二次創作小説(紙ほか)

第9話 ジムバトルⅠ シュンセイジム1 ( No.23 )
日時: 2013/04/20 13:05
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
プロフ: フィアの最初のジム戦……シュンセイジム戦、スタート!

 シュンセイジム、ジム戦。ジムリーダ。使用ポケモン二体で、交代は挑戦者のみ可能。一般的なジム戦のレギュレーションだ。
「それじゃぁ、ぼくからポケモンを出すねぇ……ノコッチ、頼んだよぅ」
 イチジクが繰り出したのは、尻尾がドリル状で背中に小さな羽が生えた蛇のようポケモンだ。

『Information
 ノコッチ 土蛇ポケモン
 人に見られると穴を掘って逃げ出して
 しまう。巣も地中深く迷路のように
 なっているので見つけるのは困難。』

「ノコッチ……ノーマルタイプのポケモンか。確かノーマルタイプは、格闘タイプに弱いんだったよね……」
 フィアは昨夜、ターミナルで調べた知識を引っ張り出し、ボールを取り出す。
「じゃあ最初は任せたよ、ミズゴロウ!」
 フィアの一番手はミズゴロウだ。格闘技の岩砕きがあるので、ノコッチの弱点を突ける。
「ミズゴロウかぁ、いいポケモンだねぇ。でもぼくのノコッチとはちょっと相性が悪いかなぁ」
「……?」
 フィアにはイチジクの言っている意味が分からなかった。ミズゴロウが岩砕きを覚えていることをイチジクが知らないとはいいとして、それでもノコッチがミズゴロウに対して有利だとは言えないはずだからだ。
 ある程度ポケモンについて詳しい者なら概ね予想がつくかもしれないが、フィアはトレーナーとしてまだ初心者で素人だ。ノーマルタイプのポケモンがどういう特徴を持つのか、理解しきっていない。
 フィアが困惑しているうちに、ノコッチは動き出す。
「ノコッチ、頭突きだよぅ」
 ノコッチはグッと首を引っ込めるような動作の後、勢いよく突っ込んでミズゴロウに衝突した。
「ミズゴロウ!」
 ミズゴロウは吹っ飛ばされ、地面を転がる。直撃なので、ダメージはそれなりに通っているだろう。
「まだまだだよぅ、チャージビーム」
 さらにノコッチは溜めこんだ電気を光線のように発射し、ミズゴロウを追撃した。
「えっ……電気技!?」
 そう、ノコッチが繰り出したのは電気タイプ技だ。そのため、威力は低くともミズゴロウには効果抜群で、大ダメージになる可能性が高い。
 そしてノコッチが電気技を使用するとは露ほども思っていなかったフィアは、驚愕の表情を見せる。それに対してイチジクは、
「ノーマルタイプの特徴はねぇ、何にも染まらないが故にいろんなタイプの技を覚えるところだよぅ。もちろん例外はあるけど、他のタイプと違って技の制限がゆるいんだぁ。だから思いもよらない技で奇襲ができる、今のきみみたいにねぇ……それじゃぁノコッチ、もう一度チャージビームだよぅ」
「か、躱して、ミズゴロウ!」
 再び発射される光線を、ミズゴロウは転がるようにして回避する。
「よし。そのまま岩砕きだ!」
 そして起き上がると、ノコッチに向かって突撃。岩を砕くような体当たりをかます。
「おぉ、格闘タイプの技を覚えてたんだねぇ。だったら接近戦はまずいかも……ノコッチ、風起こし」
 ノコッチは小さな羽を羽ばたかせ、強めの風を起こす。それによってミズゴロウは少しずつ後退し始めた。
「チャージビームは攻撃と同時に特攻も上がるからねぇ、威力の低い風起こしもそこそこ効くよぅ。続いて頭突き」
 ノコッチは羽ばたくをのを止め、頭を突き出してミズゴロウに突っ込む。
「っ、水鉄砲!」
 ミズゴロウも風が止むなり態勢を整え、水を噴射してノコッチを押し返す。
「よし、いいぞ。続けて岩砕きだ!」
 そして岩を砕くような一撃で、ノコッチに追撃をかけようとするが、

「ノコッチ、穴を掘る」

 ノコッチは異常なスピードで穴を掘り、身を隠してしまった。そのため岩砕きも空振りに終わる。
「ど、どこから……?」
 きょろきょろと辺りを見回すが、当然ながらノコッチの姿はない。フィアが視線をミズゴロウに戻した、その時だった。
「あっ……ミズゴロウ!」
 ミズゴロウの背後の地面からノコッチが飛び出し、尻尾をミズゴロウに叩き付けた。
「チャージビームだよぅ」
 ノコッチは電気を集めた光線を発射してミズゴロウに追い打ちをかける。効果抜群のうえ特攻も上がっているので、ダメージは大きい。
「頭突き」
「ミズゴロウ、泥かけ!」
 さらにノコッチは頭突きを繰り出してくるが、ミズゴロウが振り向き様に地面を濡らして出来た泥を飛ばし、ノコッチの顔面にかけて動きを止めた。
「今だ! 岩砕き!」
 急に泥をかけられて驚いているノコッチにミズゴロウは岩砕きを炸裂させる。こちらも効果抜群、それに防御力ダウンの効果もあり、それなりのダメージが通っているはずだ。
「水鉄砲!」
 ミズゴロウは勢いよく水を噴射し、軽く吹っ飛んだノコッチを追撃しようとするが、
「穴を掘るでかわしてねぇ」
 ノコッチは素早く後ろ向きに穴を掘り、地中に身を潜めてしまう。こうなってしまえば技は当たらないし、なによりいつ、どこから出て来るかが分からないため、回避も防御も満足にできない。
「せめて、出て来るタイミングか、どこから出て来るかが分かればいいんだけど……」
 少なくとも今のフィアには分からない。
 そうこうしているうちにノコッチがミズゴロウの右の地面から飛び出し、尻尾で攻撃してきた。
「せめて反撃だけでも……体当たり!」
「穴を掘るかなぁ」
 反撃にとミズゴロウは体当たりを繰り出すが、ノコッチも着地と同時に穴を掘って地中に潜ってしまう。
「ミズゴロウ、どうにかして躱せないかな……?」
 ダメ元でそんな事を言うフィア。普通なら嘲笑を受けるような弱気な発言だが、ミズゴロウは何も言わず、ゆっくりと目を閉じた。
 そして数秒後、ミズゴロウの背後から、ノコッチが飛び出し——

 ——ミズゴロウは横へと逸れ、攻撃を回避した。

「えぇ……?」
 ここで初めて、イチジクの顔が驚きに変化した。だが驚いているのはフィアも同じ。しかしフィアはすぐに気を取り直し、
「ミズゴロウ、水鉄砲だ!」
 攻撃が空振って隙だらけのノコッチに水を噴射して吹っ飛ばす。
「ノコッチ、大丈夫かなぁ?」
 ノコッチはなんとか身を起こすが明らかに疲弊しており、体力はもう残り僅かなようだ。
「よし、ミズゴロウ、もう一度水鉄砲!」
 それを見てミズゴロウは一気に攻め込もうと、水鉄砲を発射する。しかし、
「風起こしで跳ね返してぇ」
 チャージビームで威力の上がった風起こしにより、水鉄砲はミズゴロウに跳ね返されてしまう。ダメージは少ないが、体力が僅かなのはミズゴロウも同じこと。小さなダメージも馬鹿にはならない。
「もう一度、風起こし」
 ノコッチは再び羽を羽ばたかせ、強風を起こす。最初よりも強い風に、ミズゴロウの体はずんずん後退していく。
「うぅ……ミズゴロウ、なんとか踏ん張って!」
 ミズゴロウは必死に前に足を出し、吹き飛ばされまいと踏ん張る。そしてしばらくすると、疲れたのか、ノコッチが羽ばたかなくなり、風も止んだ。
「今だ! 岩砕き!」
 その隙を狙い、ミズゴロウは勢いよく飛び出してノコッチに突っ込む。
「ノコッチ、穴を掘る」
 イチジクは慌てたように指示を出し、ノコッチも素早く穴を掘ってミズゴロウの攻撃を回避する。
 しかし、それがまずかった。
「ミズゴロウ、ノコッチの位置を探るんだ」
 ミズゴロウは目を閉じ、じっと動かず辺りの様子を探る。それに連動するように、頭のヒレがぴこぴこと揺れていた。このヒレこそが、ミズゴロウがノコッチの位置を察知した正体だ。
 ミズゴロウのヒレはとても敏感で、温度、湿度、空気の振動などを正確にキャッチする機能がある。その機能を活用すれば、地中にいるノコッチの同行を探ることなど造作もない。
 そして数十秒後、ミズゴロウは左を向く。
 直後、ミズゴロウが向いた方向と同じ方向の地面から、ノコッチが飛び出した。
「水鉄砲!」
 そしてミズゴロウは水鉄砲を発射する。その勢いは今までのものよりもずっと強く、激しいものだった。
 水鉄砲の直撃を喰らい、ノコッチは吹っ飛ばされて地に落ちる。それっきりノコッチは動かなくなり、戦闘不能となった。
「あぁ、負けちゃったかぁ。ありがとぅ、ノコッチ。もう戻っていいよぅ」
 イチジクはノコッチを労い、ボールに戻す。辛勝ではあるが、先に勝ち星をあげられたのは、フィアにとっては大きなプラスだ。
「すごいねぇ、ぼくのノコッチの穴を掘るはあんまり攻略されたことなっかたんだけどぉ、まさかミズゴロウの性質をこんな形で生かすなんてさぁ。でもぉ、次はぼくのエース登場だねぇ。そう簡単には勝たせないよぅ」
 そう言って、イチジクは最後のボールを構える。
 先に一体倒したとはいえ、こちらも手負い。フィアの初のジム戦は、ここからが正念場だ。



シュンセイジム戦、遂に開始です。イチジクの一体目はノコッチ、様々なタイプの技を活用し、ミズゴロウを追い詰めます。イオンやフロルが言っていたように、ノコッチは頭突き以外の技で多くのタイプの弱点を突けますね。イチジクの趣味が睡眠だからと言って、眠りベースのバトルをすると思ったら大間違いですよ? ちなみにノーマルタイプは色々な技を覚えるので、白黒はわりと好きです。それでは次回、シュンセイジム戦、決着。イチジクのエースが登場です。お楽しみに。