二次創作小説(紙ほか)

第8話 ジムリーダー ( No.18 )
日時: 2013/04/18 17:38
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
プロフ: シュンセイジム、ジムリーダー登場!

「出て来い、サンダース!」
 イオンの二番手は、四足歩行の黄色い毛並を持つ獣型ポケモン。首回りだけは白く、パチパチと何かが弾けるような音を鳴らしている。

『Information
 サンダース 雷ポケモン
 針のような体毛の隙間には
 マイナスイオンが発生する。
 バチバチと火花が散るのは威嚇の合図。』

 サンダースはイーブイを見ると、一瞬にして鋭い目つきに変わり、全身の体毛も針のように尖らせた。同時にパチパチという音はバチバチと強い音になる。
「サンダースは……イーブイの進化系か」
 フィアにはまだ進化というものがよく分からないのだが、いずれイーブイもあのようになるのろうと解釈した。
 なにはともあれ、今はバトルだ。サンダースはイーブイを威嚇しており、やる気満々だ。
「オレのサンダースは強いよー。シュンセイジムでは、キモリが早々にやられたから、実質サンダース一匹で勝ったようなもんだしねー」
 確かにイオンの言う通り、サンダースは見るからに強そうだ。それはフィアにも分かる。
「でも逆に考えれば、このサンダースを倒せれば、僕らもシュンセイジムで勝てるってことだよね……やろう、イーブイ。電光石火だ!」
 イーブイは力強く鳴き、地面を蹴ってサンダースへと突っ込むが、
「サンダース、こっちも電光石火!」
 サンダースも同時に動き出し、イーブイよりもずっと速いスピードで突撃。イーブイを吹っ飛ばした。
「ミサイル針だ!」
 続けて針のように鋭く尖った体毛を無数に発射し、イーブイに突き刺す。ダメージはそこまで多くないが、非常に痛そうだ。
「イーブイ、大丈夫?」
 イーブイは起き上がり、体を小刻みに震わせて針を抜く。そしてサンダースをキッと睨み付けた。まだまだやる気のようだ。
「よし、じゃあ目覚めるパワーだ!」
 イーブイは赤く燃える球体をサンダース目掛けて発射するが、その時、既にサンダースはそこにはいなかった。
「え……?」
「二度蹴り!」
 そして気付いた時には、サンダースはイーブイの正面まで接近し、二連続で蹴りを繰り出す。二度蹴りは格闘タイプの技なので、ノーマルタイプのイーブイには効果抜群だ。
「まだまだ行くよ、サンダース。マッハボルト!」
 間髪入れずにサンダースは電撃を発射し、イーブイに追撃をかける。態勢の整っていないイーブイは、電撃の直撃を喰らう。
「あ、う……イーブイ、噛みつくだ!」
「遅い遅い、ミサイル針!」
 イーブイが牙を剥きサンダースに向かって駆けだす直前、サンダースは鋭い体毛を発射して地面に突き刺し、イーブイの動きを止める。
「今だ、二度蹴り!」
 そしてイーブイが動きを止めた一瞬で距離を詰め、二連続の蹴りを放ち、イーブイを上空へと蹴り上げた。
「しまった……イーブイ!」
 空中に放り出され、身動きの取れないイーブイ。このままではいい的だ。
「これでとどめ! サンダース、マッハボルト!」
 案の定サンダースは高速で電撃を射出。空中にいるイーブイへと直撃させた。
「イーブイ!」
 ドサッと、地面に落ちたイーブイは目を回し、戦闘不能となっていた。



「勝った勝った、お疲れ、サンダース。もう戻っていいよー」
 イオンはサンダースをボールに戻し、フィアの所へと歩み寄って来る。
「あ……えっと、強いね、イオン君。全然敵わなかったよ」
「いやー、それほどでもあるかなー。ま、オレ天才だし?」
 かなり自信家というか、自信過剰ともとれる発言だったが、実際イオンは強かった。フィアが初心者であることを差し引いても、ポケモンが技を繰り出す前後にほとんど隙がなく、動きも機敏。指示も素早く的確だったので、才能を感じるものはあった。
「でも、フィア君もけっこー強かったよ? 正直、キモリ一体で終わらせるつもりだったし」
「あはは……そうかな」
 褒められるのは純粋に嬉しかったが、キモリだけで終わらせるという発言には、流石にフィアも若干へこむ。そこまで甘く見られていたのだろうか。
 イオンはチラッと壁に掛けられた時計を一瞥する。
「うーん、今日はもう宿舎に戻るかなー。フィア君も明日ジム行くんだよね? だったら今日はもう休んだら? それか、オレはもう少しこの辺で特訓してるから、バトルの申し込みはいつでも受けて立つよ」
「うん、ありがとう……とりあえず今日はもう休むよ。ポケモンバトルって、結構疲れるんだね。初めてトレーナー同士で戦ったから、もうくたくた……」
「……へぇー」
 イオンはどこか含みのある返しをすると、ばいばいと手を振って帰っていった。
「あ……フィア、ここにいたんだ」
 そしてイオンと入れ違いに、フロルが地下に降りてきた。ジム戦が終わったのだろう。
「さっきの男の子、フィアの友達?」
「友達っていうか……ここで知り合ったトレーナーだよ。イオン君っていって、さっきバトルをしたんだけど、負けちゃったよ。フロルはどうだったの、ジム戦?」
 フィアがそう聞くと、フロルはえへへと笑い、
「……わたしも負けちゃった」
「そう……残念だったね」
「うん。あのジムの人、すっごく強かったよ。いっぱい弱点突かれちゃって、すぐにやられちゃった」
 イオンに続きフロルの証言から、シュンセイジムのジムリーダーがタイプ相性を強く意識していることは当確のようだ。
「もっと特訓して、ポケモンたちを強くしないと。フィアは明日ジム戦だよね? フィアがジム戦してる間に、特訓してきていいかな?」
「うん、勿論いいけど……」
 わざわざ訊くことだろうか、と思いつつ口には出さない。フロルの正確から考えると、応援に行けないのが心苦しいとか、そういうこと思っているのだろう。フィアも今日は自分の特訓に費やしたので、気にすることはないと思うのだが。
「……とりあえず、今日はもう休もうか。特訓するにしても、体調管理はちゃんとしないと」
 こうして、フィアの一日は終了した。明日はフィアにとって初めてのジム戦だ。



 翌日。
 フロルは砂礫の穴なる洞窟へと特訓しに行き、フィアはジム戦を行うべく、ポケモンジムへと向かった。
 鉄筋コンクリートで建築された白塗りの建物はいざ入ろうとすれば、思いのほか威圧感がある。
 ジム戦では負けてもペルティがない。しかしそれでも、緊張してしまうものだ。
 フィアは己を奮い立たせ、重厚そうなドアを押し開ける。
「よ、よろしくお願いしま——っ!?」
 控えめに入ったフィアは驚愕の表情を見せる。
 まず真っ先にフィアの目に飛び込んできたのは、大きなバトルフィールドだ。障害物などはないが、イオンと戦ったポケモンセンター地下よりも一回りほど大きい。
 だがそんなことでは、いくらフィアでも驚いたりはいない。ジムなのだから、バトルフィールドが多少大きくても驚くには値しないだろう。だからフィアが驚いたのはフィールドの広さではない。ならばその理由はというと、
「ふ、布団……!?」
 だった。
 バトルフィールドのど真ん中に、布団が敷いてあったのだ。しかももぞもぞと動いており、誰かが寝ているのは明らか。
 ジムに入ったらバトルフィールドの真ん中で布団敷いて誰かが寝ていれば、当然ながら誰だって驚く。それはフィアも例外ではない。
「んー……?」
 こちらの存在に気付いたのか、布団の中の人物がもぞもぞと這い出てくる。
「あれぇ……挑戦者の人かなぁ?」
 緩い口調でゆらゆらと立ち上がったのは、若い男だ。黄色い三本線の入った寝巻のようなTシャツとジャージを着ており、フィアほどではないが少々小柄であどけなさ残る顔。垂れ目かつ半眼の非常に眠たげな眼に、寝癖のついたピンク色の髪は頭頂部が特に酷く跳ねている。
「えっと、はい……フィアといいます」
「ぼくはイチジクだよぅ。よろしくねぇ」
 男——イチジクは布団を畳みつつ、ゆるゆるとした口調で名乗る。

『Information
 ジムリーダー イチジク
 専門:ノーマルタイプ
 異名:眠れる王子スリーピィプリンス
 趣味:昼寝、うたた寝、二度寝    』

「ごめんねぇ、今日は誰も来ないと思って寝てたんだぁ。ふわぁ……」
 眠そうに欠伸をし、イチジクは畳んだ布団をジムの端へと寄せる。やる気のなさそうな態度のわりに、変に几帳面だ。
「それじゃぁ早速、始めようかぁ?」
「……はい。お願いします!」
 なにはともあれジム戦だ。フィアは気を引き締め、ボールを握り込む。
 かくして、フィアの最初のジム戦が今、始まる——



今回はイオン戦決着、そして最初のジムリーダー、イチジクの登場です。イオン戦は、まあ負けるべくして負けたという感じですね。実戦経験の差と、ポケモンの能力が違いますし。さて読めば分かるように、今回はジムリーダーなどの主要な人物のプロフィールを載せることにしました。ネタから伏線まで様々なことを盛り込む予定です。それでは次回、ジムリーダー、イチジク戦。フィアの最初のジム戦です。お楽しみに。