二次創作小説(紙ほか)
- 第7話 First Battle ( No.17 )
- 日時: 2013/04/18 04:13
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- プロフ: シュンセイシティ、到着。
シュンセイシティはハルビタウンから歩いて小一時間ほどの場所にある街で、特に名産や名所があるわけでもない、普通の街だった。
道路はアスファルト、家は木造。そして街の中央には、白塗りのポケモンジム。
「……ここが、シュンセイジム?」
「そのはずだけど……このタウンマップが正しければ」
フィアはターミナルの機能、タウンマップと目の前の建物を交互に見遣り、場所を照らし合わせる。ジムの場所はここで間違いないはずだ。
「思ったより簡単に見つかったね、ジム。どっちから挑戦する?」
「えっと……フロルからでいいよ。僕はもう少し特訓したいし……」
ここまでの道中、フィアは数体のポケモンと戦い、倒しているのだが、それでも圧倒的に経験不足。ジムリーダーとは、端的に言って強いトレーナーだ。用心するに越したことはないだろう。
「じゃあ、先に挑戦させてもらうね」
「うん、頑張って」
そう言ってフロルを見送り、フィアはポケモンセンターに向かった。
ひとまずポケモンを回復させ、この近くにトレーナーと戦える場所はないか、女医に聞くと、なんでもホッポウ地方のポケモンセンターの地下にはトレーナー同士の交流の場が設けられているそうで、そこならトレーナーとバトルができるらしい。
野生のポケモンとしか戦ったことのないフィアとしては、トレーナーとのバトルは貴重な経験だ。早速その地下に向かった。
向かった、のだが、
「……えっと」
「すぴー……」
トレーナーが寝ていた。
歳はフィアと同じくらいだろう、鼻提灯を膨らませてベンチで熟睡している少年が、そこにいた。
全体的に白や黄色を基調とした服装で、目を引くのはつばのないふんわりとした大きな帽子。首には長く黄色いマフラーを巻き、黄色いTシャツの上から白九袖の広い半纏のようなものを羽織っている。
「鼻提灯なんて初めて見た……」
変な感動を抱きながら、フィアは恐る恐るその少年へと近付く。そして、意を決し、言葉をかけた。
「あの……」
「んぅ……っ」
パチン、と鼻提灯が割れた。すると少年は体を起こし、こちらを向く。
「んー、あー……えーっと、なんだっけ?」
眠たげな垂れ目を擦りつつ、少年はそんなことを言ってくるが、なんだっけと言われても返答に困る。
しかし幸か不幸か、少年は自分の中で勝手に解釈をした。
「あ、もしかしてトレーナー? バトル希望?」
「えと、そんな感じ、かな……」
遠慮がちに返すフィアに、少年は嬉しそうな声をあげる。
「おー。よかったよかった、このまま誰も来なかったどうしようかと思ってたよ。あんまり誰もこないもんだから、つい寝ちゃった。オレはイオン、よろしく」
「あ、えっと、僕はフィアだよ。よろしく……」
イオンと名乗った少年は立ち上がり、首や背骨をコキコキと鳴らす。随分と長く寝ていたようだ。
「そんじゃー始めよっかー。あ、君……フィア君だっけ? ポケモン、何体いる?」
「えっと、ちょっと待って」
フィアは自分の手持ちポケモンを指折り数え、
「さ……二体、だよ」
と答えた。
「二体かー。三対三がよかったんだけど、しょうがないか。じゃあ二対二のバトルでいい?」
「うん、いいよ」
そんなわけで、フィアの初めてのトレーナーとのバトル。相手は、マイペースな居眠り少年、イオンだ。
「よーし。じゃ、オレからポケモン出すよ。出て来い、キモリ!」
イオンの一番手は、グリーンカラーのヤモリのようなポケモンだ。
『Information
キモリ 森トカゲポケモン
足の裏に棘があるので壁を垂直に
登ることができる。木の枝や花
などを咥えてると力が出るらしい。』
図鑑によると、キモリというポケモンらしい。しかしイオンのキモリは図鑑にあるような木の枝や花は咥えていない。
「えーっと、しゃあ僕は——」
今回のバトルはポケモンに経験を積ませるためなので、まだ戦闘経験の少ないポケモンをバトルに出したい。となると、
「——ミズゴロウ、出て来て」
フィアの初手は、ミズゴロウだった。
「え……?」
そのチョイスに対し、イオンは驚いたような表情をする。
「草タイプのキモリに対して水タイプのミズゴロウって……なにか対策でもしてんの?」
「……? タイプ?」
フィアが首を傾げるとイオンは、あーと納得したような声を出す。
「フィア君、まだ初心者なのかー。えーっと、タイプっていうのはポケモンバトルで重要な要素で、このタイプによって有利に戦えたり不利に戦えたりするんだよ。例えば草タイプは水タイプに弱く、炎タイプは水タイプに弱く、水タイプは草タイプに弱い、みたいなねー。これを弱点っていって、弱点を突くとダメージが二倍になるんだ」
つまりキモリは草タイプで、ミズゴロウは水タイプ。相性ではミズゴロウが不利なのだ。
「ターミナルでも調べられるから、あとで見てみれば? あと、ここのジムリーダーはタイプの相性分かってないと、倒すの難しいよー」
「え? イオン君、シュンセイジムのジムリーダー倒したの?」
「んー、まーねー。らくしょーらくしょー」
気の抜けた感じだが自慢げなイオン。しかしジム戦前に有益な情報を得ることが出来た。どうやらシュンセイジムのジムリーダーは、タイプ相性を重視しているようだ。
「ま、とりあえず始めようか。キモリ、タネマシンガン!」
最初に動いたのはキモリだ。キモリは口から無数の種を発射し、ミズゴロウを攻撃。効果抜群なのでダメージは大きい。
「ミズゴロウ、反撃だよ。水鉄砲!」
ミズゴロウも負けじと水流を発射するが、こちらは対照的に、キモリへのダメージは少ない。
「タイプ相性は攻撃を受ける側にも適応されるよ。草タイプは水タイプに対して強いから、水タイプの技のダメージを半減するんだ。キモリ、電光石火!」
イオンにレクチャーされつつ、キモリが高速で突っ込みミズゴロウを攻撃。今度は弱点を突かれなかったので、ダメージはそれほど大きくない。
「ミズゴロウ、体当たりだ!」
「遅いって、アクロバット!」
ミズゴロウはキモリに向かって体当たりをしようとするが、キモリは俊敏に動き回り、ミズゴロウを尻尾で攻撃する。かなりすばしっこい。
「だったら、泥かけ!」
視界を悪くさせようと、ミズゴロウは地面を蹴って泥を飛ばす。しかし、
「当たんない当たんない、電光石火!」
キモリは既に攻撃に移っており、ミズゴロウは弾き飛ばされてしまう。
「どんどん行くよー、キモリ。アクロバットだ!」
瞬時にキモリはミズゴロウの背後に回ると、尻尾を叩きつけてミズゴロウを攻撃。さらにキモリの猛攻は止まらず、
「けたぐり!」
今度はミズゴロウの足を払って転ばせ、ダメージを与える。けたぐりの威力はポケモンの体重に依存する。ミズゴロウは大して重いポケモンではないのでダメージは少ないが、態勢を崩されてしまった。
「アクロバット!」
休む間もなくキモリは攻撃を続け、ミズゴロウを押し飛ばした。
これほどのスピードで攻撃できるキモリも凄いが、そのキモリの猛攻を耐えているミズゴロウの耐久力も相当なものだった。しかしそれももうすぐ限界、ミズゴロウの体力は残り僅かだ。
「うぅ……全然攻撃できない。ミズゴロウ、岩砕き!」
岩を砕く勢いで突っ込むミズゴロウだが、単調な攻撃では簡単にキモリに躱されてしまい、隙を作るだけだった。
「とどめ! キモリ、タネマシンガンだ!」
キモリは無数の種を発射してミズゴロウを攻撃。その弱点を突く連撃で、ミズゴロウはその場に倒れ込んだ。
「あ……ミズゴロウ!」
ミズゴロウは完全に目を回しており、もう戦える状態ではない。戦闘不能だ。
「ありがとう、ミズゴロウ。戻って休んで」
フィアはミズゴロウをボールに戻す。結局、キモリは効果いまひとつの水鉄砲一発しかダメージを与えられなかった。
「あと一体か……今度は相性も大丈夫なはず。出て来て、イーブイ!」
フィアの二体目はイーブイだ。
「へー、ノーマルタイプかー。でもキモリは格闘タイプ技のけたぐりがあるから、こっちの方が有利って感じ? キモリ、けたぐり!」
キモリは相変わらずのスピードでイーブイに接近し、足払いを仕掛けるが、
「イーブイ、躱して目覚めるパワーだ!」
イーブイはジャンプしてけたぐりを躱すと、赤い球体を発射する。球体はキモリに直撃すると、メラメラと燃え上がった。
「えっ? キモリ!」
キモリはその一撃で戦闘不能。スピードはあっても耐久力は低いようだ。
「あっちゃー、炎タイプの目覚めるパワーかー……戻れ、キモリ」
イオンはキモリを戻し、次のボールを手に取る。これでお互い、ポケモンは一体ずつだ。
「よーし。そんじゃ、次行ってみますかー」
そして、イオンの次のポケモンが繰り出される——
いよいよシュンセイシティに到着、しかしジム戦はフロルに譲り、フィアはひとまず特訓。そして今回の新キャラ、マイペースな居眠り少年、イオンの登場です。スピードでミズゴロウを攪乱して倒しましたが、それ以前に今回の敗因は完全にフィアの知識不足ですね。それでは次回、イオン戦決着です。イオンの次なる手はなんなのか、次回もお楽しみに。