二次創作小説(紙ほか)
- 第68話 punishment ( No.176 )
- 日時: 2013/07/17 00:07
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
- プロフ: ライウタウン大会準決勝、相手は強敵、イオン——!
結果から言って、フィアはハブラに勝利した。
いくらブースターがやられたとはいえ、有効だがまったくないメラルバがヌマクローに勝てるはずもなく、かなり粘ってはいたが弱点を攻め続けられて最後には戦闘不能となってしまったのだ。
これでフィアは準決勝に進出することになったわけだが、二回戦を終えてフィールドを後にする際、ハブラの何気なく発した言葉がフィアの耳に届く。
「やっぱりリーフィスがやられたのはきつかったかな……あの子の言う通りだったよ」
「? あの子……?」
ハブラが何気なく言ったように、フィアも特に意味もなく、少し気になったというだけの理由で問い返した。
「うん。実はさ、今日の朝、食堂で変わった女の子と出会ってね。まあ女の子と言うには大人びてたんだけど、占い師なのか何なのか、カードを使って占ってもらったんだよ。それで、今日の試合は中堅が負けたら厳しいって言われたんだ」
どこかで聞き覚えのある話。フィアの頭の中では、フロルの言葉がリピートされる。
「あ、あの……その人は、どんな人でしたか?」
「え? えーっと……君ほどじゃないけど、ちょっと濃いめの赤毛を二つに括ってたっけ。背はわりと高めで、青と白のセーラー服を着てたかな」
フロルが言っていたものとほぼ同じ特徴を挙げるハブラ。まず間違いなく、二人の出会った少女は同一人物だ。つまり、
「やっぱり、部長だ……」
どうやらフィアの探す彼女は、まだ会場にいるらしい。それはそれで収穫だった。
「そう言えば、その子はなんかやけに意味深なことを言ってたな」
「え?」
「雑談ついでに、注目してる選手はいますか? って訊いてみたんだよ。ほら、僕も参加してるトレーナーだからね。多少なりともそういうのは気になるからさ。で、その子は、あえて言わないでおくわ、って。それから」
こう言ったんだ、とハブラは続けた。
「この大会の最後を見届けてから、あの子がどうなったのかが一番気になるかしらね、って——」
翌日。
やはり彼女は見つからず、フィアは心に蟠りを残したまま準決勝のステージへと立つ。
今日の準決勝を抜ければ、明日の決勝。そしてそこで勝てば、チャンピオン・ユズリとバトルできる。
そんな特典はさて置くとして、準決勝のフィアの相手は、フィアのよく見知った人物。勝ち進めば必ず当たるだろうと覚悟していた相手だ。それは、
「イオン君……やっぱり、勝ち進んできたんだね」
「当然っしょ。そーいうフィア君も準決勝まで来るなんて、やるじゃん」
一回戦ではフロルを、二回戦ではルゥナを倒した今大会きってのダークホース、イオンだ。
「フィア君は、部長さんだっけ? を見つけるために勝ち進まなきゃいけないんだろうけど、バトルになったらそんなの関係ないからね。オレも本気で行くよー」
「うん……分かってるよ」
言って互いにボールを構える。
そして、バトル開始の合図が鳴り響く。
「まずは君からだ、パチリス!」
「速攻で決めるよ、ニューラ!」
『Information
ニューラ 鉤爪ポケモン
鋭く器用な爪を持ち、悪知恵
が非常に働くため、泥棒のお供
とされることが多いポケモン。』
フィアの一番手はパチリス。対するイオンが繰り出したのは、分類通り鋭い鉤爪を持った黒猫のようなポケモン。尻尾や耳の片側は赤い羽のように飛び出している。
「先手必勝! ニューラ、氷の礫!」
先に動いたのはニューラだ。ニューラは手中に小さな氷塊を作り出しと、それを素早く、そして的確にパチリスへとぶつけてきた。
「まだまだ! 電光石火!」
氷塊を喰らって怯むパチリスに向かって、今度は猛スピードで突っ込んで来る。あまりの速度に、パチリスは避けられない。
「続けて燕返し!」
さらに素早く爪を振るって追撃。
(やっぱりイオン君は隙がないな……それに、パチリスよりも速いなんて。でも)
イオンのポケモンは総じて素早い。その中でもこのニューラは、エースであるサンダースに匹敵するかもしれないほどのスピードだ。そんな高速状態から連続で攻撃されたのではたまったものではないが、このニューラはイオンの他のポケモンの中でも、顕著な弱点がある。
(確かにニューラは速いけど、打点……攻撃力は低いみたいだ。まあ、氷の礫も電光石火も、元々威力の低い技だし、燕返しは効果いまひとつなんだけども……)
なんにせよ、一撃一撃が軽いのであれば、連続攻撃を喰らってもすぐにやられたりはしない。
とはいえパチリスのスピードではニューラに追いつくことができない。ならばフィアが取る手は一つ。
「パチリス、帯電だ!」
パチリスは自ら電気を帯び、攻撃と特攻を高める。
「へぇ、やっぱりそう来るのか……だったらこっちはどんどん攻める! ニューラ、氷の礫!」
帯電するパチリスに、ニューラは氷の礫を投げつける。しかし威力が低ければパチリスでも耐えられる。つまり帯電が中断されないのだ。
「もう一度帯電!」
その間に、パチリスはさらに帯電して攻撃力を上げていく。手数ではどうしたってニューラには敵わないのだから、それならパチリスはニューラに欠けている打点で勝負するしかない。
「流石に二回帯電はきついかな……? ニューラ、電光石火!」
高速でパチリスに突撃し、ニューラはパチリスの態勢を崩す。そこに、
「燕返し!」
鋭い爪による一閃が放たれた。
「連続で燕返しだ!」
さらにニューラは、パチリスの周囲を旋回するように動き回り、鋭い爪で切り刻んでいく。効果いまひとつと言えども、何度も喰らえば致命傷になる。
「くぅ……パチリス、種爆弾!」
パチリスは切り刻まれながらも周りに種子をばら撒き、炸裂させる。
だがニューラは素早く後退しており、種爆弾を回避している。イオンのポケモンは攻撃前後の隙がまったくなく、それが攻撃に利用されているが、このようにちゃんと回避にも使われる。
「氷の礫だ!」
「エレキボール!」
ニューラは小さな氷塊を、パチリスは大きな雷球を、それぞれに向けて放つ。
勿論、帯電で特攻が上がっているパチリスの雷球がニューラの氷塊を突っ切り、ニューラへと迫るのだが、
「電光石火!」
ニューラは凄まじい瞬発力で真横へと疾走し、雷球を回避。そのままV字を描くようにパチリスへと突っ込んだ。
「躱された……!」
「いやいや、流石に今にはちょっとヒヤッとしたけどね。でもま、避けられてなにより。ニューラ、燕返しだ!」
「パチリス、必殺前歯!」
ニューラの爪とパチリスの前歯が交錯するが、ニューラはパチリスの攻撃を紙一重で避けている。そして自分の爪は、きっちりパチリスを切り裂いていた。
「一旦距離を取るべきかな……? パチリス、後ろに下がって種爆弾!」
パチリスは大きくバックステップをすると、多量の種子をニューラへとばら撒くように投げつける。
「下手に突っ切らない方がいいかなー、これは……下がって、ニューラ!」
ニューラもパチリスと同じように、しかしパチリスとは逆方向に大きく後退し、種爆弾を回避する。
「今だ、帯電!」
その隙にパチリスは帯電し、決定力を高めておく。お互いに身を退いたため、かなりニューラとの距離が開いた。なので、もう一度。
「帯電だ!」
これで四回、帯電を使用した。パチリスの攻撃と特攻は三倍まで膨れ上がっている。
「パチリス、エレキボール!」
ニューラはこちらに接近しつつあるが、それを迎撃するかのようにパチリスの雷球が放たれる。しかしこの雷球は、ニューラを攻撃するためではなく、ただの牽制だ。
本命はニューラが近づいてパチリスに攻撃した瞬間にカウンターで繰り出す種爆弾。通常の三倍の火力なら脆いニューラを一撃で倒すことも不可能ではない。あまり自分の近くで爆発させると自身にも被害が出るが、そこはニューラを盾にして被害を防ぐ。
そんな作戦を立てていたフィア。しかし結果だけを言えば、イオンにその作戦は通じなかった。
なぜなら、
「ニューラ、お仕置きだ!」
次のニューラの一撃で、勝負が決したからだ。
というわけで、フィアは準決勝進出です。いや、最後のバトルを省いたのは手抜きではないですよ……って言っても、説得力の欠片もないですが。ただ、あそこまでタイプの有利不利がはっきりしちゃうと、どんでん返しもなにもあったものじゃないですし、下手にちゃんと書こうとすると今度は長くなってしまいそうですし……とか、そんな個人的理由があります。しかしパチリス、今回の大会ではいいとこなしですね。ヌマクローは逆にかなり活躍していますが。さて、ではあとがきもこの辺にして、次回はイオン戦その二です。お楽しみに。