンして鋼鉄の尻尾を振るうが、サムラダケも裏拳のように炎を灯した拳を繰り出し、アイアンテールを弾いてしまう。
「リーフブレードだ」
そして刀を振るってブースターを切り裂き、
「炎のパンチ」
炎の拳でブースターを殴り飛ばす。
「ブースター……!」
ブースターは地面を転がり、なんとか起き上がる。致命傷というほどではないが、それでもサムラダケの連撃でダメージが溜まってきている。
「サムラダケ、真空波」
そこにサムラダケは、刀を振るって真空波を飛ばす。
「く、うぅ……ブースター、ニトロチャージだ!」
ブースターは炎を纏って駆け出し、真空波を突き破ってサムラダケに突撃。
「アイアンテール!」
そして鋼鉄の尻尾を振るい、今度はサムラダケを吹っ飛ばした。
ブースターのダメージが蓄積しているように、サムラダケも消耗しているはず。サムラダケが成長で攻撃と特攻を上げているように、ブースターも三度のニトロチャージで素早さが上がっている。
条件は今のところ、ほとんど五分だ。むしろ技の構成上、ほとんどが等倍になり日照りの恩恵も受けるブースターの方が有利と言える。
「ブースター、火炎放射だ!」
「サムラダケ、リーフブレードで切り裂け」
ブースターが放つ炎を、サムラダケは刀を振るって切り裂き、
「真空波」
返す刀でもう一度振るい、真空波を飛ばして反撃する。
「成長だ」
ここでサムラダケは一旦刀を下ろし、天を仰いで目を閉じる。そして体を成長させ、力を滾らせようとするが、
「っ、ニトロチャージ!」
ブースターが即座に炎を纏って突進し、サムラダケを突き飛ばした。よって成長は中断される。
現状ではサムラダケとブースターの力はほぼ拮抗状態だ。素の火力でははブースターが上回り、日照りの恩恵も強く受けているが、サムラダケはその差を日差しが強い状態の成長で埋めている。
要するに、これ以上サムラダケに成長され、攻撃能力を上げられると、ブースターでは敵わなくなってしまうのだ。なのでブースターは、絶対にサムラダケに成長させてはならない。
「……サムラダケ、炎のパンチ」
サムラダケは拳に炎を灯して振りかぶり、ブースターへと飛びかかる。
「アイアンテールだ!」
ブースターも鋼鉄の尻尾で迎え撃つが、タイプ相性もあり、サムラダケに押し切られてしまう。
「リーフブレード」
そしてサムラダケは素早く刀を振るってブースターを切り裂く。ブースターの体力も、かなり削れてきた頃だろう。あと一息で、ブースターはサムラダケに押し切られてしまうかもしれない。
だが、
「ブースター、起死回生!」
ブースターはくるりとターンし、凄まじい勢いで前足を突き出してサムラダケを吹っ飛ばす。
「起死回生……」
サムラダケは壁に叩き付けられた。最大火力の起死回生ではなかったためか、まだギリギリ戦闘不能ではないが、かなりの大ダメージを負ってしまう。
「火炎放射!」
そこにブースターはすかさず炎を吹きつけて追撃。サムラダケを炎で包み込む。
炎が晴れると、サムラダケは壁からずり落ちる。刀を地面に刺してなんとか立ち上がろうとするが、結局膝は上がらず、刀に寄りかかったまま戦闘不能となった。
「戻れ、サムラダケ」
アーロンは静かにサムラダケをボールに戻した。これでアーロンの手持ちは残り一体。
しかしフィアにとっては、彼自身の手持ちもブースター一体だ。
「…………」
「……?」
アーロンは次のボールを出さずにしばらくフィアを見つめていたが、やがてゆっくりと最後のボールを構えた。
「おい」
「は、はいっ」
構えたところで、アーロンはフィアに呼びかける。
「このバトルは、四対四だ」
「……はい」
「分かっているか」
「……分かっています」
唐突にルールを再確認するアーロン。フィアは控えめに答えるが、傍から見れば意味があるようには思えない、意味不明のやりとりだ。
「……? なんなの……?」
現に観戦しているイオンはしきりに首を傾げている。
そんなイオンはさて置き、バトルが続行される。
アーロンは構えたままのボールを握り締め、最後のポケモンを繰り出す。
「さあ行くぞ——」
カゲロウジム戦その三です。アーロンの三番手はサムラダケ。ここまでで分かった人もいるかもしれませんが、アーロンの手持ちはすべて和風です。いや、ウインディは中国に伝わるポケモンらしいですが、狛犬っていう説もあるみたいですしね……それはさておき、アーロンの手持ちは和風揃いです。となると、最後のポケモン、彼のエースが分かる人もいるのではないでしょうか。以前URLか何かで触れましたが、今作のジムリーダーは服装や髪形や装飾などにエースポケモンを現す意匠が含まれています。なのでヒントは和風と服装、それから炎タイプですかね。トクサのエースとかも予想してみてくださいな。さてさて、今回は文字数が非常に余ったのであとがきが長くなったのですが、もう書きたいことも特にないというか、書きたいことを忘れてしまったので、この辺にします。次回はカゲロウジム戦その四……だと思います。というのも、次回はジム戦よりも例のポケモンについて言及しようと思っているので、もしかしたらサブタイトルがジム戦じゃなくなるかもしれません。まあそんなことはどうでもいいとして、次回もお楽しみに。