二次創作小説(紙ほか)
- 第69話 indication ( No.177 )
- 日時: 2013/07/18 19:58
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
- プロフ: 今夏は特に忙しいし、流石に夏の小説大会で入賞は無理か……
熱戦が繰り広げられているライウタウン大会、準決勝。
その激戦は多くの観客を沸かせており、街の人々のほとんどは会場でその試合を観戦している。そしてその試合に、完全に見入っている。ゆえに、ライウタウンの人々はその異変に気付くのが遅れてしまったのだ。
巨大な円形闘技場の頂上部に、小さな黒い影が渦巻いている。
そしてその渦の向こう側には、無数の暗い眼光が光っていた——
「パチリス!」
ニューラが繰り出した一撃は、今までの細々とした攻撃の比ではなかった。パチリスは大きく吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられ、へこみすら出来ている。
「お仕置きはね、相手の能力が上がっていればいるほど威力が増す技なんだー。フィア君のパチリスは帯電を四回も使ってるから、非力なニューラでも一撃の威力がかなり底上げされたよ」
自ら非力と言っているところを見ると、恐らくそのお仕置きはニューラの攻撃力の低さを補うためのものなのだろう。
ニューラは素早さのわりに、攻撃力は高くない。そう高を括っていたフィアの作戦は、イオンものの見事に覆されてしまった。
「戻って、パチリス」
フィアはパチリスをボールに戻す。
「結局、ニューラにはほとんどダメージを与えられなかったな……でも」
ニューラは氷と悪タイプ、弱点は多い。特にフィアの手持ちでは、素早いニューラに対抗するにはうってつけのポケモンがいる。
フィアはほぼノータイムで次のボールを取り出すと、すぐさま構え、ポケモンを繰り出す。
「次は頼んだよ、メタング!」
フィアの二番手はメタングだ。エスパー技は効かないが、鋼タイプの技なら効果抜群で通る。耐久力も低いニューラなら、数発叩き込めば戦闘不能にできるだろう。
「へー、メタングかー。ニューラじゃ勝てそうにはないけど、防御力の高いポケモンだし、体力は少しでも削った方がいいかな? 氷の礫!」
「バレットパンチ!」
小さな氷塊をいくつも投げつけるニューラに対し、メタングは弾丸の如きスピードで飛び出す。
どちらも先制技を繰り出せば、先に攻撃が届くのは元の素早さが高い方ではあるが、メタングは氷の礫を喰らっても怯むことはなくそのまま直進し、ニューラを思い切り殴り飛ばした。
ニューラは吹っ飛ばされてバウンドもせず壁に叩きつけられる。効果抜群に加えて、運悪く急所にでも当たったのか、ニューラは一撃で戦闘不能となった。
「あー、ここまでかー。戻って、ニューラ」
イオンはニューラをボールに戻すと、少しだけ思案し、次のボールを取り出し構えた。
「相手はメタングだし、やっぱこのポケモンかなー。よっし、じゃあ出て来て、ウィンディ!」
イオンの次のポケモンは、伝説ポケモンウィンディ。カゲロウシティのジムリーダーであるアーロンも使用していたポケモン。どうやらあのガーディが進化したようだ。
「ここは正攻法で攻めるよ、鋼には炎だ。熱風!」
ウィンディは大きく息を吸い込むと、口から高温の熱風を吹きつける。
「っ、バレットパンチだ!」
ほぼ直感で危機を察知し、指示するフィア。メタングもそれは分かっているようで、弾丸の如きスピードで迂回するように熱風を回避。そのまま拳を叩き込むが、効果いまひとつなのでダメージはあまりない。
「もう一度バレットパンチ!」
続けて今度は背後に回って拳を突き出そうとするが、
「遅い遅い、神速!」
メタング以上のスピードでメタングの背後を取ったウィンディが突撃し、メタングは態勢を崩してしまう。
「熱風だ!」
そして熱風を吹きつける。効果抜群なので、ダメージはかなり大きいだろう。
「燕返し!」
「っ……シャドークロー!」
続けてウィンディの爪がメタングを切り裂きにかかるが、メタングも無理やり態勢を崩したまま影を纏った爪を振るい、ウィンディの爪と切り結ぶ。
だがウィンディはすぐに身を退き、
「熱風!」
灼熱の熱風を吹きつける。
「やば……バレットパンチ!」
流石に至近距離からの熱風を何度も喰らってはいられない。メタングはバレットパンチのスピードを利用して熱風を躱し、そのまま拳を突き込む。
「噛み砕くだ!」
「下がって! 岩雪崩!」
ウィンディは鋭い牙を剥き出してメタングに飛びかかるが、メタングもそれより前から身を退く準備をしており、ウィンディの牙は空を切る。
そして直後、ウィンディに大小様々な岩石が降り注ぎ、襲い掛かる。
「おっと、危ない危ない。少し掠ったかな?」
そこは流石イオンのウィンディ。寸でのところでバックステップし、岩雪崩の直撃を回避した。しかし、
「バレットパンチ!」
ウィンディの視界を塞ぐ岩石を破壊しながら、メタングが突っ込み、弾丸の如き拳を叩き込む。脳を揺らすようなその一撃でウィンディは動きを少しだけ止めてしまい、
「思念の頭突き!」
メタングの追撃を喰らってしまう。しかも悪いことは続くもので、その頭突きでウィンディは怯んでしまう。
「チャンスだよ、メタング! シャドークローだ!」
爪に影を纏わせ、追撃するメタング。本来ならウィンディの相手は威嚇で攻撃力が下がるのだが、メタングはクリアボディの特性で能力が下がらない。この連続攻撃にはウィンディも堪えるだろう。
「思った以上にやるねー、そのメタング」
「うん。まあ、ね」
確かにフィアのメタングは、フィアの手持ちの中でもトップクラスの攻撃力と耐久力を併せ持つ、非常にポテンシャルの高いポケモンだ。だがこの場合は、メタングだけでなくフィアも評価するべきであり、実際メタングがウィンディとここまで互角に戦えているのはフィアの力があってこそだ。
フィアはイオンのことを知っている。攻撃の前後にほとんど隙がなく、怒涛の連続攻撃を決めて来るというバトルスタイルを熟知しており、その身で感じている。だからこそ、そのハイスピードな攻撃にどう対応すればいいのかが分かるのだ。
具体的には、相手の連続攻撃を繋ぐ瞬間。それよりも早く行動することだ。言うほど簡単なことではないが、実はフィアとそのポケモンたちは、密かにそういった訓練をしてきていた。
(いつかの再戦に備えるためにね……上手くはまってなによりだよ)
とはいえ、流石に相手がウィンディとなると、メタングでは相性が悪い。熱風を一撃喰らっただけでもかなりのダメージだ。
「そろそろ決めないとかな……岩雪崩!」
「神速だ!」
メタングが虚空から無数の岩石を呼び寄せるも、ウィンディは神がかったスピードでそれらを全て回避し、そのままメタングに突撃する。
「続けて燕返し!」
さらに身を捻って変則的な横移動をしつつ爪で切り裂く。効果いまひとつでダメージも大きくないが、ウィンディの攻撃はまだ続く。
「さらにさらに、噛み砕く!」
「っ、シャドークロー!」
今度は横から鋭い牙を剥き、メタングの鋼鉄の体にかぶりつく。メタングも爪に影を纏わせて反撃するが、ウィンディは牙を離そうとしない。
そこで、フィアはふと思った。
「……まさか」
反撃を受けるリスクを承知でメタングに齧り付くウィンディ。いつものイオンならこんなことはしないはずだ。もし行うにしても、反撃のダメージがあるのだから長くは続けない、次の一撃で決めるくらいの攻撃があるはずだ。
即ち、
「大正解! ウィンディ、熱風!」
ウィンディは口腔から、零距離でメタングに熱風を吹きつけた。
「……! 岩雪崩!」
フィアは反射的に指示を飛ばし、メタングもそれに応え、虚空から岩石を降り注ぐ。その頃にはウィンディもメタングを解放し、熱風で吹っ飛ばしていたが、少し遅かった。
メタングはざりざりと地面を抉りながら熱風に押され、ウィンディは大量の岩石に飲み込まれる。
「メタング!」
「ウィンディ!」
メタングは完全に戦闘不能だった。当然だ、あの距離から熱風を喰らえば、耐久力も高いメタングと言えど耐え切れない。
そしてウィンディもまた、戦闘不能となっていた。メタングから受けていた反撃のとどめとして繰り出された岩雪崩、効果抜群の攻撃が効いたのだろう。
「戻って、メタング。お疲れ様」
「ま、よくやったよウィンディ。後は任せて」
同時に戦闘不能となったメタングとウィンディをボールに戻すフィアとイオン。
ライウタウン大会準決勝。残る二人のポケモンは、それぞれ一体ずつだ。
というわけで、イオン戦その二です。内容は特別触れることもないので、適当にぐだぐだ書き連ねます。そういえば夏の小説大会が始まりましたね。白黒は僭越ながら、前回、冬の小説大会で賞を頂いているのですが、URLにあるように、夏は忙しいので入賞は最初から諦めています。なるべく更新するようにはしたいんですけどね。ではでは、意味深な今回でしたが、次回はイオン戦その三、過程はどうであれ、イオン戦終了になる……はずです。次回もお楽しみに。