二次創作小説(紙ほか)

第6話 setting off ( No.14 )
日時: 2013/04/17 17:17
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
プロフ: フィア、フロル。旅立ちの時——

 フィアはフロルの家に一泊させてもらい、翌日、ポケモン研究所を訪れた。
「よく来たな、二人とも。待ちくたびれたぜ」
 研究所に入るや否や、博士は傲岸不遜な態度で二人を迎えた。
「お前たち二人は今から旅立ってもらうが、ある程度は指針がないとやっていきづらいだろう。元の世界に帰るための手掛かりなんて、どう探せっつー話だ。なぁ、フィア?」
「え、えっと、はい。そうですね……」
 確かにその通りだ。ここはフィアからすればまったく別の世界で、手掛かりなんてどう探せばいいのか分からない。
「フロルもトレーナーとして修行するにしても、どうすればいいのか分からねぇよな。だからとりあえずお前ら、各地のジムを巡れ。そんで、ジムリーダーをぶっ飛ばしてこい」
「ジムリーダー?」
 またしても聞き慣れぬ言葉に、フィアは首を傾げる。
「ジムリーダーってのは、ポケモンジムを管理する者だ。ポケモンジムは多くの街にあり、一つの街に一つある。ジムリーダーも突き詰めればポケモントレーナーの一種なんだが、そんじょそこらのトレーナーとはわけが違う。そうだな、トレーナーを試すトレーナーとでも言うのか。大雑把に言っちまえば、強ぇトレーナーだ。で、そのジムリーダーに勝つとジムバッジなるものが貰え、これを八つ集めるとポケモンリーグに挑戦できる」
「ポケモンリーグ?」
 またまた聞かない言葉に、再び首を傾げるフィア。それに対して博士は説明を続ける。
「ポケモンリーグっつーのは、トレーナーの最高峰とでも言うべき場所だ。四天王とチャンピオントレーナーの五人で構成され、こいつらを全員倒すと、その地方で最強のポケモントレーナーだということが証明されるんだ」
 分かったか? と博士が言い、フィアは首を縦に振る。本当はまだよく分からなかったが、そのうち分かるだろうと判断したのだ。それと、あまり何度も聞き返すと博士が怒りそうだったから、というのもある。
「とりあえずお前らには、これをやろう」
 言って博士が手渡して来たのは、二つの機械だった。一つは赤く、縦に長い薄型の長方形の機械。もう一つモノクロカラーで、こちらは横に長い薄型の長方形をした機械だった。
「赤いのはポケモン図鑑。それにポケモンの情報を登録していけば、ポケモンの詳細な情報が分かる優れもんだぜ」
「じゃあこっちは?」
 胸を張る博士をスルーして、フロルはもう一つの機械を掲げた。
「……そっちはP・ターミナル。通称ターミナルだ。最近ホッポウに根城を構え始めたアシッド機関が開発したもんで、ホッポウ地方の全トレーナーに無料配布してんだよ。メールやテレビ電話みてぇな通信が主な使い方だが、それ以外にもいろいろ機能がある。インストールして機能を追加することもできるぜ」
 若干ふて腐れたような態度で説明する博士。どうしたのだろうか。
「さて、そんじゃあまずはこの中から一匹、ポケモンを選べ。俺からの餞別だ」
 そう言って博士が取り出した箱の中には、モンスターボールが三つ入っていた。
「イーくん——博士、わたしたちにポケモンくれるの?」
「おうよ。だが中身は見せねぇぞ。見せたら面白くねぇからな」
 となると、どっちから取るか決める必要があるのだが、
「じゃあわたしこっち。フィアはどれにするの? ……あれ? どうしたの?」
「いや……なんでも」
 フロルはさっさと自分のポケモンを取ってしまった。まあどうせ中身は分からないのだから、後に取ろうが先に取ろうがあまり変わらないのだが。
「じゃあ、僕はこれで……」
 フィアもボールを取り、博士は箱を閉じて仕舞い込んだ。
「博士、ポケモン見てもいい?」
「ああ、構わねぇ。念のためにポケモン図鑑も異常がねぇかチェックしとけ。ついでだ」
 博士の言葉を半分ほど聞き流し、フロルは爛々とした目つきでボールの中央ボタンを押す。すると、中から光りと共に一匹のポケモンが現れた。
 オレンジ色の体色に小さな体。頭からは三本の毛が跳ねており、小さな嘴があるところを見ると鳥型のポケモンなのだろう。非常に愛くるしい容姿をしている。

『Information
 アチャモ ひよこポケモン
 体内の炎袋で炎を燃やしているため、
 抱きしめると暖かい。最初に見た
 トレーナーの後を付いて行く習性がある。』

 図鑑を開くと、そんな説明文が載っていた。
「とりあえず図鑑の調子は大丈夫か。フィア、お前もポケモン出せよ」
「あ、はい。えっと、こうだっけ……」
 図鑑を仕舞い、フィアも博士から貰ったボールの中央ボタンをプッシュする。すると中から、光と共にポケモンが出て来た。
 水色の丸っこい体躯。頭には直立したヒレがあり、頬にはオレンジ色のエラが付いたポケモン。

『Information
 ミズゴロウ 沼魚ポケモン
 頭のヒレは周りの様子を察知する
 敏感なレーダー。餌を求めて川底
 の岩も粉々にするほどのパワーがある。』

 どうやらこのポケモンはミズゴロウというらしい。図鑑を見る限りパワーのあるポケモンのようなので、頼りになる。
 フロルはアチャモを抱きしめ、フィアはミズゴロウのヒレやエラを弄り、しばらくポケモンとじゃれていると、見かねたのか博士がパンパンと手を叩いた。注目、ということなのだろう。
「ほら、こっち向け。今から近くの街を教えてやっから。ポケモンとじゃれ合うのはいつでもできるだろ」
「あぅ、ごめん……」
「すいません……」
 博士に咎められ、二人は平謝り。
「とりあえずこっから一番近いのはシュンセイシティだな。あそこにはジムもあるし、まずはそこを目指せ。なにか分からないことがあれば、いつでも連絡を寄越せばいい」
「は、はいっ」
「うん、わかったよ」
 そしてフィアとフロルの二人は研究所を後にし、シュンセイシティへと向かう——
「あ、そうだ。フィア、ちょっと待て」
 ——直前に、呼び止められた。
「こいつを持ってけ」
 振り返ったフィアに向けて博士は二つの物体を投げつけ、フィアは辛うじてそれらをキャッチした。それは、一つのモンスターボールと、熱を帯びた暖色の石だった。
「これは……?」
「モンスターボールの中にはダイケンキが入ってる。ジム戦やトレーナー戦での使用は禁止するが、マジでやべぇ時には使え」
 真剣な眼差しで、博士は言う。もはや睨み付けるような目になっているのでフィアは怯んでしまう。
 だが怯んだのはそれだけではない。
「僕に、ダイケンキを持たせるんですか? でもこのダイケンキは——」
 ダイケンキはあの青年のポケモンだ。フィアを救ってくれた青年の。恩人の大事なポケモンを、自分のような者が持っていていいのだろうか。そんな疑念がフィアの中にはあった。しかし博士は、それを否定する。
「分かってる。このダイケンキはお前のポケモンじゃねぇ。だがな、お前を助けたトレーナーだって、お前にとっては手掛かりだろ。だったらそいつのポケモンを持ってた方がいいに決まってるし、なにより助けられたんなら、自分でその恩を返せ。お前がこいつを届けるんだ」
「……はい。分かりました」
「それと、そっちの石は炎の石っつーアイテムだ。そっちも、やべぇ時にイーブイに触れさせてみろ。まぁやばくない時でもいいが、使うかどうかはお前次第だ」
 分かったらもう言っていいぞ、と博士は追い払うように手を振る。引き留めておきながらそれはないんじゃないかと思うが、こうして旅立つための助力をしてもらっているので、邪険にはできない。
「よし……それじゃあ、行こうか。シュンセイシティに」
「うん!」
 かくして、フィアとフロルの旅は始まった。最初の目的地は、シコタン島唯一のジムがある街、シュンセイシティだ。



今回は研究所通例のイベント発生です。貰えるのがシンオウ御三家ではなくホウエン御三家なのには、さしたる意味はございません。ただ白黒の好みがホウエン御三家だっただけです。それと今作から、新しいポケモンが出るたびにインフォメーション……図鑑説明を入れていきます。説明文は既存の説明文をもとに、白黒が自分で考えて作っています。たまにネタが織り交ぜられている時もあるので、その時はくすりとでも笑って頂けると嬉しいです。さて、それでは次回は最初のジムがある街、シュンセイシティです。初っ端からジム戦があるかどうかは、次回をお楽しみに。