二次創作小説(紙ほか)

第5話 ホッポウ ( No.13 )
日時: 2013/04/16 22:53
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
プロフ: ホッポウ地方のモデルは北方領土。シンオウと被ってるとか気にしない

「……成程な。つまりお前は、その部長とかいう女に連れられて、この世界に来たってわけか」
「えっと……はい、たぶん……」
 ダイケンキを運び、フィアは博士と少女——少女はフロルという名前らしい——と共に研究所を訪れていた。
 博士はフィアの話を聞き、妙に納得していた。フロルも少し困惑していたが、最終的には飲み込んだようだった。
「ま、この世界は超常現象の塊みてぇなもんだしな。異世界から野郎が来たところで、そこまで驚きはしねぇ」
 超常現象の塊というのがどんな世界なのか、フィアには想像しがたいものだったが、ついさっき自分が経験したことが頻発する世界だとしたら、おぞましいの一言に尽きる。
「さて、さっきも説明したが、まだ飲み込み切れてねぇだろうしもう一度説明してやる。ここはホウエン、ジョウト、カントーのずっと先、シンオウ地方のすぐ北にある、三つの島と一つの諸島からなる地方。ホッポウ地方だ。そんでここは三つの島で最小の島、シコタン島の南に位置する町、ハルビタウン」
 なんとか地方についてはまだ気にしなくていいと付け足し、博士は続ける。
「この地方の特徴は、島ばかりでありながら多種多様なポケモン生息していること。この地方のポケモンは他の地方では覚えられない技を覚えること。そして、この地方で発祥したポケモンが存在しないことだ」
「発祥したポケモンがいない……?」
「ああ。ホッポウには、この地方にはを原点とするポケモンが存在しない。ま、そんなことはどうでもいい」
 少なくともお前にとってはな、と博士は言った。
「重要なのは、お前がこの世界に飛ばされたことだ。恐らく伝説のポケモンが絡んでるんだろうな。可能性としてありそうなのは、シンオウ地方の神話で伝えられている、パルキアが怪しいか。なにせ空間を司るポケモンだ、次元の壁を超えることくらい造作もないだろう」
「え、ポケモンってそんなことまでできるんですか……?」
「まぁな。つっても伝説のポケモンだからこその力だが」
 となると、フィアや彼女、あの青年を飲み込んだ渦の裏側にいた影も、伝説のポケモンなのだろうか。
「……ま、こんなとこでそんなこと言い合っててもしょうがねぇ。今は行動あるのみだ。なぁ、お前……フィアとか言ったか?」
「はい」
「お前、元の世界の戻りたいか?」
 勿論、と即答したかったが、フィアの性格上、それは無理だった。しかし。
「と、当然です。一刻も早く戻りたいですよ」
 元の世界に戻りたい、という気持ちは、今のフィアの大部分を占めている。なので、彼にしてははっきりと、そう言った。
「おし。なら決まりだ。フィア、お前にはホッポウ地方を旅してもらう」
「え……?」
 あまりにも唐突だったので、フィアは呆然とする。しかし博士は構わず続けた。
「正式に資格を持ってるわけじゃぁねぇが、俺も研究者の端くれだ、お前がなんでこの世界に飛ばされたのか興味がある。だがそれにはあまりにも情報が少なすぎるんでな。お前には俺の研究の手伝いをしてもらいつつ、元の世界に戻るための手掛かりを探す。どうだ、一石二鳥だろ?」
「いやいや、ちょっと待ってくださいよ。旅なんて無理ですよ、僕には」
 フィアの常識では、未成年の一人旅なんてありえない。危険だし、なによりフィアはその手の技術や知識がない。
 だが博士は、そんなフィアの主張を否定する。
「んなこたねぇ。この世界じゃ、10歳になればトレーナーになって旅に出られるんだ。逆に言えば、それくらいこの世界は旅人に対して親切になってるってこった。俺の息子も13ぐらいの時に旅立ったしな」
 博士はそう言うものの、フィアからすれば不安ばかりだった。フィアの感覚では、旅とは生死を賭けるような所業。生半可な覚悟では到底不可能なことである。
「覚悟がいんのはなにするにしても同じだ。それに安心しろ、付き人も用意してやる。なぁフロル」
「えっ? わたし!?」
 急に話を振られて慌てるフロル。
「たりめーだ。お前もそろそろ旅立ってもいい歳だろ。俺が前に渡したポケモンだって、きっちり進化させたじゃねぇか」
「で、でも……」
「大丈夫だ、自信を持て。お前よりフィアの方が、この世界では初心者なんだぜ? お前がサポートしてやれ」
「う、うん。イーくんがそう言うなら……」
「うっし! じゃあ決定だ!」
 博士はポニーテールを跳ね上げるように勢いよく立ち上がった。
「とりあえず今日はもう休め。そんでもって明日また研究所に来い。その時が、お前らの旅の始まりだ」



 ……こうして、半ば強引にフィアとフロルの旅は始まった。フィアは元の世界に帰る手掛かりを探すため、フロルはフィアのサポートと、ポケモントレーナーとして己を鍛えるために——



あとがき二回目。今回はいつもより短いですね、2000文字程度しかありません。URLにもありますが、今作の舞台であるホッポウ地方のモデルは北方領土です。島の名前からして分かりますかね? 確かシンオウ地方のポケモンリーグだかなんだったかが、北方領土の一部だった気がしますが、気にしません。いや、気にはしますが、そのうち説明します。さてそれでは、次回はフィアとフロルの旅立ちです。研究所では通例のイベントが行われる……予定です。次回もお楽しみに。