二次創作小説(紙ほか)

第48話 ジムバトルⅣ カゲロウジム5 ( No.131 )
日時: 2013/05/12 18:28
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: FLZh3btT)
プロフ: 決戦を迎えるカゲロウジム戦、メタングvsオオイナリの勝負の行方は——

「先ほどああ言った手前、今更こう言うのは気が引けるが……お前のメタングが俺のオオイナリに勝つことは困難だ」
 メタングが勇敢に拳を構える中、アーロンは表情を見せず、静かに口を開いた。
「今の天候は日差しが強い状態、炎技は強化される。俺のオオイナリはその恩恵を強く受ける炎タイプで、お前のメタングは炎に弱い鋼タイプ……それでも、やるのか」
「やります。僕とメタングはオオイナリを倒します」
「……そうか」
 ならばもう何も言わん、と言って、オオイナリは構え直す。
「オオイナリ、火炎——」
「メタング、バレットパンチ!」
 アーロンの指示が終わるより早く、オオイナリが炎を放つより速く、メタングはオオイナリに接近して殴り飛ばしていた。
「む……」
 効果いまひとつなのでダメージは大きくないが、それでもオオイナリを一撃で殴り飛ばすほどのパワーに、アーロンは反応を示した。
「……オオイナリ、シャドーボール」
 オオイナリは素早く起き上がると、影の球を生成し、メタングへと発射する。
「シャドークローだ!」
 だが放たれたシャドーボールは、メタングの影を纏った爪で引き裂かれ、消滅してしまった。
「バレットパンチ!」
 そしてメタングはすぐさま拳を構え、弾丸のようなスピードでオオイナリに接近し、殴りつける。今度はオオイナリも踏ん張り、吹っ飛ばされずに耐えきった。
「火炎放射だ」
「っ、思念の頭突き!」
 オオイナリはそこで口から炎を噴射しようとしたが、その前にメタングの思念を集めた頭突きがヒットし、怯んでしまったため火炎放射が中断される。
「メタング、一旦オオイナリから離れて」
 その隙にメタングは後退し、オオイナリから距離を取る。
「メタング、岩雪崩だ!」
 メタングが大声を上げると、虚空からいくつもの岩石が降り注ぎ、オオイナリを押し潰す。効果抜群なので、ダメージは大きいだろう。
「オオイナリ、岩をどけろ。神通力」
 だがまだオオイナリは戦闘不能ではない。オオイナリは神々しい念力でのしかかる岩石を吹き飛ばし、態勢を立て直す。
「シャドーボール、三発だ」
 そして影の球を今度は三つ生成し、同時にメタングへと発射した。
「メタング、シャドークローで引き裂くんだ!」
 メタングも両手の爪に影を纏わせて飛来するシャドーボールを打ち消すが、メタングでは両手で捌けるのは二つまで。最後の一発は打ち消せず、メタングに直撃した。
「ソーラービーム」
 メタングが怯んだ一瞬の隙を利用し、オオイナリは全身に太陽光を浴びる。そして凝縮されたエネルギーを口腔内で圧縮し、光線としてメタングに発射。
 メタングは光線の直撃を受け、ブースターのように吹っ飛ばされて壁に叩き付けられる。効果はいまひとつだが、やはりかなりの威力だ。
「オオイナリ、シャドーボール」
 オオイナリは影の球を三つ生成し、メタングへと発射して追撃をかける。単発では効果がないことは、もうオオイナリにも分かっているようだ。
「シャドークローで防げないなら……突き破るしかない。メタング、バレットパンチ!」
 メタングは拳を固め、弾丸のようなスピードでオオイナリに突っ込んで拳を叩き込む。途中でシャドーボールを受けたが、それほど大きなダメージでもない。
「シャドークロー!」
「神通力」
 続けてメタングは影の爪を振りかざすが、オオイナリはギリギリのところで神通力を発し、メタングの動きを止める。
 ここで火炎放射が放たれれば絶望的だが、メタングはエスパーと鋼タイプ。エスパー技である神通力は効き難く、オオイナリも動きを止めるだけで精一杯のようだ。
 やがて神通力が解け、双方が後ろに下がる。
「……このままでは、どちらも消耗するばかりか」
 不意に、アーロンが呟く。
 メタングもオオイナリも、相手に決定打を与えられる技はあるのだが、それはフィアもアーロンも分かっている。だからこそその技を警戒し、受けないように気を配っている。
 となれば等倍以下の攻撃を当て合う形になるのだが、そんなことをちまちま繰り返していたら、あっと言う間に日が暮れる。それに消耗戦なら、耐久力の高いメタングが有利だ。
「ここらでそろそろ、決めたいところではあるな」
 アーロンは静かに呟くと、やはり静かに、オオイナリへと指示を出す。
「オオイナリ、火炎放射」
 指示を受けたオオイナリは、しかし炎を放たない。大きく息を吸い、吐き、深呼吸を繰り返すだけだ。
 だが、それだけだが、オオイナリの力が満たされていく感覚がフィアにも伝わってくる。
(力を溜めてる……早めに決めないと)
 オオイナリはフルパワーになったところで炎を噴射するはず。となればその力が充填し切る前に、決めなくてはならない。
「メタング、岩雪崩!」
 メタングは虚空からいくつもの岩石を降らせ、オオイナリを押し潰す。しかしオオイナリはまったく動じず、静かに深呼吸を続けるだけだった。岩に体のほとんどを埋め尽くされたオオイナリは、まるで岩を背負っているようにすら見える。
「……だったらもう、正面突破しかない」
 フィアとメタングも覚悟を決める。オオイナリの炎を正面から突き破ると、決意する。
 その直後だった。

「放て」

 オオイナリは口から激しい炎を放射する。日照りで強化されているとはいえ、その炎の規模と熱量は尋常ではない。メタングが喰らえば一撃で戦闘不能になってもおかしくないだろう。
 だが、
「メタング、岩雪崩だ!」
 正面突破とは言ったものの、こんな炎に向かって馬鹿正直に突っ込んでも焼かれてお終いだ。まずメタングは、虚空から岩石を降り注ぎ、壁を作る。
 とはいえこの壁も、オオイナリの炎で焼き崩されてしまうのが関の山だ。しかしそれでも壁、炎の勢いを大きく削ぐ役割は果たすはず。
「思念の頭突き!」
 次に頭に思念を集め、メタングは突っ込んだ。その時はもう岩の壁は焼き崩されてしまい、莫大な炎がメタングに襲い掛かったが、メタングももう後には退かない。全身全霊で突っ込む。
「耐えてくれ、メタング……!」
 頭に集中させた思念が、僅かながらも炎を減衰する。圧倒的な炎に飲まれながら、焼き焦がされながら、メタングは炎の中を突き進んでいく。
(もう少し、あと少しだ……!)
 やがて頭の思念も消え、本格的に炎がメタングを焼いていく。
 しかし、もう既にこの時、フィアの目的はほとんど達成されていた。
(今だ!)
 オオイナリの炎は確かに強大だが、その強大な炎をいつまでも放てるわけではない。むしろ
 つまりフィアの狙いは、オオイナリが疲れて炎の出力が落ちるまで耐え切ることだ。

「メタング、バレットパンチ!」

 メタグロスは炎の中、弾丸のようなスピードでオオイナリに突っ込む。
 火炎放射を放っていたオオイナリも、高火力の炎を吹き続け、披露している。そこにメタングの渾身の拳が、叩き込まれた。
「……ここまでか」
 ブースターからのダメージに、攻撃の疲労が溜まり、そこにとどめのバレットパンチ。
 オオイナリの体力は遂に限界を迎え——戦闘不能となった。



 アーロンは戦闘不能となったオオイナリを無言でボールに戻し、そのボールを仕舞い込むと、フィアへと歩み寄る。
「お前の力、しかと見せてもらった」
「僕の力だけじゃないですよ……ヌマクローやパチリス、ブースターに——メタング、皆の力があったからこそです」
「……そうだな」
 フッと、そこで初めてアーロンは微笑みを見せる。
 そして懐から薄い箱を取り出し、フィアに差し出した。
「これがお前と、お前のポケモンが全力を出し切った結晶、俺に勝利した証——」
 そこに収められていたのは、噴火して溶岩を噴き出した、火山のような形状のバッジだ。
「——ボルケーノバッジだ。受け取れ」
「はい! ありがとうございす!」

 かくして、フィアは四つ目のジムバッジを手に入れた。これでフィアは、半分のジムバッジを蒐集したこになる。
 だが、ジムバッジを集めることは、フィアの物語が進むということ。物語が進むということは、彼の物語に潜む巨大な存在に、近づくということである——



カゲロウジム戦、終了です。というかメタングはよく勝てましたね、シャドークローと岩雪崩があっても、かなり厳しいバトルだと思うのですが。ちなみにボルケーノバッジのボルケーノは、バッジの形まんまで火山という意味です。本当は、英語の頭文字が『V』なので発音重視でヴォルケーノバッジにしたかったのですが、ジムバッジの文字数は今のところ最高八文字ですからね。そこは不承不承、仕方なく妥協して合わせました。さて、では次回ですが……やることは決まっているのですが、どう言えばいいのか分からないです。たぶんイベントって言うのが一番正しいと思うんですけど……うーむ。まあさらに言うなら、たぶん新キャラが出ると思います。上手く事が進めばですけど。では次回、そんなこんなでイベント発生です。お楽しみに。