二次創作小説(紙ほか)

第67話 the torch ( No.175 )
日時: 2013/07/15 16:14
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
プロフ: ライウタウン大会、二回戦を制するのはどちらか……!

「ブースター、ニトロチャージ!」
 ブースターは全身に炎を纏い、その炎を推進力にして突進。リーフィスに真正面から突っ込む。
 硬いガラス鉢でその攻撃を受け止めようとするリーフィスだったが、ブースターのニトロチャージは予想以上に重く、その一撃でリーフィスは、ざりざりと大きく後退し、態勢を崩してしまった。
「っ、根性があるとはいえ、凄い力だな……!」
 そう、ハブラの言うように、ブースターには根性がある。無論それは精神的なことではない。ブースターの特性だ。
 ハブラのポケモンの技に状態異状を付加させる能力によって、ブースターは毒状態させられた。耐久型のリーフィス相手にこれは痛手に見えるが、しかし状態異状を受けたということはブースターの特性、根性が発動するということでもあった。
「アイアンテール!」
 ブースターは続けて尻尾を鋼鉄のように硬化させ、思い切りリーフィスの側頭部に叩きつける。その追撃で、リーフィスはさらに姿勢を崩す。根性で攻撃力の上がったブースターなら、効果いまひとつの攻撃でもそれなりの威力が出る。
「もう一度!」
 今度は逆方向から尻尾を振るい、また頭部に叩き込む。
「くっ、一旦動きを止めた方がいいかな。リーフィス、ギガドレイン!」
 リーフィスは崩れた姿勢のまま地面から蔦のような植物を伸ばす。ブースターはそれを素早く動き回って躱そうとするが、蠢く蔦はブースターの動きを先読みし、瞬く間にその身に絡みつく。そして体力を吸い上げる。
「ダメージはあんまりないはずだけど……動きを止められるのは嫌かな。焼き払って、火炎放射!」
 ブースターは口から炎を吐き、体に絡みつく蔦を燃やして強引に脱出してしまう。多少のダメージはあるが、微々たるものだ。
「ニトロチャージ!」
 そして地面に降り立つと、炎を纏って猛烈なスピードでリーフィスに突貫。吹っ飛ばすまでは行かなくとも、リーフィスを大きく後退させた。
「アイアンテールだ!」
 続けて振り上げるようなアイアンテールで追撃。
「ニトロチャージでスピードが上がっているのに、根性で攻撃力まで強化されたらたまったものじゃないな……でも向こうは毒状態だし、体力が尽きるまで凌げれば……」
 そもそもそれが耐久型ポケモンの戦い方なのだが、それはさておき、リーフィスはここから本格的に守りに徹する。
「光合成!」
 リーフィスは太陽光をその身に浴び、受けた傷を回復する。
「ブースター、回復を止めるんだ! ニトロチャージ!」
 ブースターは地面を蹴り、凄まじい勢いでリーフィスに突っ込んでいく。
「迎え撃て! 熱湯!」
 対するリーフィスは熱く煮え滾る熱湯を発射するが、そんなものでブースターが止められるわけもなく、軽く突き破られてリーフィスに激突する。
 だが威力はある程度抑えられたようで、リーフィスの姿勢は崩れていない。
「そこだ、宿木の種!」
 リーフィスはブースターの動きが止まった一瞬の隙を狙い、宿木の種を射出。ブースターに植え付け、発芽した植物を絡ませる。
「しまった……! くっ、火炎放射!」
 フィアとしては宿木の種の存在をすっかり忘れてしまっていたが、悔やんでももう遅い。
 ブースターは次の一瞬で口から炎を噴射し、リーフィスのガラス鉢の内側を焼きつける。
「またか……リーフィス、真上に熱湯!」
 リーフィスはガラス鉢の内側が弱点。そこでいつまでも燃える炎を放っておくわけにもいかないので、リーフィスは真上に熱湯を噴出し、落ちてくる湯水で消火しようとする。
 しかし、
「起死回生!」
 直後、ブースターは渾身の力で尻尾をスイングし、リーフィスを押し飛ばした。
「!?」
 毒と宿木で体力がかなり削られているとはいえ、その威力にハブラは目を見開く。数秒後には熱湯が落下するが、そこにリーフィスはいない。
「次で決めるよ! ブースター、起死回生!」
 今度は突撃だ。ブースターは残った力を振り絞り、全身全霊でリーフィスに突っ込む。
「リーフィス!」
 その一撃を喰らい、リーフィスのガラス鉢に小さなひびが入った。それだけの威力をガラス鉢は受けたようだが、鉢の内部に伝わった衝撃はそれ以上のようだった。
「……はぁ。戻れ、リーフィス」
 ハブラは、二度目の起死回生に耐え切れず、戦闘不能となったリーフィスをボールに戻す。
「うーん、どうも今日は調子を狂わされるなぁ……そんなこと言っても負け惜しみにしか聞こえないだろうけど。ともかく、次で最後か」
 ハブラの言うように、彼は最後のボールを手に取り、構えた。
「残った相手は二体だけど、どっちも手負い。頼むぞ、メラルバ!」
 ハブラの最後のポケモンは、ライカシティでも見たポケモン、メラルバだ。
「メラルバは炎タイプだから、断然ヌマクローが有利。それにブースターはかなり疲労してるけど……」
 ニトロチャージ連発で最大まで上がりきった素早さをここで手放すのも惜しい。根性も発動しているため、一気に攻めれば押し切れないこともなさそうだ。
「続けて頑張って、ブースター。ニトロチャージ!」
 ブースターは炎を纏い、突進する。そのスピードは、ブースターとは思えないほど速い。
「メラルバ、こっちもニトロチャージだ!」
 対するメラルバもニトロチャージで対抗するが、勢いがつく前にブースターが突っ込んで来て、しかも根性で攻撃力が上がっているため、そのまま吹き飛ばされる。
「追撃だよ! アイアンテール!」
 ブースターはそのまま、地面を抉らんばかりの勢いで蹴りつけて飛び出す。そして鋼鉄の如く硬化させた尻尾をメラルバへと振るうが、
「メラルバ、ワイルドボルト!」
 メラルバは今度は電撃を纏うが、まだ態勢が立て直されていない。
 その状態はブースターにとっては格好の的であり、メラルバに渾身の尻尾が叩きつけられるが、

バチッ

「っ、ブースター?」
 アイアンテールがヒットした瞬間、今度はブースターが態勢を崩してしまい、よろよろと後退する。
「今だメラルバ! 朝の日差し!」
 その隙にメラルバは太陽光を浴び、体力を回復する。
「あ……ブースター、火炎放射!」
 慌てて火炎放射で回復を妨害しようとするが、もう手遅れ。メラルバの回復は終わり、後退して炎を躱した。
「う……それより、今のは……」
 ブースターの攻撃が不自然に弾かれた現象。いや、さっきのは弾かれたというより、ブースター自身が離れたように見えた。
 その問いに応えるのは、やはりハブラだった。
「簡単な事さ。アイアンテールっていうのは、自身の体の一部を限りなく金属質に近づける技。金属は電気をよく通すからね、ワイルドボルトの電撃は鋼鉄化した尻尾を伝って、君のブースターに襲い掛かったのさ」
 滔々と語るハブラ。やはり彼は饒舌だ。
 それはともかく、そうなるとブースターは迂闊にアイアンテールで攻撃ができない。電導によるダメージは大きくないが、その後の隙が大きすぎる。さっきは回復だったが、これが攻撃なら残り体力の少ないブースターには致命傷だ。
「さあ、次行くよ。襲撃!」
 メラルバは不規則な動きでブースターに接近し、虚をついて背後に回る。
「ブースター、後ろ! アイアン——」
 ——テール、と続けようとしたところで、フィアは指示を止めてしまう。
 その一瞬でメラルバは前へと飛び出し、ブースターを吹っ飛ばす。効果いまひとつなのでダメージは少ない。
「うぅ、ニトロチャージ!」
「襲撃だ!」
 ブースターは炎を纏って真正面から突っ込む。対してメラルバはこちらを攪乱するような動きを見せるが、全速力のブースターはそれを軽く一蹴し、吹き飛ばす。
 しかし、
「朝の日差し!」
 メラルバはすぐに起き上がり、太陽光を浴びて傷を癒す。
 以前見た時の火力とは打って変わって、今回のメラルバは防御的だ。今の襲撃も攻撃するというより、攻撃を受け流そうとする動きに見えた。
(時間稼ぎ……素早さが最高状態のブースターと真正面からぶつかるのは不利だから、毒のダメージで倒れるまで粘るつもりなのかな……)
 となると、こちらも攻撃の手を緩めるわけにはいかない。
「ブースター、ニトロチャージ!」
「メラルバ、襲撃!」
 背後を取ろうとするメラルバを、ブースターはニトロチャージで吹き飛ばす。
「回復だ、朝の日差し!」
「させない! 起死回生!」
 むくりと起き上がり、光を浴びるメラルバにブースターの強烈な体当たりが叩き込まれる。効果いまひとつだが、威力はかなりのものだ。
「続けて行くよ! アイアンテール!」
 と、フィアは思わず指示してしまった。
「あ……しまっ——」
 気付いた時には、もう遅い。
 ブースターは尻尾を鋼鉄のように硬化させ、大きく振りかぶる。
「メラルバ、ワイルドボルト!」
 メラルバもそれを迎え撃つように電撃を身に纏う。そしてブースターの尻尾の一撃が叩き込まれるが、
「っ、失敗した……!」
 バチッ、と電気が弾ける音が鳴り、ブースターはよろよろと後退する。その隙にメラルバは朝の日差しで回復し、
「ニトロチャージ!」
 炎を纏って突撃する。
 効果はいまひとつ。だがリーフィス戦と毒のダメージが蓄積し、もう残り体力はほんの僅か。一分だって戦ってられないような状態だ。
 なのでブースターは、せめてもの置き土産として、今持てる渾身の一撃を繰り出す。
「起死回生!」
 ブースターは凄まじい気迫と勢いで前足を突き出し、メラルバを吹っ飛ばす。
「メラルバ!」
 メラルバは壁まで吹っ飛ばされ、そのまま叩きつけられた。かなりのダメージを受けたが、しかしまだ戦闘不能には至らない。
 だが、対するブースターはそうではなかった。
「……ありがとう、ブースター。よく頑張ってくれたよ」
 遂にブースターは毒によるダメージが蓄積し、限界を超える。
 ブースターは、戦闘不能となった。



熱は冷めても書く量が変わらず四苦八苦しております、白黒です。……とか、あとがきで登場台詞を決めることもないのですが。ですがやはり白黒は文字数が多いので、後から修正という形で更新しているのですが、これが少々煩わしくて。もっと最大文字数が増えればいいのに……管理人に言ったらどうにかなりますかね? 今のところ動く気はありませんが。まあそんなことは置いておくとして、次回予告的なものを。次回はハブラ戦決着です……と言えるかどうかは微妙ですが、とりあえずハブラ戦は終わります。というわけで次回もお楽しみに。