二次創作小説(紙ほか)

第65話 endurance ( No.171 )
日時: 2013/07/09 00:57
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
プロフ: ハブラの二番手は、鉄壁無双の観葉植物。

「戻れ、ファントマ」
 ハブラは戦闘不能となったファントマをボールに戻し、次のボールを手に取る。
「相性が悪かったとはいえ、まさかファントマがやられるなんてね。苦手なタイプへの対策もしていたし、正直負けるとは思わなかった……だから次は、もっと堅実に行かせてもらう」
 そして、そのボールを放り投げる。
「さあ出て来い、リーフィス!」
 ハブラの二番手は、植物のような体をガラス鉢で防護した、変わった姿のポケモン。

『Information
 リーフィス 観葉ポケモン
 常に甘い香りを分泌している。
 この香りで獲物の戦意を喪失
 させ、ゆっくりと捕食していく。』

「また変なポケモンが出たな……でも」
 フィアはボールを一つ掴み、しばし逡巡する。
(リーフィスは草と水タイプ、ヌマクローだと相性が悪すぎる。積極的に攻めるポケモンではなさそうだけど、こっちは手負いだし、ここは少し休ませるべきかな)
 そう思い直して、掴んだボールを取り出した。
「戻って、ヌマクロー」
 そしてヌマクローをボールに戻す。それを見てもハブラは特に反応を示さない。予想の範疇だったのだろう。
「さて、相手は草・水タイプ。なら、とりあえずは君かな。頼んだよ、パチリス!」
 フィアが交代で繰り出したのはパチリスだ。相性は決して良いわけではないが、他のブースターやメタングよりはマシである。
「パチリス、まずは帯電だ!」
 パチリスは体に電気を帯び、攻撃能力を高める。堅そうなリーフィス相手なら、決定力を上げてからの方が戦いやすいだろう。
「リーフィス、熱湯だ!」
 そんなパチリスに、リーフィスは熱く煮え滾る熱湯を発射する。煮沸した水流はかなり熱そうだが、勢いや水量は意外とない。
「躱して! エレキボール!」
 パチリスは軽く後ろに下がって熱湯を躱し、尻尾で生成した電撃の球をリーフィスに投げつける。雷球はリーフィスの体を覆うガラス鉢に直撃したが、ダメージはほとんどなさそうだ。
「やっぱり耐久力に趣を置いたポケモンか……ならもう一度、帯電だ!」
 リーフィスの防御力は証明された。なのでパチリスは、さらに攻撃能力を上げるため、自身に微弱な電気を帯びるが、
「熱湯!」
 リーフィスが熱く煮え滾る熱湯を発射する。
 だがリーフィスは防御に秀でていても、攻撃は大したことがない。生半可な勢いで発射された熱湯など、パチリスにとっては脅威でもなんでもない。
「躱してエレキボール!」
 パチリスは跳躍して熱湯を躱し、尻尾に大きな雷球を生成する。そしてそのまま宙返りをするように体を回転させ、尻尾を振り下ろすように雷球を飛ばす。
 雷球はリーフィスの顔面に直撃。初撃よりも格段に大きなダメージを与えられた様子だ。
 しかし、

「リーフィス、宿木の種!」

 直後、リーフィスはいくつかの種子を射出した。
「っ!? パチリス?」
 射出された種子はパチリスに当たるとすぐに発芽し、蔦のように纏わり付く。
「この技は……?」
 フィアがターミナルを取り出して技を調べようとするが、ハブラはそれを制するように口を開く。
「宿木の種。草タイプのポケモンが得意とする技で、草タイプの耐久型のポケモンにおける上等手段さ。この宿木の種を植え付けられたポケモンは時間の経過と共に体力が奪われていく。そしてその奪うポケモンは当然、種を飛ばした張本人だ」
 と言って、視線をリーフィスに向けた。
 いくらフィアでも、今のはブラの言葉が理解できないわけではない。この状況がどういう状況なのかが理解できないわけではない。
(半永久的にパチリスはリーフィスに体力を吸い取られる……耐久型ポケモンの常套手段か、成程ね……!)
 リーフィスは硬い、そして守りも堅い。こちらの攻撃は通じ難く、加えて宿木の種で回復も行うとなれば、そう簡単に倒すことはできないだろう。しかも宿木の種によるダメージは攻撃力に依存しないため、リーフィスの欠点である火力もカバーしている。
「厄介なことになってきたな……パチリス、必殺前歯だ!」
 パチリスは軽いフットワークでリーフィスを攪乱しつつ接近し、鉢から飛び出している葉っぱに前歯を立てる。
 ガラス鉢に攻撃しても効果は薄いが、やはり本体に直接攻撃すればそれなりのダメージはあるようで、リーフィスは少しだけ呻いた。だが、
「残念。そう簡単には行かないよ。リーフィス、ギガドレイン!」
 刹那、地中からパチリスに纏わりついているものよりも太くて長い、蔦のような植物が飛び出し、宿木と共にパチリスに絡みつく。
「パチリス!」
 そして今度はパチリスが呻き声を上げる。蔦で縛られているからというよりは、普通に体力を削られているように見える。
 やがてパチリスは蔦から解放されるが、息が荒く、体力がかなり減っている。
 それとは対照的に、リーフィスは先程までのダメージがなかったかのようにピンピンとしていた。
「ギガドレインも、草タイプの主力技みたいなものかな。攻撃と同時に体力が回復できる」
 宿木で回復し、ギガドレインでも回復する。どうやらこのリーフィスは、本当に耐久に特化しているようだ。
「さーて、そのパチリスも宿木で結構削れただろうから、そろそろ決めようか? 熱湯!」
 リーフィスは煮沸された熱湯を放つ。やはり勢いは中途半端だが、消耗したパチリスには驚異の一撃だ。
「躱して!」
 少し大袈裟に横っ飛びし、パチリスはその一撃を回避する。
「熱湯は下手したら火傷するし、これ以上攻撃は受けられない……でも、攻める。種爆弾!」
 パチリスは少し前進し、リーフィスにいくつもの種子を飛ばす。宿木よりも大きいそれはリーフィスに触れると、すぐさま炸裂し、リーフィスを爆撃する。
「エレキボールだ!」
 間髪入れずにパチリスは雷球を飛ばして追撃。的は小さいが、確実に本体に攻撃を加えた。
「まだそんなに動けるんだ。リーフィス、熱湯!」
「躱してエレキボール!」
 襲い掛かる熱湯を避けつつ、パチリスはリーフィスに雷球を撃ち込む。
 必殺前歯ならそれなりの火力が見込めるのだが、下手に接近すればまたギガドレインで体力を吸い取られかねない。なのでここは、中・遠距離からの攻撃で確実にリーフィスを削る作戦を取る。
「エレキボール!」
 一度に三つの雷球を生成し、パチリスはそれらを同時に放つ。三つのうち二つは本体を攻撃したが、残る一発は鉢に当たって弾かれてしまった。
「まぁ、やっぱそうくるよねぇ……ならこれだ。光合成!」
 ハブラの指示を受け、リーフィスは葉っぱを広げて天を仰ぐ。高く上った太陽はギラギラとリーフィスに照り、光を浴びせている。
 いや、違う。確かにリーフィスは光を浴びているが、同時に自らも淡い光を発していた。そしてその光を受けた部位の傷が、みるみるうちに癒えていく。
「っ! 回復技……!」
「そうだね。耐久型のリーフィスだ、普通の回復技を持っていても不思議はないだろう? 間接的な日照り対策にもなるしね。熱湯!」
 唐突に技を指示し、リーフィスから素早い熱湯が発射される。パチリスは寸でのところでその攻撃を躱したが、完全ではなく、少しだけ掠めてしまった。
 リーフィスの体力は減らず、逆にパチリスは体力を奪われ、満身創痍の中、さらに悪いことは続く。
「火傷……!」
 フィアは歯噛みする。見れば、パチリスの熱湯を掠めた尻尾は赤く腫れ、火傷を負ってしまっている。これでパチリスの体力はさらに削られ、攻撃力も低下してしまった。
「うん、上手い具合に機能してくれたようだ。もうそのパチリスは放っておくだけでやられるだろうけど、攻撃は止めないよ。熱湯だ!」
 リーフィスは鋭い眼差しで狙いを定め、ふらふらになったパチリスへと熱湯を噴射する。
「くっ、躱してパチリス! エレキボールだ!」
 パチリスはなんとか体を動かして熱湯を避け、雷球を飛ばす。だが、決定打には乏しい。
「種爆弾!」
 パチリスは前に出ると、続けていくつもの種子を投げつける。放物線を描いてそれぞれ飛んでいく種子はリーフィスの頭や葉っぱに当たり、炸裂していく。
 しかし、やはりリーフィスへのダメージはさほど大きくない。また宿木や光合成で回復されるのがオチだろう。
 だがその時、放たれた種子の一つが、リーフィスのガラス鉢の中に転がり込む。そして刹那、爆発した。
「っ! リーフィス!」
 その爆発を受け、リーフィスが甲高い声で絶叫する。
 種爆弾一つが爆発したところで、その威力はたかが知れている。普通ならリーフィスに決定打を与えられるダメージにはならないはずだが、どういうわけかその一発だけは、リーフィスに絶大な衝撃を与えた。
「……そうか、あの鉢の中がリーフィスの弱点なんだ」
 フィアの知識の中にも、硬い殻などを持つ生物は、その中身が弱いという常識がある。ポケモンであるリーフィスにも、その常識は通用するようだ。
「だったら一か八か、接近戦で攻める! パチリス、必殺前歯!」
 パチリスは余力を振り絞って跳躍し、リーフィスの葉っぱにかじりつく。火傷の効果もあり、それによるダメージはほとんどないが、
「エレキボール!」
 直後、尻尾に雷球を作り出し、それを素早く、かつ的確に鉢の中へと撃ち込む。その一撃で、またもリーフィスは天を仰いで絶叫する。
「もう一発だ!」
 リーフィスが悶え苦しんでいる間に、もう一発雷球を撃ち込む。これだけで、リーフィスの体力はかなり失われただろうことが想像できる。上手く行けば、このまま押し切れるかもしれないと、そう思えるほどに有効打を与えられた。
 だが、しかし、
「——ギガドレイン!」
 刹那、地中から蔦のような植物が飛び出す。蔦は不規則に蠢き、瞬く間にパチリスに絡みついた。
「しまった……パチリス!」
 フィアは思わず叫ぶが、時既に遅し。
 蔦に絡みつかれたパチリスは、残った体力を全て吸い尽くされてしまい——地に落ちた。



かなり久々の更新です。何度も言っていますが、白黒はこのシーズンは多忙なものでして……ただまあ、理由は多忙だけじゃないんですよね。白黒はかなり飽きっぽい性格なので、近頃ポケモン熱が冷めてしまい、執筆に熱が入らないんですよね。だからそれも相まって、更新が滞っていると……一応、ちまちま書いてはいるんですけどね。それでも全然筆が進まないです。とはいえ執筆自体を止める気は毛頭ないです。白黒は冷めやすいですが、同時に熱しやすくもあるので、XYが発売されればまたポケモン熱も戻って来るでしょう。というわけで次回の更新も遅いと思いますが、次回もお楽しみに。